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北の離れ 2015

古書店主が綴る日常雑記 古本屋な日々...  profile

・12月11日 衝突
・11月24日 同姓?別姓?
・10月28日 スポンジは何処へ その後
・10月3日 三毛猫
・9月19日 軍事同盟
・9月16日 ケラ
・9月8日 キカラスウリ
・8月25日 野の川
・7月31日 登山成就碑
・7月13日 アイツ
・6月14日 ネジれたやつ
・6月7日 テングなやつ
・5月28日 トホシテントウ
・4月22日 生命のweb−生物多様性
・3月5日 スポンジは何処へ―マイクロプラスチック
・2月12日 早朝高血圧
・1月9日 冬ざれ


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師走十一日  衝突
コウノトリ 今月五日、茨城県神栖市で、一羽のコウノトリが死亡した。送電線又は鉄塔に衝突したことが原因とみられている。

 死亡した個体は、今年7月、千葉県野田市で再導入(野生復帰)のため試験放鳥された三羽のうち一羽で、「愛」と名付けられたメス。3月に生まれた幼鳥で、11月より神栖市に滞在していた。

 野田市の委託で行動調査をされている方が、水田に建つ鉄塔下で発見されたそうだ。獣医さんによる病理解剖の結果からは、衝突により肋骨・鎖骨を骨折し、落下により肝破裂を起こし死亡したと推定された。衝突原因は、突風或いはカラスによる追い立てではないかと考えられている。

 鉄塔や送電線への衝突による鳥の事故は多い。衝突以外でも、2007年には豊岡市で、再導入されたコウノトリが、止まっていた鉄塔への落雷のショックで落下し死亡するという事故も起きている。
 鉄塔は鳥たちにとり障害物であると同時に、利用の対象ともなる。休息や営巣に好都合であったりもするのだ。しかし鳥の身体が二つの送電線に或いは送電線と鉄塔に同時に触れると感電する。体の大きな鳥(翼の長い鳥)は危険度が高い。
 送電線への野鳥の衝突や電柱・電線での感電を回避するために、周辺にタンチョウやシマフクロウなど希少種の多く生息する北海道電力釧路支店は、感電防止のために電柱頂部に止まり木を設置して、安全に止まらせるようにしたり、送電線や通常の電線に、目立つ赤い標識や黄色いリングまた標示菅(細長い管を電線に被せる)を設置して、鳥が電線を認識しやすくするなどの対策をとっているそうだ(ほくでんHP 釧路支店より)。
 確かに如何に努めても、全ての事故を防ぐことは当然叶わないのだが、鉄塔・送電線への衝突を(風力発電風車への衝突も)少しでも減らせるよう、勝手ながら、関係各所には是非ともに対策を宜しく御願致したい。

 鉄塔絡みの野鳥の事故は、鉄塔好きには、非常に切ない。

  (関連記事:Fe塔 12月11日

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*コウノトリ(Ciconia boyciana):コウノトリ目コウノトリ科。IUCNで絶滅危惧IB類、環境省で絶滅危惧IA類。東アジアに分布。シベリア南東部・中国東北部で繁殖。中国南部で越冬。稀に日本に飛来。1986年日本産個体絶滅。2005年より兵庫県豊岡市で、2015年より千葉県野田市で再導入事業が行われている
*鳥の衝突:日本野鳥の会によると、風力発電の風車への衝突で死んだ鳥は2001年から2014年3月までに確認されたものだけで約300羽、内絶滅危惧種は42羽だった

(画像は、「写真素材 足成」より拝借しました)

霜月二十四日  同姓?別姓?
 「選択的夫婦別氏制度」(法務省ではそう呼ぶらしい)が問題となっているが、我が家は可也の昔から「別姓」である。と言っても、私は独身で結婚の予定も全く無い(哀しいかな・・・)。よって婚姻に関しては別姓も同姓もないのだが、「親子別姓」なのである。
 私の幼少時、両親が離婚した関係で、共に暮らすこととなった親とは姓が異なるという形となったのだ。
 当時、共に暮らすこととなった親は、私への配慮から、結婚時の姓を通称として使用してくれていた(仕事の関係もあるが)所為もあってか、私としては、親との姓の相違は特に気になることもなく成長した。色々と周囲のことが理解できるような年頃となったときにも、そうなった事情も分かる故、矢張り気になることはなかった。親子・家族の一体感を損なうなどと感じたこともない。まあ、印鑑を二種類常に揃えておかないといけないとか、親の姓で呼ばれた時自分の姓ではないので私がすぐに気付かない、というくらいの不便が多少ある程度のことである。

私と奥さん(うそ) なぜ結婚時に同じ姓を使用するようにしなければならないのか、子供の頃から常々疑問には感じていた。特に、殆ど女性が男性の姓にすると言う部分に。
 民法では、婚姻に際して夫または妻の姓(氏)何方かに定め称しなければならないと規定されている(そうだ)。法律上は男性女性どちらの姓でもいいのだが、女性が男性の姓に改めるのがほとんど(約95%(知恵蔵2015より))である。そうした空気が社会全体に有るためであろうか。何かその辺りに、男がメインで女は添え物、的雰囲気が感じられ、嫌であった。
 結婚時に、女性が男性の姓に変えようと、それがご本人の意志・考えに基づく選択なのであれば、別に周りがとやかく言う事ではない。だが、ご本人の意向を無視した強制、或いは実質的な強制で、選択の余地が与えられないものであったならば、これは矢張り違和感を覚えざるを得ない。
 そう、「選べない」という部分が私は気になるのだ。夫婦の姓だけでなく、野球部の丸刈りとか、学校や職場の制服とか、とにかく強制的なものが嫌なのである。自分の意志で丸刈りするなら、それもイイじゃない、と思えるのだが、それが本人の意志を無視した強制となったとたん、嫌悪感を覚えてしまうのである。これはもう、性質(たち)なので如何ともし難い。

 私個人の嫌悪感は、まあいいとして、婚姻に際し実質妻が夫の姓に変更するとい今の形、圧倒的に女性に不便を強いている様で、気の毒にも思う。
 例えば、女性は結婚時に、預貯金通帳や各種免許証などの名義を変更しなければならない。私は職業(オンライン古本屋)上、買取時の本人確認をお願いするわけだが、そこでも女性の不便を感じる。通常であれば、一度お取引したお客さんは次回以降本人確認資料の提出は不要となるが、結婚で姓が変わった場合は同じお客さんであっても再度の確認資料の提出をお願いしなければならないのである。でそれはパーセンテージ的に言えば、殆ど女性のお客さんとなると考えられるのである(現時点ではまだそういう事例は無いが)。
 仕事上でも、姓の変更による不便・不都合は様々あるのであろう。本人と認識してもらえないとか、名刺を作り直すとか、伏せて置きたいのに離婚したのが解ったりとか、そんなことが諸々あるのであろう。

 上記の様な思いから、私は現在の夫婦同姓制度に疑問を感じるのだが、必ずしも、夫婦別姓にすべき、とそう考える訳ではない。夫婦同姓でも別姓でも、自らの意志によって「選べる」という事に重要性があると、私は考えるのだ。
 自らと異なる存在を排斥せず、多くの選択肢が許容される社会、多様な考えや価値観が受け入れられるような社会が、真に豊かで暮らしやすい社会であると、そう思うのだ。

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*民法:第750条。夫婦同氏原則というらしい。現在、法律で夫婦同姓を規定しているのは日本だけとされている。国連の女性差別撤廃委員会は、2003年と2009年に、夫婦同姓などに関し法改正するよう日本政府に勧告しているが、政府は無視である

(画像は、私と奥さん、ではなく、Photo ACより拝借しました)

神無月二十八日  スポンジは何処へ その後
 3月5日にここで、台所で酷使され、日々痩せ細って行くスポンジは、マイクロプラスチックによる海洋汚染の一因になっているようだ、と書いた。そしてそう書くうち、また彼是マイクロプラスチックによる海洋汚染について調べるうち、ポリウレタン製のスポンジが使いずらくなってきてしまった。
 だがしかし、手だけで食器を洗う訳にもゆかず、スポンジの代りは如何したものかと彼是思案。最終的には自然界で分解される天然素材のものが望ましいのだが、何がよかろうか・・・と身の回りを探してみた。すると、台所の片隅にへちま束子があるではないか。これなら100パー天然もの。微細な破片となったって汚染源とはなりにくい。しかし、調べてみると結構に値が張るではないか。これでは今あるのを使いきったら後が続かない。とまた彼是思案。そして良きものを発見したのである。
 我が家は、汚れ物を拭く場合など、ティッシュなどは使わず、着古したTシャツや靴下などを小さく裁断した古布を使っている。長年猫が多数居た為、床やら何やら汚れがちであったので、大量にストックがあるのだ。これである。Tシャツは綿100%の天然もの、最終的には水と二酸化炭素である。漂白され或いは染められた衣類用コットンの生分解性や環境への影響が、いか程のものであるのかは詳らかではないが、少なくも、合成スポンジ(ウレタンやメラミン樹脂製)やアクリルたわしより環境への全体的負荷は小さいであろう。
 だが、いざ使ってみると、元Tシャツでは生地が薄すぎて使い勝手が良くない。水が冷たい時期は厚手の炊事用手袋を使うので(これだとお湯を使わなくても済むのだ)、指先がぶきっちょになるため、薄い元Tシャツに石鹸(固形の台所用石鹸)を付けて洗っていると、そのうちに手を離れどっか行ってしまうのだ。
スウェット そこで、数は可也少ないのだが、元スウェット(トレーナー)で試したらば、グッド。厚みがあるので手袋使用時でも其れなりにホールドできるし、裏のパイルが汚れ落としに好都合。繊維が微細な破片となって流れてもよいように当然コットン100パーを使用。凡そ10〜15cm四方くらいの大きさにカットしたものを適当に畳んだり丸めたりして洗っている。相当丈夫であるし、日向に干せばすぐ乾くし、漂白剤で消毒もできるし、今のところ不都合は特にない。
 しかし、元スウェットではフライパンの焦げ付きなどのしつこい汚れには歯が立たない。その場合は束子(たわし)、ヤシの繊維を束ねた昔ながらの亀◯子束子である。長年使われず、シンクの下に放置されていたものが、復活である。
 ただ、この亀◯子束子、パームヤシ(アブラヤシ)の繊維が使われているらしいのだ。パームヤシは食用油など(パーム油)を採取するために栽培されているのだが、日本を含む世界的なパーム油の需要増大に伴って、インドネシアやマレーシアでパームヤシのプランテーションが拡大し、熱帯林の破壊、水・土壌の汚染また生物多様性の劣化など環境面の問題や、先住民族が土地を失う、劣悪な労働環境や人権の侵害、或いは生息地を奪われた野生動物と周辺住民とのトラブルが発生するなどの社会的な問題が、種々多発しているのである。束子作りの繊維利用は副次的なもであろうとは思われるが、ちょっと気になるところではある。

 我々が何かを使えば、或いは何かを行えば、多少の違いは有れ、環境に負荷をかけずにはおかないのだ。これを、頭の隅で常に意識しておくことは、今に生きる者の責務であろうと思う。
 しかし、生きて暮らしてゆくというのは、つくづく、因果なことである。

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*パーム油:パームヤシ(アフリカ原産)の果肉または核から採取される油脂。食用以外にも石鹸・化粧品・塗料など様々利用されており、我々も知らず知らずのうちに大量に消費している。2011年データでは全植物油生産量の36%がパーム油である。最大の生産国はインドネシアでマレーシアがそれに次ぐ(二国で全パーム油中の約85%を生産)。日本はパーム油の95%をマレーシアから輸入している(ブルームバーグ記事より)
*プランテーション(Plantation):熱帯・亜熱帯地域で安い労働力を使い商品作物(コーヒー・砂糖・ゴム・綿花・パームヤシなど)を単一に大量栽培する大規模農場。歴史的には奴隷や先住民の労働力が使われた *亀◯子束子:「亀の子束子」は亀の子束子西尾商店さんの登録商標である

(画像は、イラストACより拝借しました)

神無月三日  三毛猫
 昨年亡くなった猫の式部が、生前、何が気に喰わないのか目の敵にしていた近所のノラの猫がいる。三毛なので単純にミケさん(女子)と呼んでいる。ブラッシングもさせる程、なかなかに人懐こい。もう十年以上我が家周辺で見掛けているが、妊娠しているところも子供を連れているところも見たことが無く、私の足元でお腹を出しコロコロと転がる際に乳首を確認しても、肥大の形跡もない様に見える。おそらくは避妊されており、小さい頃はどこかの家で家族として暮らしていたのであろう。

ミケさん似顔絵  このミケさん(右似顔絵。似てねぇ)が、式部が亡くなり威嚇されなくなったためか、昨年冬辺りから時々遊びに来るので、テラスでおやつ程度にドライフードを出している。そうしたらば、先月のとある日、買い物から戻りふと足元を見ると、そのテラスの何時もおやつを食べている正にその場所に、可愛らしいネズミの亡骸が横たわっていた。現場は見ていないが、間違えなくミケさんの行為である。

 ネコが獲物を持ってくるのは、狩りの出来ない子猫へ獲物を与える行動と同様で、相手を未熟な子どもの代替としているのだ、という解釈が一般のようだ。とすれば、私は子どもと見做されたのであろうか?(確かに大人になり切れていないのは認めるが)
 理由はどうであれ、一種の愛情表現と捉えられないこともないので、お気持ちは有難く頂いておく。が、ネズミには気の毒であった(合掌)。

 三毛猫といえば、昔にも縁があった。
 私が幼時に育った外房の漁師の家(父方の祖父母の家)には、三毛がいた。可也やんちゃで、しょっちゅう「ちょめっ」と叱られていたので、名を「チョメ」といった。ちょっかいばかり出して追いかけまわす幼い私は、チョメに大分嫌われていた。私の記憶のなかにある映像は、私の顔を見て居間から縁側へそして庭へと逃げ出していくチョメの姿である。
 このチョメは、三毛猫には非常に稀なオスで、おそらくは船の守り神的な意味合いで飼われていたのであろうと思う。
 古来より、積み荷や食料をネズミ(ロープを齧ったり病原菌を媒介したりもする)から守るため船にネコを乗せることが行われており、そんな辺りから、命懸けの航海を続ける船乗りや漁師達に守り神的扱いをネコが受けるようになったのであろうと思われるが、そうした中でも、滅多にいない三毛のオスは有難がられたらしい(日本では。海外では不明)。

三毛猫  何故三毛には男子が居ないのか。
 ネコの染色体は19対38本(ヒトは22対44本)で、うち18対が常染色体で残り1対が性を決定する性染色体。常染色体は同じ形同士だが、性染色体はメスはXXで同じであるが、オスはXYと形が異なる。
 「白」の遺伝情報は常染色体上にあるので、オスもメスも共に持っているが、「茶」を発現する「O(ラージ・オー)遺伝子」と、茶を発現させず「黒」とする「o(スモール・オー)遺伝子」は、X染色体上にのみある。為に、三毛を出現させる「Oo」と言う遺伝子の組み合わせは、X染色体を二つ持つ(XX)メスでしか起こらないのである。オスは性染色体にX染色体を一つしか持たない(XY)ので、「茶」と「黒」両方を持つことは基本無いのである(よって茶と黒二色のサビ猫・トーティもメスばかりとなる)。
 ところが、稀に、性染色体にX染色体が二つ存在する(XXY)オスが出現することがある。この場合、XXが「Oo」遺伝子の組み合わせとなれば、オスの三毛となる。X染色体二個以上のオスの出生確率は、三万頭に一頭程度らしい。とすれば、三毛男子の生まれる確率は更に低いと言うことになるか。
 確かに稀少ではある。
 でもどんな毛色であろうと同じ命。有難がるのは人間の勝手だが、差別はしないようにしたいものである。

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*性染色体にX染色体が二つ存在する・・・:雄性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことによる一連の症候群をクラインフェルター症候群と呼ぶ。ネット上ではこのタイプのオス猫の出生率は三万分の一と言う記述が多い。しかし三毛男子出現確率は千分の一から数十万分の一までまちまちな数字がみられる。明確なデータは無いようだが何れにしろ滅多にいないのは確か
*三毛猫:日本では三毛猫自体縁起の良いものとされていたそうだ。福を呼ぶとか繁盛するとか。そう言えば招き猫は三毛が多いか?
*船(航海)の守り神:日本の第一次南極観測隊(1956)にも、「タケシ」(永田武隊長に由来)と言う三毛男子がタロやジロ達と共に同行している(生態系保護のため現在南極に動物は持ち込めない)。無事帰国したがのち行方不明に

(上イラストは自分で書いてみた。下イラストは「ねこのおしごと」さんよりお借りしました)

長月十九日  軍事同盟
 日米安全保障条約という、実質的な軍事同盟(と私には思える)を結んでいながら、憲法で認められていないと判断されるからといい、集団的自衛権は行使できません、と通すことはなかなかに困難なことである。
 日本は憲法の規定で個別的自衛権しか行使できません、在日米軍が攻撃されてもあなたを守れません、でも代わりに基地を提供します、としても、実際戦闘が行われることとなれば、感情的シコリが生じるのは防げないであろう。政府レベルでは納得があったとしても、現場(兵士)レベルや市民レベルでは、なかなか理解は得られないのではなかろうか。そうなれば、日米の同盟強化など、望むことは難しいであろう。
 よって、日米同盟の強化・深化を何より願う現政権としては、安全保障関連法案を可決させ、集団的自衛権の行使実現化を求めることは、必然的な流れであると思う。最近協力的でないイギリスなどの代わりを或いは財政的に重い極東の監視の肩代わりを、アメリカに求められているとの見方もあるようだし。
 だがしかし、集団的自衛権行使を実現したいのであれば、時間をかけ議論を尽くした後、憲法改正の手続きを踏むべきである。国民の命運を左右するような事項、条件付きとは言い集団的自衛権の行使を認めるという事を、憲法解釈の変更で行うのは、非常に危険なことであると感じる。国家に対する制限と言う性質を持つ憲法が、国自身によって実質的に変えられてしまうという事は、私としては、疑問を感じざるを得ない。

 現状、残念ながら、周辺状況を見れば、日本の軍備や日米の軍事同盟を否定することは、現実的なこととは考えにくい面はある。が、やはり基に据えるべきは、近隣諸国との関係改善への対話を含めた外交努力及び環境・防災面などでの支援・協力である。集団的自衛権行使の必要性云々が問題になどならないようにすることこそ、日本の求めるべき第一の事柄であると思う。周辺の危険排除を求めて、近隣諸国の警戒感や緊張感を強めては、意味無いではないか。
 甘い、と言われようと何と言われようと、「9条」と平和国家の看板掲げて外交努力と非軍事(医療・教育・農業等々)での貢献に徹する強さを持つことの方が、世界で最も多くの敵を持つ国との関係を強めることよりも、日本には相応しく、また真の安全保障へと繋がる道であるように思うのだが。

 固(もと)より、何事によらず賛否両論さまざまな意見・考えがあって当然。だが、自身と異なる見解はなかなかに受け入れがたいもの。特に今回の様な大きな問題程、そうなる傾向は強い。それが人情である。とは言い、その事を自覚して、見解の相違による、人と人とのギクシャク感が生まれたりしないよう、心がけたいものである。自戒を込めてそう思う。

 少し話は飛ぶが、そもそも、日本に軍事同盟は必要であるのか如何なのか、そこの辺りからの議論も、そろそろあって良いのではなかろうか。

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*日米安全保障条約:「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」。第5条で、何れかへの武力攻撃に対し自国憲法に従って共通の危険に対処するよう行動する、と規定。これによりアメリカは日本防衛の義務を負う。が日本は憲法の規定により日本への直接攻撃にしか対処できない(個別的自衛権しか行使できない)とされる。第6条で、日本及び極東の安全に寄与するためアメリカ軍は日本において施設・区域の使用を許される、と規定

長月十六日  ケラ
飛び込んできたケラ 何十年ぶりであろうか。超久し振りにお目にかかった、ケラである。
 ケラと言っても、有頂天のあの方ではない。直翅目(バッタ目)ケラ科に属する昆虫のケラである。

 長い長い秋霖の途切れた、数日前のある日(この度の水害に遇われた方々に、心よりお見舞い申し上げます)の19時頃、何時ものように、おばあちゃんが食べ終わったら食器を洗おうと、食休みを兼ねソファーでだらけながらTVウォッチングをしていた。すると、久々の暑さに開け放った窓から、小さな影が可也の勢いでリヴィングに飛び込んできた。何だ?と思い、白いレースのカーテンの裾近くに止まったその見慣れぬ姿を、よくよくに見れば、ケラであった。
 画像はカーテンを降り床板と窓の木枠の狭間に身を隠している(つもりらしい)ところである。完全な同系色で、非常に見難く、申し訳ない。

 私が子供の頃は、庭で土いじり等していると、必ずと言っていいほどお目にかかったものだが、何時しか全く姿を見なくなり、寂しく思っていた。
 我が家の庭自体は、数十年一日のごとく、多少樹木の入れ替わりがありはしたが、基本殆ど変わらない。けれど、東京郊外のここ数十年の変貌は大きく、我が家の周辺からは土の地面と言うものが多く失われていった。手打ち野球で遊びまわった原っぱは駐車場となり、そこそこあった畑は宅地となり、そこに建つ住宅からは庭が消えた。
 竪穴と横穴からなるトンネルを掘り、モグラ同様の地中生活をするケラにとっては、そうした変化は、非常に過酷なものであろうと想像する(モグラもいなくなった)。少なくも、近所からケラが姿を消したのは、地表の多くがアスファルトやコンクリートで覆われた、それが大きな要因なのであろうと思う。

 しかし、まだケラはいたのである。一寸嬉しいのである。

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*ケラ(Gryllotalpa orientalis Burmeister):体長30-40mm程。日本在来種は北海道から沖縄に分布。多くの種が熱帯から温帯に広く分布している。掘る・走る・泳ぐ・飛ぶの万能選手。雑食性でミミズや植物の根など食す。写真の個体は翅脈から見てオスのようである

長月八日  キカラスウリ
 「北の離れ」5月28日の「トホシテントウ」の記事に8月14日追記した、蔓の絡んだ庭木の上方に咲いたキカラスウリの花、8月末にやっと撮れた。
 左の画像がそれなのだが、朝9時前、梯子に登って思い切り手を伸ばし、カメラのモニターが見えるか見ないかギリギリのところで、半分カンで写した割には、良く撮れた(自画自賛)。

 右の画像は、数日前のある朝、ほぼ上の画像と同時刻に撮影したもの。此方は珍しく地表近くに咲いてくれたので、撮影は大分楽であった。  

キカラスウリの雄花  キカラスウリの雄花
左8月末、右9月初め

 何方も前夜の咲き残り(キカラスウリは夜間開花する)であるため、周縁のレース飾りがしぼみ気味ではあるが、この花の持つ独特なイキフンは、ある程度分かって頂けるのではなかろうか。
 レースがもっと展開した状態で、夜闇(よやみ)に咲いている姿を、イメージして頂きたい。

 キカラスウリは、雌雄異株(しゆういしゅ)、つまり雄の株と雌の株が別々になっているが、我が家のものは雄株であった。よって花は何れも、中央に黄色い雄蕊が見える雄花である。
 左の花の方が開いているが、右の方が傷みが少なく、ディティールは良く保存されている。
 左画像の左下に映り込んでいるのは、蕾である(後ろに写っているのは葉である)。多分、数日後に咲いたのではなかろうか。

 初夏、伸び始めの頃に、トホシテントウとクロウリハムシに葉を食べつくされ、如何なることかと案じた。特にクロウリハムシがなかなかに大食で、マジに枯れてしまうのではないかと思った。この黒と黄色のツー・トーンが可愛らしいクロウリハムシを、キカラスウリの葉上に見付ける度に捕え、我が家のおばあちゃんがデイサーヴィスに通う(と言っても嫌がって休むことが大半なのだ(トホホ・・・))近所の包括支援センターの生垣に派手に繁るキカラスウリまで連れて行って放すのだが、次から次へとやって来るので、まいっちんぐであった。

 しかし、そんな私の心配もなんのその。無事の成長、そして、種子を埋めてから四年目の開花である。

 キカラスウリは、北海道から九州の山野に普通。道路の植え込みや住宅街の生垣また雑木林の縁など、よく見れば案外と育っていたりするのだが、花は夜間咲くので気付く人は少ない。上の写真のように、朝から日中まで残りはするが、その時間帯は皆忙しかったりするので矢張り気付かない場合が多いのではなかろうか。
 ベビーパウダーのことを「天花粉(てんかふん)」と言ったりするが(古いな。齢がばれる)、天花粉は、元来はキカラスウリの根から採取されたデンプンを精製したものである。

 秋霖に棚におさめし天瓜粉

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*キカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica):ウリ科カラスウリ属の蔓性多年草。8-9月に開花。名は実が黄色いことによる。東アジア(日本では対馬)に産するトウカラスウリ(チョウセンカラスウリ)(Trichosanthes kirilowii var. kirilowii)の変種とされる
*クロウリハムシ(Aulacophora nigripennis):カブトムシ亜目ハムシ科。体長5-6mmで、頭部・前胸・腹部は黄橙色で上翅と脚は黒。上翅はつややかで目立つ。ウリ科植物を好むが他の植物も食べる。本州・四国・九州・沖縄に分布
*天花粉:天花とは雪の事。天瓜粉とも。吸湿性が良いので古来より子供のあせも治療に使用された。夏の季語。現在のベビーパウダーは不純物混入テストをクリアした滑石(かっせき。タルク)という鉱物をデンプンに加える。「シッカロール」は商品名
*俳句:最後の俳句は、「秋霖(しゅうりん。秋雨)」(秋)と「天瓜粉」(夏)と季語が二つ入っている「季重(きがさ)なり」。季重なりはテーマがぼけるので普通ダメとされる。一応「天瓜粉」が主であるが・・・、お粗末

葉月二十五日  野の川
 東京郊外、国分寺市にある、日立製作所中央研究所内の大池に端を発し、市内住宅地を縫うように流れる野川(一級河川)は、現代都市河川をシンボリックに表すような「三面コンクリート川」である。野川には大変失礼な表現であるが、誠に味気が無い。両岸、川縁(かわべり)ぎりぎりまで住宅が迫り、景観上も防災上も、全く余裕を感じさせない。
 ところが、研究所を出、すぐに西武国分寺線・JR中央線の下を潜って後、全体として東進するその野川は、およそ1.7km程先の鞍尾根(くらおね)橋を境として、唐突に姿を一変させる。下の画像をご覧頂きたい。ウルトラ◯ンもクリビツの正に大変身で、中央の鞍尾根橋を潜り一瞬にして、左上流側のコンクリート・リヴァーが、右下流側のグリーン・リヴァーである。

野川、鞍尾根橋

野川、鞍尾根橋
上画像が鞍尾根橋(南から見る)。奥に続くのがくらぼね坂で、左手の木立が東経大
下画像左が国分寺市側、右が小金井市側。共に手前に斜めに写りこんでいるのが橋の欄干

橋下はこんな感じ(下流小金井側左岸から)
上流国分寺側コンクリートがぷっつり途切れている
野川、鞍尾根橋下

 鞍尾根橋は、東京経済大学の東辺に接し、国分寺崖線(はけ)にかかる、似た名前の「くらぼね坂」を南に下りきった先にある、長さ15m程の小さな橋である。7月31日の記事で取り上げた貫井神社の南西に位置する、良く見掛けるような、ごく普通の橋。
 しかし、調べてみると、上を通る道路は、西側の国分寺市と東側の小金井市との境界をなしており、また同時に、国分寺市側の北多摩北部建設事務所、小金井市側の北多摩南部建設事務所と、それぞれ野川所管の境をもなしているのだ。
 ちょっとと言うか、大分意味ありげではある。
 野川に関しては、北部事務所は国分寺市、南部事務所は小金井市、三鷹市、調布市、狛江市を所管しており、最下流部、多摩川に合流する辺り世田谷区部分は、世田谷区役所の所管となっている。
 野川の、鞍尾根橋下で起きる大変身が、自治体における河川管理方針の違いに由るものか、建設事務所での方針の違いに由るものか、はたまたその他の理由に由るものであるのかは不明であるが、私の知る限り調べた限り、野川の国分寺市を除く部分は緑化されている。小金井市始め、三鷹市、調布市、狛江市そして世田谷区はみなそうである。
 国分寺部分の野川は、100年以上前からある国分寺駅(現在はJR中央線)近くを流れていることもあり、比較的早い時期、まだ人々が自然志向となる以前の時代に周辺が宅地開発されたため、効率的な土地利用や治水が優先され、現在のような「非自然」な姿となったのかもしれない。源流に近い方は見たところ、コンクリート自体も全体のデザインも、結構古そうなのだ。国分寺以外の部分は、全体としては鉄道駅からは遠く、比較的最近まで田園地帯であり、宅地化・市街地化が進み始めた頃(1960年代)から余り時を経ずに市民の自然志向が強まった(1970年代)ため、ある程度元来に近い姿で今へと繋がることが出来たのかもしれない。完全に、大して根拠のない私見ではあるのだが・・・。
 野川の途中変身の原因が、何れに存しているのかはどうあれ、国分寺市部分の野川を、他の自治体部分と同じように、周辺の暮らし或いは他の生物との調和や景観も考慮した多自然型とするのは、大半でほぼ川縁に住宅が接している状態を見れば、物理的に困難であるように思える。
 野川が日立の研究所を出、湧水を集めつつ多摩川に合流するまで行く距離はおよそ20km。国分寺市を流れる部分は全体の十分の一もない。がしかし、仮にここを小金井市以下に多く見られるように、川幅を広げ緑化し、遊歩道を設け並木を植えるとすれば、左右川岸に接する住宅それぞれ一〜二軒分の幅は最低必要となるので、用地確保には、相当数の住宅の立ち退きを求めなければならない。
 ムズイな。

ニホンスッポンの甲羅干し 地元とは言え、野川縁には住んでいない私としては、単純に、小金井市以下の部分のように、スッポンが甲羅干し(「はけの下」8月12日記事)をしていたり、カルガモや人間の親子の姿が夏草越しに見られたりするような、緑豊かで多自然な野川の方が好ましいが、野川沿いに居住する国分寺市民の方々はどの様に考えておられるのであろう。そこが最も重要であるが、私には残念ながら不明だ。景観面・環境面で言えばおそらく多くの方が多自然な姿を望むであろうが、防災面ではどうなのであろうか。
 上流部にある幾つかの橋(あやめ橋・緑橋・丸山橋・平安橋)では、現在可也錆びつき、久しく使用されてはいないようであるが、橋と道路の境部分に、護岸のコンクリート製防水壁と同程度の高さのスライド式鉄製防水壁(右画像。増水時に橋上に引き出す)が設置されている。過去の氾濫の事実を示すものであろう。
野川、丸山橋スライド防水壁  しかし、普通に考えると、川幅(両岸間の距離)が広ければ洪水は流れやすく溢れにくなり、スライド防水壁も不要となるであろうし、震災時に大規模火災が発生し場合は、川自体が緩衝帯にもなるように思えるのだが。
 市街地における多自然な河川管理は、難しいのは百も承知だ。住宅街では必須となる草刈りの様な日常的管理でいっても、一様に、一度に行わない等、川の生態系に配慮したものでなければならい。野川の小金井市以下を所管する北多摩南部建設事務所が遊歩道柵に掲げた草刈りに関する表示板によれば、生物生息空間として重要な水際部分(水際1.5mと低水路部分が環境配慮範囲)の草刈りは他の部分と異なり、90mの1区間を30mごとに三分し順次移動しながら年3回に分け刈っている。明らかに手間が、そしておそらくはコストもかかっている。
 しかれども、個人的には、もっとも愛着を感じる川の一つである野川が、全て多自然な「野の川」となった姿を見てみたいものだと、思ってしまうのである。

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*多自然川づくり:国土交通省による河川管理の基本方針。「河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うことをいう」と定義されている。
なお、野川の都立武蔵野公園内を流れる部分は、自然再生促進法に基づく環境省の自然再生事業により、市街化以前の姿の再生が試みられている
*下流側:小金井市以下では、水枯れ対策として河床に粘性土を貼る工事を実施している。下水道が整備され生活排水が流入しなくなったため水は清澄な状態となったが、水量が減り冬場など瀬切れ(流量不足で流水が途切れる状態)しやすくなったのだとか
*くらぼね坂:鞍とは馬のことで、雨の降る日は赤土が滑り馬も骨折るほどのキツイ坂、の意だとも言われている。確かにマウンテンバイクで登るのもしんどいなかなかな激坂。この坂に続く橋なので「くらおね」橋なのであろうか
*東京経済大学:1900年(明治三十三年)大倉商業学校として創立され1946年赤坂より移転。出身者には川田龍平さん、スガシカオさん、たんぽぽの川村エミコさん等いらっしゃる
*日立製作所中央研究所:1942年(昭和十七年)創立。総面積207,000平方m。外から見ると立派な「森」である
*国分寺駅:甲武鉄道の駅として1889年(明治二十二年)に開設。1906年(明治三十九年)に国有化され国鉄中央線の駅となる
*はけ:ここ多摩地域では、古多摩川が形成した河岸段丘の上下の段丘面を分ける高低差数mの崖及びその連なりを指す

(9月丸山橋スライド防水壁写真追加)

文月三十一日  登山成就碑
小金井市、貫井神社 登山少年であった過去を持ち、今は全く登らないが、相変わらず山好きで、PCの壁紙は四季を通じて、国内からヒマラヤまで様々な山の写真を多く使用している私としては、一寸気になる石碑を見付けた。場所は東京小金井市野川のほとり国分寺崖線(はけ)に位置する貫井(ぬくい)神社境内(上左画像)である。
 何気に廻る境内の一角に、何やら曰くありげな、斜めに真っ二つに割れた石版(下半分は鉄の酸化により赤変しているようだ)を、磨き上げられた花崗岩に貼り付け修復した石碑が佇んでいる(中画像左側)。石版自体は痛ましくもあるが、丁寧で思いを感ずる修復である(破損また修復の経緯説明は無い)。
 表には、様々な山名が刻まれている(中及び下画像)。一見して、東日本を中心に存する山々であることが分かる。なかには「高尾山」「御嶽山(みたけさん)」など東京育ちには馴染み深いものもある。裏に回れば、「登山成就碑(とざんじょうじゅひ)」の銘が。「登山」の文字に思わず喰いつてしまい、改めて表に回って山名を再度チェックする。登らないとはいえ、山に関する本などは今もそれなりに読むので、山に関わる知識は、特別山に関心は無い一般の方々よりは一寸はあると自負する私のその知識によれば、多くのと言うよりほとんどは信仰登山或いは修験道に関わりの深い山ばかりのようと見える。一部破損のため失われ或いは判読不明のもの、また私の見聞きしたことのない山名もあるため、全てとは言い切れないが、分かるものから類推すれば、おそらくは、全てなのではなかろうかと思われる。登山と言っても我々が一般に考える、レジャーやスポーツとしての登山とは意味合いを異にするもののようである。
 碑面に彫られている山名等は以下である。
■裏面
明治四十年 卯月建
願主 鈴木◯◯◯
(平成十七年二月補修移設 貫井神社)

■表面(上から)
・月山大神(つきやまのおおかみ)、羽黒山、湯殿山:山形県。月山(1984m)、羽黒山(414m)、湯殿山(1500m)の出羽三山。山岳信仰の場であり修験道の聖地ともされる。三山それぞれ山頂に神社がある。羽黒山頂の出羽(いでは)神社には三山の神を合わせて祀る三神合祭殿があるため三山神社とも呼ばれる。羽黒山を本山とする「羽黒派(古)修験道」は修験道の一派をなしている。
・二荒山:ふたらさん。男体山(2486m)。修験道の霊場。日光三山(他に女峰山(2464m)、太郎山(2368m))をご神体とする二荒山神社があり、奥宮は男体山頂にある。三山を中心に独自の日光修験が発展した。
・象頭山(538m):ぞうずさん。香川県。隣の琴平山(金比羅山)(524m)と共に象頭山と呼ばれる。中腹に金刀比羅宮(金比羅宮)があり山岳信仰の対象。金刀比羅宮は神仏習合では「象頭山金比羅大権現」とされていた。金比羅権現は象頭山の山岳信仰と修験道が融合した神。
・三笠山:奈良はじめ各地にある。御嶽信仰の一神三笠山大神(みかさやまのおおかみ)を祀る、現在修験道場のある群馬県上野村の諏訪山の一峰、三笠山(1490m)か。
・御嶽(3067m):おんたけさん。長野県。御嶽を神体とする山岳信仰(御嶽信仰)の対象であり修験者の行場として有名。山頂には御嶽神社奥社がある。
・冨士岳:不明。(上部が欠損しているがこの様に読める)
・列田岳:不明。
・小御岳:こみたけ。富士山五合目。現在の富士山が形成される以前の山で山体は富士山の内部にある。小御岳火山の名残りが見られる辺りに山岳信仰の霊場小御嶽神社がある。
・朝熊岳(555m):三重県にある朝熊ヶ岳か。山岳信仰の対象となっている。
・鹽竈山:しおがまさん。この名の山は不明だが、八王子市大塚に塩釜山清鏡寺と言う曹洞宗の寺院が有る。また宮城県栗原市鶯沢袋塩釜山と言う地名が見られる。
・不忍山:不明
・筑波山(877m):茨城県つくば市。筑波山をご神体とする筑波山神社(山頂に本殿、中腹に拝殿)がある。山全体が修験霊場とされた。
・椿名山:関東三大修験道名山の一つ(他は筑波山・鹿野山(かのうざん))ともされる榛名山(群馬県)を指すか。高崎市倉渕町権田に椿名神社が存在する。
・蠶影山:こかげさん。茨城県つくば市蚕影山(200m)にある蚕影(山)神社より派生した養蚕に関わる蚕影山信仰があり、神社は各地に存する。また地名も各地にある。山としては何処であるのか不明。
・加波山(709m):かばさん。茨城県筑波連山の一つ。山頂に加波山神社本宮本殿がある。修験道の霊場。加波山信仰と呼ばれる山岳信仰の対象。
・高尾山(599m):東京都八王子市。修験道の霊場。山中の薬王院有喜寺に修験道開祖とされる役小角である神変(じんべん)大菩薩が祀られている。
・御嶽山(929m):みたけさん。東京都青梅市。山岳信仰の対象で武蔵御嶽神社が山上にある。関東の修験道の中心ともされた。
・男峰山:不明。
・白峰山(337m):香川県坂出市、四国霊場白峰寺がある山を指すか。信仰対象となった大天狗相模坊(元は相模の大山にいた)が有名(天狗は多く山伏姿で同一視されることもある)。崇徳上皇稜がある。
・三峰山:埼玉県秩父山地。妙法ヶ岳(1332m)、白岩山(1921m)、雲取山(2017m)の総称。一般に三峯神社がある峰(1101m)を指す。山岳信仰の対象であり修験道霊場。
・賀熊山:不明。
・石尊山:せきそんさん。修験道が盛んであった神奈川県大山(おおやま)を中心とする石尊信仰があり、関東に複数の石尊山が存し、何処を指すのかは不明。

本田定◯書(◯=ねん。禾の下に千)

登山成就碑(左全体、右表面最上部)
左は全体、右は最上部鏡を模した部分

登山成就碑(表面下部)
左は中央部分、右は最下部

 ざっと調べてみたところ、修験道に関わる山が多いのが解る。ただ、富士山(3774m)、大山(1252m)(神奈川県)、鹿野山(かのうざん)(376m)(千葉県)、妙義山(1103m)(群馬県)、両神山(1723m)(埼玉県)、大峰山(奈良県。広義に大峰山脈、狭義に山上ヶ岳(1719m)を指す)、立山(3015m)(富山県)、白山(2702m)(石川県)、石鎚山(1982m)(愛媛県)、戸隠山(1904m)(長野県)、飯縄山(1917m)(長野県)と言った、私でもすぐに思い浮かぶ、或いはちょっと検索すればすぐに出てくるような、修験道の謂わば「大定番」の山が無い。白山、立山また大峰山や石鎚山などは距離的なこともあろうが、大山は近いし大定番中の大定番、富士山も無いのは一寸解せぬ。彫られていない山は比較的標高が高かったり峻険であったり、難易度の高そうな山が多いようにも見えるので、その関係かもしれないが、大山や鹿野山などそれ程難しくはなさそうな山もある。
 石碑上部、鏡を模した円形の中に、中央に大きく「月山大神」、その右に「羽黒山」、そして左に「湯殿山」を彫ってある(中画像右側)が、これと同様なものが独立した「出羽三山碑」或いは「出三山供養塔」と呼ばれるようなものが各地にある(湯殿山が中央であったり、羽黒神社、湯殿神社と記されている場合も多い)。出羽三山信仰に関わるもので、江戸の頃から東日本で行われていた(現在もある)、講を組んでの出羽三山詣でを記念したものである場合が多い様だ。この碑もそれと同様な意味合いを持っていたのかもしれない。山の偏りは、或いは三山信仰や羽黒派修験道との関わりがあってのことかもしれない。
 もっとも、破損時か破損後に失われた部分が、山名の一部が辛うじて残っている物も含め、十一山程はありそうなので、富士山も立山もその他の山も、その欠けた中に含まれていたという、単純な理由とも考えられる。

 碑が建てられた明治四十年と言えば、夏目漱石の「坊ちゃん」や初期の名品「草枕」が発表された翌年の1907年。当然、登山自体が行われたのはもっと以前のこととなる。現代と異なり交通機関も整備されてはおらず、装備も失礼ながら貧弱であった時代だ。基本的には、信仰心にかられてのことであろうが、相応のご苦労であったと思う。然し、これだけの山を経巡っていることを思えば、存外、山歩き自体も楽しんでおられたのではなかろうか、とも思う。
 とは言え、今も昔も、登山を行うにはそれなりの予算が必要となる訳で、気持ちだけでは如何ともしがたい。願主(がんす)さんは、ある程度は余裕のある豪農の方或いは名主(なぬし)と言ったポジションの家の方であったのだろうか。若しかしたら人望のある方で、近隣の農民の方々、お山に登りたいが叶わぬ、と言う方々に、私たちの分までお願いします、と頼まれていたのかもしれない。
 碑の建立も、出羽三山に或いは他の山々に詣でることが出来ない人々が、身近な拝礼の対象と出来るようにとの思いがあってのことなのかもしれない。勝手な想像ですけどね。

 明治五年には、神仏分離の流れで、修験道は禁止され、廃仏毀釈の嵐に晒され大ダメージを被った訳だが、明治も後半になる頃は、ある程度盛り返していたのであろうか。色々と考えてしまう。
 何れにしろ、この碑を保存・復元してもらったお蔭で、こうして地域の過去に思いをはせ、イメージ(妄想)を膨らませる縁(よすが)とすることもできる訳である。有難いことである。
 お金を動かすためにオリンピック・パラリンピックを口実にし、どこぞに巨額競技場を残すより、こうした地域の小さな遺産を地道に残してゆく方が、余程意義ある「レガシー」となるように思えるのだが。

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*貫井神社:元の名は貫井弁財天。祭神は市杵嶋姫命(いちきしまひめ。神仏習合で弁財天と同一視)、大己貴命(おおなむちのみこと。大国主命)
*山岳信仰:山岳を神霊や祖霊の居所或いは神そのものとし崇拝したり儀礼を行ったりすること。世界各地に見られる
*月山大神:月読命(つくよみのみこと。月読尊とも)。夜を総べる月の神。天照大神の弟、素戔嗚尊の兄とされる。暦(太陰暦)との関連で農耕・漁労の神として信仰される
*修験道:古来の山岳信仰・自然崇拝と仏教また神道・儒教・道教・陰陽道などが融合し平安末期に成立した宗教。修験は「修行得験」の意で修行を積み超自然的力「験力(げんりき)」を得る事を言う。特定の山岳で修行する。行者は山伏、修験者等と称する。奈良時代、役小角(えんのおづね・役行者とも)により創始されたとする。真言宗系の当山派と天台宗系の本山派に大別される。神仏分離令が発せられた四年後の明治五年(1872)に禁止された
*講:宗教信者の集まり、寺社への参詣・寄進をする信者団体。また地域の相互扶助団体
*神仏習合:神仏混淆とも。日本在来の神道と外来の仏教とを融合・調和するために唱えられた教説。明治元年(1868)の神仏分離政策で禁止・否定された
*廃仏毀釈:明治政府の神道国教政策のなか起こった仏教排斥運動。仏教や修験道等の信仰に関わるものが多く破壊された
*名主:江戸時代の村役人、村落の長。身分はお百姓さん。西日本では庄屋、東北では肝煎(きもいり)とも
*オリンピック・パラリンピックを口実に:スポーツを通じ人間形成と世界平和を希求する、オリンピック・パラリンピックのあるべき姿(オリンピズム)に則って動いているのであれば、新国立競技場などをめぐる一連の失態はなかった様に思うのだが

文月十三日  アイツ (追記あり)
キイロスズメのふん 或る日、テラスに、左画像の様な落し物があるのを見付けた。9mm×8mmほどの黒褐色の物体が幾つか、ころころと、湿ったコンクリートの上に転がっている(下にいるのは2mm程の種不明の小型のアリ)。アイツである。
 東北の震災が起きた年の夏から、少しでも気温を下げ、電力不足に対処しようと、テラスには、ヤマノイモの日除けを作るようになった。最近はすっかり定着した感のある、ゴーヤやアサガオのカーテンの様なものである。庭の植え込みから、幾本か伸び育つヤマノイモの蔓を一つに纏め、テラスの屋根に誘引して繁らせ、日除けの代わりにしているのである。物理的な温度低下作用にはどれ程効果があるかは不明だが、視覚的・心理的には何とも涼しげで宜しいし、秋の黄葉とむかご収穫も楽しめるので、私的には気に入っており、毎年、蔓が伸びてくると、この日除けを作るのが恒例となっている。
 テラスの屋根に引っ張って来たヤマノイモの葉がそこそこ繁って、日除けらしい日除け、緑陰らしい緑陰が出来るのは、およそ今月初めくらいである。そしてそうなると、毎年例外なく現れるのである。上に書いた「アイツ」が。

 「アイツ」とは、キイロスズメの幼虫である(下右画像)。イモムシの苦手な方はご注意ください。もろイモムシですから。(って、もう見えちゃってるな)
 この幼虫、画像を撮った時点では凡そ体長は90mm程と、可也デカイが、それでも、見事な保護色で、見付けようと思ってもなかなか見つからない。全体が緑白色で、やや白っぽいヤマノイモの葉裏の色によく似ているし、体側や背の白いラインも葉脈に紛れるのだ(画像は余りに幼虫が目立たないので二枚とも少し幼虫を明るく加工してあります)。なので、何時も上画像のような落し物で、その存在に気付かされる。そして気付いたときにはこのデカさである。まるで、忽然と出現したように思えてしまうが、当然もっと小さい頃からいるのである。が、デカくても見付けにくいのだから、下左のようなチャイチイの頃(この個体は体長40mmm程。長い尾角がカワイイ)などよほど注意しなければ気付かない。キイロスズメの幼虫
 しかし、デカい方の幼虫は見事にぷりぷりである。さらっとした肌触りは心地良い。

キイロスズメの幼虫 幼虫たちの親は、ジェット機のような流線型のボディと先端の尖った三角翼を持つカッコイイ大型のスズメガ。全体は茶褐色から淡褐色で背など一部緑がかっている。腹部側面が鮮やかな黄色であるのが名の由来であろうか。翼開長は80-100mm程である。親は偶に夏の夜、開け放った窓から侵入してくることがある。
 幼虫は5-7月、8-10月に発生し、ヤマノイモ以外にナガイモ、サトイモなどの葉を食草とするので、それらを栽培している方々にとっては困った存在であるが、我が家では特に問題視されることもないので、毎年数匹が育ってゆく。
 大きい方の幼虫は、もう大分と育っているおそらく終齢近いものなので、そのうち茶褐色に変身し、落ち葉を使った繭の中で、蛹化すると思われる。

8月21日追記:上に「茶褐色に変身し・・・」と記したが、本当に緑タイプから茶色タイプに変わるのかどうか自信がない。何故なら今現在ヤマノイモにいるキイロスズメの幼虫たちは様々なタイプの個体が混在しているのだ。上の写真同様な緑白色のものもいれば、下のように茶褐色(右)のもの、また両者の中間(左)のようなものもいる。体長は茶褐色が凡そ85mm、中間色が凡そ80mmである。始めから色のタイプは様々なのであろうか。

キイロスズメ幼虫(中間色)  キイロスズメ幼虫(茶褐色)
中間色がもう暫く経つと茶褐色になるのであろうか。それとも端(はな)から色のタイプが異なるのか

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*キイロスズメ(Theretra nessus Drury):スズメガ科ホウジャク亜科。本州以南、東・東南アジア、オーストラリアなどに分布。全体的に黄色っぽいと言えば黄色っぽい。幼虫は体の第8節に尾角(びかく)と言う突起がある(スズメガに共通)。幼虫が最後に茶色くなるのは枯葉の中で蛹化するためなのであろう
*ヤマノイモ(Dioscoreaceae japonica):ヤマノイモ科ヤマノイモ属の蔓性多年草。全国に自生する。所謂、自然薯(じねんじょ)である
*むかご:珠芽(しゅが)。ヤマノイモの場合葉の腋に作られる栄養を蓄えた繁殖器官。地上に落ち発芽し成長する。味はほぼヤマノイモである(と私は感じる)

水無月十四日  ネジれたやつ
 ネジバナのアップとどアップネジバナである。確かにネジれている。学名も「螺旋の花」で、花茎の上部が右巻き(左巻きもある)に捩じれ、そこに上・側面がピンク(濃淡の変異が有る)で下が白い、3mm程の小さな花が、正にらせん状に多数付く。アップで見ると、薄桃色のスモックを着た幼稚園児の行列のようでかわいい(上画像)。東京もそろそろ入梅か、という頃に咲き初めるこの花は、梅雨好きの私にとっては、アジサイと共にその季節の訪れを告げてくれる、親しい存在である。

 ネジバナは、日本全土、中国、朝鮮半島等東北アジアに広く分布している、高さ10-30cmほどの小柄な多年草。東京の都市部でも、公園の芝生等に結構普通に見られる、もっとも身近な野生のランである。
 そう、ネジバナはランなのである。多くのファンを持ち、おそらく最も人々に好まれている花の一つであることは間違えの無い、カトレアやシンビジウムまたアツモリソウやシュンラン等が有名なあのランである。しかし、その花が余りに微小であるが故か、またそのか細さ故背景に溶け込んでしまうためか、ほぼその他大勢的扱いである。もちろん大事に育て、愛でておられる方もいらっしゃる。江戸時代などは「捩摺(もじずり)」の名で呼ばれ、栽培もされていたそうだ。でも、一般にはあまり目に留める方は多くは無い。生育場所も、芝生や原っぱ、河川の土手また畔(あぜ)などであるため、伸び始めた「雑草」と呼ばれる草々(くさぐさ)と共に刈り取られてしまうことも多い。折角蕾が膨らみ始めた或いは花が開き始めた花茎が、無残にちょん切られているのを見掛けることもある。
 だがしかし、一つ一つの花をよぉく見れば、「蘭」である(下画像)。ネジバナの超アップランだからと、別に依怙贔屓する訳ではないが、もう一寸、気にかけてやってもいいのではなかろうかと、思うのである。植物は、何も人間に見てもらうために花を咲かせているわけではないが、足元に咲く小さな隣人に、一瞥をくれるくらいはエナジーの無駄にもならなかろう。偶にはね、少し気にしてやってください。

 長年放置され、ススキの原と化していた近所の都営住宅跡地に、一寸したネジバナの群生地が形成されていたが、現在では造成により壊滅してしまった(幾株かはレスキューできた)。また、スーパーへの行き帰りに前を通る大型ショッピングセンター敷地の植え込みにも、そこそこの数確認出来ていたのだが、最近は見付けるのに苦労する。残念ながら、我が家の周辺では、ネジバナは衰退傾向とも見えるが、それでも、ひとみを凝らしてよく見れば、狭い歩道の街路樹の根元や、近くの国分寺遺跡の一角など、除草・草刈の対象となり易い危険極まりない場所に、ぽつんと育っていたりもする。なかなか逞しいものである。

 梅雨時の花=アジサイ。多くの方はそう想起されるだろうが、私は、梅雨時の花=アジサイとネジバナ、である。

(写真に撮るとピンクが可也薄れてしまうので画像は少し加工し実際の色に近づけています)

6月18日追記:ショッピングセンター敷地の植え込み(と言っても小ぶりの児童公園程の面積がある)を念の為確認したらば、クチナシやアジサイの蔭などにざっと見ただけで86株もあった。私の目は節穴か。

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*ネジバナ(Spiranthes sinensis var. amoena):ラン科ネジバナ属。結実後葉は枯れて秋まで休眠に入る。根は菌と共生している(菌根)。花序は有毛だが南西諸島などに分布するナンゴクネジバナは無毛
*螺旋の花:属名のSpiranthes(スピランテス)は、ギリシャ語のspeira(螺旋)+anthos(花)に由来
*上・側面がピンク:正確には、背萼(がく)片・側萼片・側花弁がピンクで唇弁(しんべん)が白い
*捩摺:現在の福島県にあたる陸奥の国信夫(しのぶ)郡に産した、シダ植物のシノブの色素を布に摺り付け表した衣服の模様(忍捩摺とも)に似ているから、こう呼ばれたとか

水無月七日  テングなやつ
テングチョウ 画像を見て、すぐにこの蝶の名が出る方は、余り居らっしゃらないだろう。斯く言う私も、この蝶を庭で見た時(5月末)、なんだこの蝶?見掛けんお方だな。タテハチョウっぽいけど・・・、と名前はまったく出てこなかった。
 取り敢えず写真を、と思ったが、結構せかせかと庭のエノキ(幼虫の食草)の周りを飛び回り、なかなかじっとしてくれない。やっと、奥まった庭木の葉に翅を休めたところを、脚立に乗って腕を伸ばし、ノールックで写したのが、この画像である。シャッターを切った次の瞬間には飛び立ってしまい、撮れたのはこれ一枚のみである。

 撮影後、図鑑で調べたらば、その名は「テングチョウ」であった。漢字で書けば「天狗蝶」。別に、調子こいて好い気になっているチョウチョ、と言うことではない。頭部のパルピ(下唇髭(かしんしゅ))と呼ばれる器官が長く前方に延び、天狗さまの鼻のように見えるので、この名があるのだ。名前だけは聞き覚えがあったが、出合ったのは初である。
 因みに、下唇髭とは、触角の様に匂いを感じたり、複眼や口吻(ストロー状の口)を掃除したりする機能を持つもののようだ。
 テングチョウの仲間は10種程が世界に広く分布するそうだが、日本に棲むのは一属一種のみで、本州以南に分布する。本州・四国・九州などのものは本土亜種、そして奄美諸島以南のものは南西諸島亜種とそれぞれされる。かつては北海道亜種が道内西部から南部にかけて存在していたが、札幌に於ける1972年の採集を最後に記録が途絶え、現在では絶滅が確認されていると、北海道レッドデータ・ブックにはある。生息に必要な広葉樹林の減少が絶滅の原因ではないかと、そこには記されている。
 彼女ら彼らは、手元にある古い図鑑では、テングチョウ科として独立して記載されているが、ネットで調べると現在は、タテハチョウ科テングチョウ亜科、という分類になっている。生物の分類は時々変わることがあるので、古い資料しか手元にない場合は、一応ネット等で確認しないといけない。
 序でながら、テングチョウはアメリカの第三紀層(およそ6550万年-258万8000年前の地層)から二種の化石が見つかっており、系統的にちょっと古いタイプのようである。「生きた化石」と表現されることもある。

 写真では分からないが、オレンジの斑紋が鮮やかな表とは異なり、翅の裏は見事に地味ぃな「枯葉」である。葉脈や葉縁(ようえん)の切れ込み具合など、絶妙だ。その擬態っぷりはなかなかのものなので、ぜひ機会があればウォッチングして頂きたいものだ。ただ、暑くなると休眠(夏眠)してしまうので、これからの季節、しばしお目にかかることは出来なくなる。(私も涼しくなるまで夏眠したい)

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*テングチョウ(Libethea celtis):タテハチョウ科テングチョウ亜科テングチョウ属。開長(開いた前翅の幅)約50mmで大きさはモンシロチョウと同じくらいか若干小ぶり。オスの前肢は退化している。成虫で越冬する。日本以外では朝鮮半島、台湾等に分布
*エノキ:ニレ科エノキ属の落葉高木。九州・沖縄などには亜種のクワノハエノキ(リュウキュウエノキ)がある。ゴマダラチヨウやアカボシゴマダラにも人気があり、これ等のチョウもよく庭にやって来る
*第三紀層:第三紀に形成された地層。第三紀という地質区分は既に公式には使われておらず、現在では6550万年-2300万年前までの古第三紀と、2300万年-258万8000年前までの新第三紀に分けられている

皐月二十八日  トホシテントウ
 私の住む近所の、歩道の植え込みや公園・緑地には、キカラスウリが多い。キカラスウリと近縁のカラスウリの花は、私の好きな花の一つである。
 夜間に咲くこの二種の花は、直径7-10センチほどもある白花で、カラスウリはほっそりと繊細な雰囲気があり、キカラスウリはやや線が太く派手な感じがあるなど、両者で微妙な違いは有るが、何方も中心の星形が周囲にレース飾りを纏うのである。夏の夜の薄闇に見るこれ等の花は、月光が凝集したようで美しい。しかしその性質ゆえ、存在を知る人は少ない。その辺りも、私的には好もしい。
 四年ほど前の冬の或る日、アルツハイマー病になって以降いろいろと拾いものをするようになったおばあちゃんが、病院帰り、その、おそらくは植え込みに育ったキカラスウリが、歩道に落としたのであろう干からびた実を拾ってきた。以前から、カラスウリ(かキカラスウリ)が庭にあったら良いなあ、と思っていた私は、実を解(ほぐ)し、カボチャの種子に似ていなくもないその種子(カラスウリの種子は帯の結び目かカマキリの頭のような形でキカラスウリのものとは似ても似つかない)を庭に埋めた。そして忘れた。
 しかし、数か月が経ち、そう言えばあのキカラスウリの種子、どうしたっけな、何所かに埋めた様な気がするのだが・・・、と記憶の有るか無きかの細い糸を手繰り始めたまさにその頃、そんなちゃらんぽらんな私になど関係なく、キカラスウリは庭の片隅でしっかりと発芽し、育って来た。
 一年目は、頼りなげに数十センチにしか伸びなかったが、二年目三年目となる頃には、一寸困るな、と思うほどに蔓を伸ばし絡めるまでになった(まだ花は付かない)。

夕暮れのトホシテントウとキカラスウリ そんなキカラスウリの、今年芽吹いて1メートルにも伸びていない蔓につくまだ疎らな葉を、とある夕暮れ、クロウリハムシ(他の植物も食する)と共にむしゃむしゃと食べていたのが、トホシテントウ(上画像)。一見有名なナナホシテントウによく似ているが、違うのである。
 鞘翅(しょうし)はマット(艶消し)で、細かい毛が生えている。ナナホシテントウはつるっつるのてっかてかである。
 テントウムシには、大きく分けて二タイプある。肉食系と草食系(因みに私は草食系。お肉お魚は苦手である)。
 肉食系の代表は、ナナホシテントウとナミテントウ(2005年6月16日記事参照)。多くの人が、目にし又テントウムシと言われイメージするのは、この二種だろう。前者は日本全国及びアジア、ヨーロッパ(黒紋が小さい)、アフリカと広く分布。後者は日本全国から東アジアに分布。共にアリマキ(アブラムシ)を食べる。
 草食系のテントウムシは、マダラテントウ亜科に属するものだけで、テントウムシの中では少数派である。肉食系に比し、表面に短い毛があり艶が無いのが特徴。代表的存在は、このトホシテントウとオオニジュウヤホシテントウ及びよく似たやや小ぶりのニジュウヤホシテントウだろう。後二者は、ジャガイモやナス、ピーマンなどのナス科植物を好み、農家さんには天敵である。私は子供の頃、通っていた小学校脇の、裏手の雑木林に続く小道端に生えたワルナスビ(オニナスビとも。北米原産の外来種。有毒多年草)か何かのナス科植物の葉を、無残にもスカスカの網目状にしているどちらかをよく見た記憶がある。名の由来は共に、「二十八」の斑紋を持つからである。オオニジュウヤホシテントウは全国に分布するが、比較的寒冷地を好み、本州では関東以北に多く、暖地では山地に多い。その他朝鮮半島、中国、シベリアにも分布。ニジュウヤホシテントウは本州以南の日本各地、中国に分布。
朝方のトホシテントウとキカラスウリ トホシテントウは、北海道南部以南の全国と中国に分布し、名の通り「十星」を持つ。ウリ科植物を食する。多くのテントウムシは成虫で越冬するが、トホシテントウは主に幼虫で越冬し、春に蛹化し五月ころ羽化するとか(食草の芽吹きに合わせて)。この個体も羽化したてかもしれない。幼虫と蛹は、写真でしか拝見したことは無いが(実際に見たような気も微かにするが)、可也の異形(いぎょう)っぷりで、おどろおどろしい程である。ただ、それは見た目だけで全くの無害。見かけてもあまりビビらないで頂きたい。
 十星さん、別段珍しい種ではないのだが、私は、随分と久々にお目にかかった。それに、自宅庭では多分お初である。ために、態々撮影させて頂いたのである。
 翌日朝も、カメラで狙う私など眼中にないように、夢中で食事をしていた(下画像)。

 庭に、キカラスウリと言う植物種がひとつ増えたことにより、今まで飛来することのなかったトホシテントウと言う動物種がひとつ増えた。種の多様性が若干増し、庭の生態系が僅かだけれど豊かになった、と言えるであろうか。
 「庭先にも生物多様性」を、ちょっと、実感した次第である。

8月14日追記:8月12日、落花したキカラスウリの花を発見。蔓が絡まった庭木の遥か上方に幾つも蕾があり、その後続々と咲いている。(9月8日記事あり)

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*トホシテントウ(Epilachna admirabilis):コウチュウ目テントウムシ科マダラテントウ亜科。全長6-9mm。カラスウリやキカラスウリなどの巻きひげに産卵する
*キカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica):ウリ科カラスウリ属の蔓性多年草。雌雄異株。巻きひげを使って他の植物に巻き付く。全国の山野に自生。カラスウリの実が赤いのに対しその実は黄色い。主にスズメガをポリネーター(送粉者、花粉媒介者)とする。カラスウリの花は夜しか開かないが、キカラスウリは翌日午後くらいまで開いている
*肉食系と草食系:他に菌類を食べる菌食系グループもある。うどんこ病菌を食べる小さくて可愛らしさグンバツのキイロテントウが良く見られる代表格

卯月二十二日  生命のweb−生物多様性
コクワガタ_生物多様性 昨年秋のこととなりますが、ちょっと気になるニュースがありました。それは、内閣府が昨年7-8月に行った、「環境問題に関する世論調査」と題するアンケート(全国20歳以上1834人に面接方式で実施)の結果で、「生物多様性」という言葉を「聞いたこともない」という答えが、非常に多かったという事。
 アンケートは、自然に対する関心、エコツーリズム、生物多様性そして絶滅危惧種の四項目で行われましたが、この中から、一番目と三番目について、一部数字を挙げてみたいと思います。

■自然に対する関心
関心がある 前回:90.4% → 今回:89.1%(減) (前々回:91.7%)
・非常に関心がある 29.5% → 21.9%(減) (前々回:35.2%)
 最大は70歳以上:30.0%、最少は20〜29歳:21.5%
・ある程度関心がある 60.9% → 67.2%(増) (前々回:56.5%)
 最大は30〜39歳:75.7%、最少は70歳以上:56.3%

関心がない 前回:8.8% → 今回:10.5%(増) (前々回:9.0%)
・あまり関心がない 8.0% → 9.4%(増) (前々回:7.2%)
スミレ_生物多様性  最大は20〜29歳:19.1%、最少は60〜69歳:6.7%
・まったく関心がない 0.8% → 1.1%(増) (前々回:0.8%)
 最大は70歳以上:1.9%、最少は40〜49歳:0.3%

■生物多様性
・言葉の意味を知っている 前回:19.4% → 今回:16.7%(減) (前々回:12.8%)
 最大は20〜29歳:26.7%。最少は70歳以上:11.0%
・意味は知らないが、言葉は聞いたことがある 36.3% → 29.7%(減) (前々回:23.6%)
 最大は20〜29歳:35.9%、最少は70歳以上:21.5%
・聞いたこともない 前回:41.4% → 今回:52.4%(増) (前々回:61.5%)
 最大は70歳以上:65.2%、最少は20〜29歳:36.6%

(全国20歳以上を対象に、前回は2012年6月1912人に、前々回は2009年6月1919人に実施)

 全体に、環境に対する関心が薄れていることが見えています(「自然に対する関心」の20歳代目立つ)。
 特に「生物多様性」については顕著。「聞いたこともない」は、前回から多かったのが、11ポイントも増加。半分以上の方が「何それ?」、という事ですね(前々回よりは減っているけれど)。
 確かに「生物多様性(biodiversity)」と言う概念は可也馴染み薄で、且つ少々掴み難いものかもしれません。斯く言う私も、上手く説明しろと言われたら一寸もたつきそう。でも頑張って説明してみたいと思います。
 「生物多様性」とは、極簡単に言えば、生物種、遺伝子そして生態系のそれぞれのレベルで、バラエティ豊かに多様な生物が存在している状態を示すもの、です。
 簡単すぎるので、もちょっと詳しく。
 上に、生物種、遺伝子そして生態系の三つのレベルを示しましたが、それぞれの詳細は以下のようになります。

◆種の多様性:様々な生物の種が存在する
 動物、昆虫、植物からバクテリア(細菌)、ウィルスまで多くの種が存在する。生物種の総和とも言える
◆遺伝子の多様性:同種の生物でも持っている遺伝子が異なる
 形や色・模様など同じ種でも個性があり、耐性・適応力なども均一ではない。個体の多様性とも言える
◆生態系の多様性:様々な生物が関わり合って構成する様々な生態系が存在する
 高山、森林、里山、河川、湖沼、干潟、サンゴ礁、深海など種々の生態系が存在する。同一の生態系は存在しない

 こう見れば、「生物多様性」とは、多様且つ複雑な地球生態系それ自体、と言えるようなものであることが解ると思います。
 現在、気候変動(地球温暖化)、森林伐採、海洋汚染、密猟・乱獲また外来種の導入・増加等の人間活動の地球規模の拡大により、この生物多様性は加速度的に大きく低下し、重大な地球環境問題の一つとなっています。
 国連で2001-2005年に実施された「ミレニアム生態系評価」には、以下の様な記述が見られます。
・この300年で世界の森林面積の半分が失われた
・過去40年で河川・湖沼からの取水量は倍増した
・現在残る湿地は1900年頃の半分
・1980年代頃以降、マングローブの35%が失われ、サンゴ礁の20%が破壊され更に20%が極めて質が悪化もしくは破壊
・海産魚類資源の少なくも1/4が漁獲過多
・生物種の絶滅速度は、人間が関与しない場合に比し100-1,000倍に達する
・次世紀までに鳥類の12%、哺乳類の25%、両生類の少なくも32%が絶滅
・生態系サーヴィス(人類が生態系から受ける恩恵)「提供」「調節」「文化」「基盤」の24項目中15項目(漁獲、木質燃料、遺伝資源、淡水、災害制御など)で低下・悪化している
(現時点の生態系を評価すればこれらより更に厳しい内容となるでしょうね)
里山_生物多様性  生態系の多様性が失われれば、生態系の構成要素である生物種の絶滅の可能性は高まる。遺伝的多様性が失われれば遺伝的な劣化が進み、適応能力も低下し種の絶滅の危険性は高まる。そして、種の多様性が失われれば、すなわち種の絶滅が進めば、前記二つの多様性も失われることとなる。どれ一つが多様性を失っても、影響は他に及び、負のスパイラルが生じ、地球生態系の豊かさも安定も、損なわれることとなる。
 当然乍ら、ヒトもその地球生態系の一部であります。

 1992年5月、失われつつある生物多様性の保全、生物多様性の持続可能な利用及び遺伝資源の利用から生ずる利益の公正な配分を目的として、ケニアで「生物多様性条約(CBD)」が採択され、6月日本も署名し、翌年12月発効しました。2010年には、当条約の名古屋で開かれた第10回締約国会議(COP10)において、条約規定に実効性を持たせるための具体的措置を定めた、「名古屋議定書」が採択されています。またこのとき、生物多様性の損失を止めるための2010年以降の世界目標(2011-2020年)となる「愛知目標」も策定されました。
 生物多様性の保全に、そして喪失にも大きく関わり乍ら、日本での「生物多様性」の認知度、少々低すぎませんか。時々により人々の関心はうつろふものとは言い。メディアの方がたにはもっと取り上げて頂き、環境省さんにはもっとプッシュして頂きたい。
 生物多様性は、近所の雑木林にも川にも、そして庭先にも存在します。時には少し意識してみるのは如何でしょう。我々も含めた多種多様な生物が直接間接に関わりあい、この惑星の上に織り成す生命のwebをイメージしながら。

 最後に、生物多様性条約の前文原案にあったという言葉を引用(WWFジャパンより)させて頂きたいと思います。当条約の目的は、上記また下の注釈(*印)にあるように、人間目線の価値重視が如実ですが、実はこんなことが語られていたのだそうです。残念ながら何故か、削除されてしまいましたが。
 「人間が他の生物と共に地球を分かち合っていることを認め、それらの生物が人類に対する利益とは関係なく存在していることも受け入れる」

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*生物多様性条約(Convention on Biological Diversity):2014年5月現在で、締約国は194か国+EU(アメリカは未締結)で、事務所はカナダ、モントリオールにある。締約国には国家計画の作成と実行が義務付けられている。
条約の目的は、
1 生物多様性の保全
2 生物多様性の構成要素の持続可能な利用
3 遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分
現在は1の存在が薄くなり2・3がメインとなる傾向が強く問題となっている
*名古屋議定書:「遺伝資源へのアクセスとその利用から得られる利益の配分に関する名古屋議定書」
*愛知目標:「生物多様性新戦略計画」。2050年までに「自然と共生する」世界を実現するヴィジョンをもって、2020年までに生物多様性の損失を止めるための緊急の行動を実施する20の個別目標
*種の絶滅:3,000万とも考えられる生物種のうち、1975年以降は毎年40,000種が絶滅しているとも言われる(2010年版生物多様性白書)
*森林が半減:2011年版生物多様性白書には、「ミレニアム生態系評価によれば、この30年で世界の森林面積は半分になった」と記載されている。間違えだと思うけど
*ミレニアム生態系評価(Millennium ecosystem Assessment, MA):国連主唱により2001-2005年にかけて行われた地球規模の生態系の総合評価。95か国から1360人の専門家が参加。生物多様性の損失がどのように人間生活に影響を及ぼすかを明らかにした。
「人間活動による環境負荷や資源枯渇により、地球生態系はもはや将来世代を支える能力があるとはみなせないが、政策・慣行の大きな改革と適切な行動により生態系サーヴィスの回復は可能である」と結論。
因みに四つに大別された生態系サーヴィスの詳細は以下になります。
1 供給 食糧・水・燃料・薬品原料等の供給
2 調節 気候安定・防災など
3 文化 芸術・教育・レクリエーション等に関わる恩恵
4 基盤 水循環・土壌形成・光合成(O2生産)・一次生産等

参考:EICネットWWFジャパン生薬、薬用植物(薬草)と身近な野生植物(野草)のページ(創薬の話)千葉生物多様性センター研究報告第2号(2010年3月12日号)、ミレニアム生態系評価の概要(pdf)、環境白書
お薦め:環境省(生物多様性ページ)、緑のgoo(生物多様性特集

(画像は、上から、庭先で見つけたコクワガタ♀(Dorcus rectus.クワガタムシ科オオクワガタ属)、庭のスミレ(Viola mandshurica.スミレ科スミレ属)、近所の雑木林)

弥生五日  スポンジは何処へ―マイクロプラスチック
 台所仕事をしていると環境面がいろいろと気にかかる。水も使う、石けんも使う、生ごみ・包装ごみも出る。電気もガスも当然使う。地球上でのヒトの日々の暮らしによる環境への負荷は、如何ばかりであろうかと。
スポンジ  そんななかで、食器洗いのため日々昼夜二度は必ず使う(朝弱い私に朝食後食器を洗う気力はない)、だんだんと小さく薄くなって行くスポンジが気になる。このスポンジ何処へ行く?と。
 でもそれは、少し考えて見ればすぐに答えは出る。海へ行くのだ。
 毎日、茶わんやお皿を洗い酷使されるスポンジは、削れ、摩耗し、微細なプラスチックの破片となって排水口から排水管、そして下水道へと流れ、下水処理施設のフィルターを潜り抜け、川へ湖へ、やがて海へ。

 マイクロプラスチックと呼ばれる微細なプラスチック片(一般に5mm以下)は台所から生まれるだけでは勿論ない。野外に投棄されたプラスチックごみからも生じ、雨水(うすい)に流され海へと注ぎ込まれる。洗濯機からは、衣料の合成繊維(アクリルなど)の破片が、また洗面所からは、スクラブ洗顔料や歯磨きに含まれる「プラスチック・マイクロビーズ」が排水に混ざり海へと消えて行く。
 また、上記の様にマイクロプラスチックが海に入る形ではなく、投棄されたペットボトルやレジ袋などがそのまま海に入り、波や紫外線で粉砕されマイクロプラスチックとなる場合もある(直接海洋投棄されているごみは少なく、80%は陸上由来と考えられているそうだ)。
 マイクロプラスチックが海へと入ることが何故問題なのか。それは、マイクロプラスチックが、海洋中のプランクトンやサンゴ、また貝・魚、イルカ・クジラ等々の生物に取り込まれ、健康に害を及ぼす可能性があるからである。当然それは、海洋生物を食する人間にも繋がることである。
 プラスチックは生物体内で消化はされぬゆえ、取り込まれれば消化器官が詰まりそう、損なわれそうというのはすぐに想像がつく。がしかし、問題はそれだけではないのである。プラスチック自体に含まれる化学物質、例えばビスフェノールAやノニルフェノールの様な内分泌撹乱物質(環境ホルモン)が生物体内で溶け出し健康を損なうことも考えられるし、また、プラスチックはDDTやPCB、ダイオキシンの様な有害な化学物質を吸着し濃縮(周囲の海水の100〜100万倍の濃度ともいわれる)する性質があるため、プラスチックを取り込んだ生物を又その生物を捕食する生物(当然人間も含まれる)を汚染し、延いては生態系全体に悪影響を及ぼすおそれも十分に有り得るのだ。
 マイクロプラスチックだけではなく、プラスチック製品そのものが、野生生物に与える悪影響も勿論ある。魚や海鳥、ウミガメが餌と誤認して食べてしまう、ナイロン漁網にウミガメやイルカ、オットセイが絡まり命を落とす等々。こちらも深刻である。

 マイクロプラスチックやプラスチック製品による海洋汚染を防ぎまた改善するには、個々人がプラスチック製品の使用を控える様にすることや、適切に処分するように心がけること等と同時に、プラスチックごみを有害ごみとして処理・管理する、排水処理施設を改善する、また、その半分ほどは容器・包装など使い捨てとされるプラスチックの利用そのものを削減する、より利用し易い生分解性プラスチックやより進んだリサイクルの研究・開発を促進するなど、行政・企業も含めた社会全体での取り組みが、必要であろう。

 海は「プラスチックのスープ」と化しつつある。

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*スポンジ:本来は海綿動物のカイメン(天然スポンジ)のことだが通常はポリウレタン製の合成スポンジを指す
*プラスチック:世界の生産量は1950年では150万トンだったが2008年には2億4500万トンに増加。EUでは2008年のプラスチックごみ2500万トン中リサイクルされたものは530万トンに限られた
*プラスチックごみの海洋流出:アメリカの大学の研究によると2010年では世界で800万トンのプラスチックごみが海洋に流出した。うち83%がワースト上位20か国によるもの。20か国はアメリカを除き新興国で、経済発展に廃棄物処理の管理や施設が追い付いていないためと考えられている。海洋ごみの大半は消費者が廃棄したものだそう
*生分解性プラスチック:でんぷんなどを原料にし環境中で微生物により最終的に主に水と二酸化炭素に分解される。高価、成形し難い、熱に弱い、壊れやすい、リサイクルしにくいなどの弱点がある
*ビスフェノールA(BPA):ポリカーボネイト樹脂などの原料。ポリカーボネイト樹脂は多くのプラスチック製品に使用されている。エストロゲン(女性ホルモンの一つ)類似の生理作用をもたらす。動物の胎児・子供に低用量で影響があるとされ、ヒトにも影響があるのではと懸念を持たれている
*ノニルフェノール(NP):合成洗剤(多くは工業用)やプラスチックの酸化防止剤や分散剤(微粒子を液体中に均一に分散させるもの)等の原料に使われる。雄メダカを雌化させる作用が実験で確認されている

如月十二日  早朝高血圧
 ここのところ続けて書いている様に、我が家のおばあちゃんはアルツハイマー病で、それが私としては心配のタネであるのですが、現時点に限って言うと、アルツハイマー病より、「早朝高血圧」が心配。朝方、起床後に測定すると、上(収縮期)が軽く200mmHgを越えてしまう。朝食後になると140mmHg程度にまで下がる。その後日中や夜間は、矢張り同程度で左程には高くは無い。
早朝高血圧  この様なタイプの高血圧を上記の如く早朝高血圧と呼び、高血圧治療を受けている方の半数以上は、このタイプにあたるとか(データにもよるが≒55〜60%)。
 早朝高血圧は文字通り起床後の早い時間帯のものなので、家庭で手軽に測定できる血圧計が普及するようになって、存在が知られるようになりました。昔は病院・診療所で日中血圧測定するのが普通だったから、確かに知るのは難しいですね。
 その早朝高血圧ですが、原因には主に二つのことが考えられています。
 一つは目覚めと共に、心臓の動きを活発にする交感神経が働きだし、ノルアドレナリンが分泌され血圧が上昇するというもの。早朝は心臓に入る血液量が少なく、また血液の粘性が高い所へ持ってきて血圧が急上昇すると、高齢者の場合ただでさえ硬く脆くなっている血管が破れたり或いは詰まったりしてしまう。心筋虚血(狭心症や心筋梗塞)また脳卒中(脳梗塞や脳出血)の様な心血管系発作は起床後に発作が起こることが非常に多く、他の時間帯の三倍程度も多い。心筋虚血に関して言うと、朝6時頃から発症率は急激上昇し8-10時頃にピークを迎えています(脳梗塞は朝8時頃がピーク)。
 もう一つの原因は、体内時計の働きで目が覚める頃になると、脳下垂体が副腎皮質ホルモンのコルチゾールの分泌を促し、このホルモンの作用によって血管が収縮し血圧が上がる(身体を動きやすくするという事)というもの。
 他にも、高齢や冬の寒さ、ストレスなども原因になるとされています。

 高血圧症の治療中で、まあまあ上手くコントロールできて抑えられていると思っていても、上記の如くほぼ半数の方は、早朝高血圧が認められています。高血圧の皆さん、是非、朝、起床一時間以内、トイレを済ませて後、朝食前、服薬前に血圧測定してみましょう(結構大変ですけどね)。
 うちのおばあちゃんも、主治医さんに、現在では朝測定することが高血圧学会でも推奨されていると指導頂き、寝起きに測定するようになって(計っているのは私ですが)それではじめて、早朝高血圧が発覚しました。分かったからと言って治るかどうかはまた別ですが、自覚があれば、寝起きに急な動きや、激しい運動はしないようになりますからね。

 降圧剤は継続的に服薬していますが、寝ている間に効果が切れてしまう事が考えられるので、就寝前に新たな降圧剤(イルベタン)を服用しています。でも、呑み始めてから四週以上経つ現在のところ、効果が感じられていない。
 まだ当分寒さは続くので、気になるぜ、早朝高血圧。

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*早朝高血圧:このうち、早朝(起床から1〜1.5時間くらいの間)のみの一過性血圧上昇をモーニングサージ型と呼ぶ。これに対し夜間の血圧が高いまま(通常就寝中は起きているときより10%ほど低下する)なだらかに上昇して早朝ピークを迎えるタイプをノンディッパー型と呼ぶ
*ノルアドレナリン:アドレナリンの前駆体(ある物質が生成される前の段階の物質)。末梢血管を収縮させて血圧を上昇させる
*コルチゾール:糖質、タンパク質、脂質の代謝に関連するホルモン。ストレスに反応するためストレスホルモンとも。体温・血圧・血糖値の上昇を促す
*まだ当分寒さが・・・:高血圧が主な原因の脳出血発症は冬に多い(脳梗塞は脱水状態になり易い夏場に多い)。心筋梗塞は血圧が上昇しやすい10-4月の寒冷期が多い

(画像は、おばあちゃんの当日朝の血圧データ。高いのぉ(4月18日追加))

睦月九日  冬ざれ
 昨年末(2014年12月記事)、ポタリング(自転車散歩)はお預け状態と書きました。大好きな行為なので、非常に寂しい。けれど、普段あまり行けない、少し遠目のスーパーになど時折買い出しに行けば、多少はポタリング気分が楽しめる。正直、この時期はポタリングに不向きではありますが、それでも、枯芝の公園を抜け、また、枝を露わにしたケヤキの並木をくぐりなどして、冬ざれた街を行けば、それなりの味わいはある。

ケヤキの並木  霜焼けの指を薄い手袋に包み、何時もと違うスーパーにポタリング気分を感じながら行けば、置いてある商品も普段のお店と微妙に異なりなどするので、それもまた一つの楽しみとなる。
 ただ、一寸だけれど困ることがある。それは、紙パックや発泡トレイの回収。
 今は、大抵のスーパーに、牛乳パックや発泡スチロール製食品トレイの回収ボックスが設置されていますが、このボックスに入れられるものが、お店によって異なる場合があり、時々間違えてしまうのである。普段最も多く利用させてもらっている、サ◯ットさんでは納豆容器も色付き発泡トレイもアルミ箔が貼られた紙パックもOKなのですが(すぐ近くの和◯さんはこの3つはどれもNG。その代り透明プラスティック容器(お惣菜や屋台の焼きそばなどの入っているやつね)が回収してもらえる)、偶に行く京◯ストアーさんといな◯やさんは共に、納豆容器も色付きトレイもアルミ箔が貼られた紙パックもすべてNGなのである。ついつい何時もの調子で納豆容器や色付きトレイを持って出かけ、回収ボックスの前で、あっ、そうか・・・、となってしまう。納豆容器や色付き発泡トレイを持ち帰ることになっても、重いわけでもそれ程嵩張るわけでもないので、別段問題にはなりませんが、ガッカリ感は否めない。折角持ってったのに、と。
 そんなことを幾度か繰り返すうちに、何故に納豆容器や色付きトレイがOKなお店とNGなお店とがあるのであろうか?と、気になり、ネットで調べてみました(以前から疑問には思っていたけれど、態々調べてみることはしなかった)。
 回収を行っている各自治体のサイトなど見ると、納豆容器や色付きトレイの回収は不可としているものが多い。ただ、理由の記載がない。それでも、色々調べると、「混ざる」のは困るということらしい。
 リサイクルには、大別すると、マテリアル・リサイクル(材料リサイクル)とケミカル・リサイクルとがあって、前者は廃プラスティック等を処理して新しいプラスティック製品の材料・原料として使用するもの。これは不純物が混ざっているとリサイクルの度に品質低下が起こってしまう。為に、納豆のねばりがとれ難い納豆容器や油の付着がとれ難いカップ麺の容器、また色付きのトレイは回収できないという事になるらしい。後者は、廃プラスティックを化学反応によって組成変換するもので、油化・ガス化などで化学原料としたり化学分解してモノマーに戻すなどする。異種プラスティックの混在や異物・汚れなどの不純物の混入は前者程には問題とならず、納豆容器もOKとなるらしい。
 私が調べた限りでは、お店や自治体により、納豆容器の回収に可不可の別があるのは、回収ボックスの向こうに、マテリアル・リサイクルとケミカル・リサイクルと言う二つの異なる道があると言うことに原因しているように思われますが、色付きトレイについては如何も良く分からない。若しかしたら、色付きトレイの可不可の違いは、廃プラスティック焼却の際の熱を回収・利用する、サーマル・リサイクルに利用されるか否かと言う違いによるのかもしれないけれど、もうこれ以上調べる気力が・・・無い。ネンザン(残念)。
 出来得れば、お店や自治体は回収の不可に関しその理由も示してほしい。回収できない理由によっては利用者側で改善可能なものもあるでしょうしね(汚れが原因ならしっかり洗うとか)。

 元来、冬が大好きな私だけれど、アルツハイマー病のおばあちゃんの寒さや乾燥に関わる健康管理(インフルエンザ等の感染症や高血圧に関する彼是また霜焼け・ひびなどの皮膚疾患)がなかなかしんどいので、早く暖かくならないかぁ、と思ってしまう。でも、否応なしに季節は廻(めぐ)る。時間の工夫をして、ちょい遠目のスーパーに時には出かけ、今しかない冬ざれのイキフン(雰囲気)を、悔い無きよう、しっかりと味わっておこう。  

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 遅くなりましたが、本年も、宜しく御願致します。

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*冬ざれ:草木が枯れ果て寂しい荒涼たる冬の様子、或いはその季節
*納豆容器:基本、納豆に限らずヨーグルト等でも紙容器のものを選びなるべくプラスティック容器に入ったものは購入しないようにしているのですが、賞味期限切れで半額シールが貼られていたりすると、売れ残ったら廃棄されてしまうのだ・・・と考え、つい買わずにいられなくなってしまう(フードロスは減らしたい)
*マテリアル・リサイクル:廃プラスティックを原料に近い状態まで溶かし、プラスティックのまま原料とする
*ケミカル・リサイクル:モノマー(多数重合してポリマーとなる)化はペットボトルの材料PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂のリサイクル(ペットボトルからペットボトルを再生する)が代表的
*サーマル・リサイクル:サーマル・リカヴァリー(熱回収)とも呼ばれる。上記二つの方式に比し環境負荷は大きいとされる。2006年、容器包装リサイクル法で認められた。欧米では一般に燃焼はリサイクルの概念に含まないらしい

(画像は、農工大学農学部正門から学部本館へと続くケヤキ並木。キャンパス内は可也自由に通り抜け出来る)

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