MYSTIC RHYTHMS

Heavysphere  その五

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ヘヴィ・メタル、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、クラシック等について語らせていただきます  Profile

CATHEDRAL:フォレスト・オブ・イクイリブリアム<この森の静寂の中で>
VAN HALEN:ヴァン・ヘイレン<炎の導火線>
DESTRUCTION ライヴ・ウィズアウト・センス
BEETHOVEN:交響曲第5番「運命」
PRAYING MANTIS:タイム・テルズ・ノー・ライズ
MAGNUM:チェイス・ザ・ドラゴン
AMORPHIS:テイルズ・フロム・ザ・サウザンド・レイクス


§索引
§凡例
§ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い

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FOREST OF EQUILIBRIUM/CATHEDRAL '91
フォレスト・オブ・イクイリブリアム/カテドラル 
order
フォレスト・オブ・イクイリブリアム/カテドラル 異形...異端...。邦題名からして「この森の静寂の中で」...って。メタルなのに静寂...? 何ですかこの逆説は...。と、訝(いぶか)しく思いながらも、ジャケット(デイヴ・パチェット作)に惹(ひ)かれ且つ、何でも聴きたい時期でもあった為購入(used)。早速聴いて納得。「静寂」と言う逆説的表現も有りか...と。CDプレイヤーが壊れたのかと思いました。だって、遅いんだもの。
 HR/HMと言う音楽は、ハード・アグレッシブ等という方向性に対し特化した音楽ですから、「速さ」と言うものへのベクトルを当然持っています。’70年代初頭のDEEP PURPLEの数々の名曲の中でも、特に有名な"Speed King"や"Highway Star"或いは"Burn"等に始まり、後にはRAINBOWの名曲"Kill The King"そして又初期JUDAS PRIESTの作品等に「速さ」の美学追求への萌芽が見られます。そして、パンク・ムーヴメントの洗礼を受けた後の、NWOBHMの時代、メタル音楽の時代を変えた、IRON MAIDENの衝撃のデビューにより、メタルの「速さ」追求は本格的となり、特に、スラッシュ・メタル、デス・メタル等のジャンルでは、速度の拡大競争が激化(一寸オーヴァー)して行く事となります。
 この流れ、全てではありませんが、全体としての「速さ」への流れの中で、進化・発展を遂げてきたメタル音楽を長年聴いて来た身には、この作品の「遅さ」、(私にとっては)何ともはや唐突な出現で、慣性力で前につんのめりそうになりました。
 ...光幽(かす)かな暗夜に漂う如きフルートとガット・ギターの音に続く、引き摺る様な超へヴィ・チューニング(ギター・ベースの音程を通常より下げたもの)のリフ...遠雷の様にドロドロと響くドラム...そして呪術者の如く妖しげなディストーション・ヴォーカル...。破壊し尽された街を、月光に照らされたゴジラがズシズシと歩いてる...様な、得体の知れぬ巨大なモンスターが、獲物をズルズルと引き摺り歩くかの様な...、音像。重く陰鬱な、且つ又長い曲が延々と続く訳ですから、予備知識なしで聴いた日にゃ、そりゃ面食らうと言うもの。お聴きになる場合は、事前の覚悟が必要です。
 とは言っても、初期BLACK SABBATH的この重さ、英国独特の湿っぽさ、同じく英国的そこはかとないお
笑い感。そして良く聴けば豊かに薫り来る伝統的HR/HMテイスト、等、私なんぞは、可也嵌まります。初期サバスがお好きな方、’70年代へヴィ・ロックがお好きな方は、案外無理なく聴けるかも知れません。でも、遅いよぉ。通常、速いばっかりの曲の中に、ポツンとスロー或いはミドルな楽曲があると、一寸ほっとするものですが、この作品は逆。4曲目("SOULSACRIFICE")で若干走り、5曲目("A FUNERAL REQUEST")の後半で一寸アップなテンポとなるのですが、そこでほっとしますから。魍魎(もうりょう)蠢(うごめ)く森の、濃密な闇夜に、一条の光射す...的安堵感です。
 あざといまでの遅さ、おどろおどろしさに、虚仮威(こけおど)し的・際物(きわもの)的なものすら、一聴感じてしまいますが、聴くほどに深みを増す味わい...、これは、上記に「英国」云々(うんぬん)、「豊かに薫る伝統的HR/HMテイスト」云々等と在るように、’60年代から連綿と続くブリティッシュ・ロック、或いはハード・ロック、へヴィ・メタル(或るいはプログレッシブ・ロック)のエッセンスを吸収・同化させた、彼らの持つ、極めて懐の深い音楽性、これのなせる業(中心メンバーのリー・ドリアン(vo)、ギャリー・ジェニングス(g)の二人は、メタルおたくとしても有名)。暗い...重い...息苦しい...の三拍子で、初心者泣かせの一枚として有名ですが、これを楽しめるようになったら、貴方も貴女も、立派な免許皆伝メタル馬鹿です(そうか?)。
 異形なる、でも熟聴すれば至って「まとも」なる、一枚。Heavyを極めた、アンダーグラウンドのにほいプンプンの、一寸マニアック、だけれども、名盤。

 '06 11/28

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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭
重度:♭♭♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭ ポップ度:♭
〔ドゥーム・メタルの王様とも称される彼らの1st。リーダーのリー・ドリアンは、この以前には世界最速とも呼ばれるNAPALM DEATHというバンドに在籍しておりました。「世界で最も遅い音楽を作るのだ」との意気込みを持って作られた当作ですが、2nd以降の作品は、大分解り易い・聴きやすいスタイルになっているらしい(未聴) official

*リフ(Riff):ボーカルやソロ演奏の伴奏として使われる比較的短い反復旋律
*NWOBHM:New Wave Of British Heavy Metal(ニュー・ウエイヴ・オブ・ブリティッシュ・へヴィ・メタル)。英吉利で’70年代終わりから’80年代初頭にかけて興ったHR/HMの一大ムーヴメント。この頃から「ヘヴィ・メタル」という言葉が一般化。代表バンドは IRON MAIDEN
*スラッシュ・メタル:’80年代後半メタル界を席捲した、より激しさとスピードを追求したメタル
*デス・メタル:スラッシュ・メタルの発展型。さらなる重さ、ダークさ、暴虐を追求。プレイヤーには高度な演奏技術の持ち主が多い
*ドゥーム・メタル:doomとは、運命、滅亡、破滅、死等を意味する(doomsdayと言えば最後の審判の日)語。この辺りからお分かり頂けるでしょうが、暗鬱な雰囲気や重さを強調したメタルの一スタイルです

VAN HALEN/VAN HALEN '78
ヴァン・ヘイレン/ヴァン・ヘイレン 
order
ヴァン・ヘイレン/ヴァン・ヘイレン 当作品の三曲目に鎮座まします、"YOU REALLY GOT ME"を当時はじめて聴き、或いはvideoで見、呆然とした記憶をお持ちの方は、多いと存じますが、小生もその一人。恐らく、最初はFMで聴いたのだと思いますが、イントロのギター・リフに全身の立毛筋が瞬時に反応。「何この音...」。当時聴き捲くっていたアーティスト達、KISSやAEROSMITH、或いはRAINBOW、SCORPIONS等とは明らかに異なる音像。このノイジーでメタリック、且つ分厚いサウンド...「スゴイ...」。新しいHR/HMの時代の到来を予感させるものがあったのでしょう。当時彼らは、強い衝撃を持って、多くのファンに迎え入れられました。特に、ギターの、エディ(エドワード)・ヴァン・ヘイレン。
 彼エディは、ヘヴィ・メタル界に於いて、「IRON MAIDEN前/IRON MAIDEN後」と言う時代区分が造られた如く、少なくもHR/HMギター界に於いては、「エディ・ヴァン・ヘイレン前/エディ・ヴァン・ヘイレン後」と言う時代区分を造ったと言っても過言ではない、それはそれは有難いお方なのです。「革命児」と言う表現、冠させて頂きます。
 何が革命かって、先ず何と言ってもその音。オリジナルの改造ギターとマーシャル・アンプ及び各種エフェクターとの組合せから弾(はじ)き出され或いは紡ぎ出される、そのサウンドは、ノイジーでありながらも、艶やか・ブリリアント。メタリック且つ伸びやかで、且つ又重厚。比較的オーソドックスでシンプルなロック・ギターの音を踏襲してきたそれまでのHR/HMバンドのギター・サウンドとは明らかに質を異にした、よりヘヴィ&ハードなものでした。次に挙げるのは、そのギター。上記の改造ギター。この作品当時、ハムバッキングのピック・アップを搭載した白地に黒ストライプのストラトキャスター(ジャケットに写っている)と、ボディ・エンドを大胆にカット(カットしたのはこの作品レコーディング後か)した赤地に白ストライプのデストロイヤー("YOU REALLY GOT ME"は此方でプレイ。来日時、TV番組(ぎんざNOW!)でこの曲をテープに合せて演奏したのですが、エディはストラトの方を持っていた為、ソロのエンディングに入るスイッチング・トレモロが出来ず、トレモロ・アームを動かして誤魔化していたのを憶えています)。前者の様なストラトキャスター的デザインのギターに、ハムバッキングを搭載すると言うスタイルも、後者の様な変形ギターも、この後HR/HM界では一般的なものとなって行きます。それまでは、メーカー・オリジナルの、比較的スタンダードな既製モデルをそのまま使用(カラーの変更や細かい改造・チューンナップはしても)、と言うのが一般的でしたから、ヴィジュアル的にも、可也彼の個性的で大胆な改造ギターは、インパクトが有りました。それに、電気ギターには、ヴォリューム・コントロールの他に、トーン(音色)・コントロールが付いているのが普通であり、又ピック・アップも前後(フロントとリア)に2基(機種により3基)搭載されるのが普通で、それら各種の組合せにより、繊細な音色を紡ぐ、と言うのが常識的な考えだったのですが、エディの白黒改造ストラトキャスターには、トーン・コントロールがなく、又ピック・アップも、よりハードな音色の出るリアに1基搭載されているのみと言う、「ソフトさなんてクソくらえ!」的発想、後にはHR/HM界では珍しくなくなったそのスタイル、衝撃的でした...。そして最後に挙げるのが、その演奏技術。基本的な技術が非常に優れているのは当然として、そのトリッキーで想定外なプレイは、世界中のギター小僧を唖然・呆然とさせました。そう、エディと言えば「ライト・ハンド奏法(タッピング)」。この右手(要するに利き手)を指板(しばん)上にもっていって弦を鳴らし、普通では考えられないフレーズを紡ぐと言う掟破りな奏法、最初に行ったのはエディではないようですが(諸説あります)、後には多くのプレイヤーが基本的技として普通にこなすようになったのは、彼エディの功績。本当に革命的かつ衝撃的でした。「こんなんありか...?」と...。また、この作品では未だ使用されていませんが、後には、フロイド・ローズ・トレモロ・ユニットと言うこれまた革命的なシステムを手に、アーミングにも激しい風を吹き込む事にもなります。本当に、彼エディの持ちこんだ数々のアイデアと強烈なエナジーは、沈滞気味のロック・ギター界に、ジャイアント・インパクトを与えたのでした。ただ、エディは、その技術・アイディア或いは革命性ばかりが取り沙汰され、メロディの美しさとかプレイの「味」等と言う側面からは残念ながら殆ど評価されていないのですよね。確かにそうした側面、一寸印象薄いですけれど...。
 話がエディに終始してしまいましたが、グラマラスでインパクト抜群のデイヴィッド・リー・ロスと言う不世出(ふせいしゅつ)なヴォーカリストをフロントに、堅実で重厚なリズム隊で脇を固めたユニットは、非常に纏まりと安定感があり、デビュー作から行き成りのハイ・クオリティ。...と書くと、何か連想しますね。そう、LED ZEPPELIN。この当時、彼らVAN HALENを評し、「ジェフ・ベック率いるレッド・ツェッペリン」、とした雑誌記事がありましたが、言い得て妙...と思った記憶があります。ツェッペリンと比較するのは畏(おそ)れ多いかもしれませんが、でもそれ程のインパクトがあったのですよ、当時。本当に、彼ら及びこの作品には。
 パンク一色に塗り込められた感のある’70年代末期、彼らのデビューは、オールド・ウェーヴと蔑(さげす)まれていたHR/HM界の一つの僥倖(ぎょうこう)だったかもしれません。彼らの存在が、’80年代におけるHR/HMの一大ムーヴメントを産出す、一つの基盤になっていたのは、確実だと思います。
 色々な意味で、HR/HMの歴史を変えた、正に歴史的一枚。HR/HM道を極めたければ、必聴。課題盤です。

 '06 9/4

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お気に入り度:♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔阿蘭陀からの移民である兄アレックス(dr)と弟エディのヴァン・ヘイレン兄弟を中心に結成。ヴォーカル交代
を繰返しつつ今も現役。一般的人気も併せ持つ亜米利加を代表するHR/HMバンド  official Classic Van Halen

*"YOU REALLY GOT ME":オリジナル曲ではなく、KINKSの’64年の全英No.1ヒットのカヴァー
*ストラトキャスター:’54年誕生の世界でもっとも有名な米フェンダー社製電気ギター。通称ストラト
*ピックアップ・ハムバッキング:ピックアップは弦の振動を拾い電気信号に変えるパーツ。マイクとも言う。ハムバッキングはピックアップの一タイプで、ノイズが少なくファットでパワーのある音が特徴
*ライトハンド(右手)奏法・タッピング:通常、ギターやベースは非利き手の指を使い指板上で弦を押さえ、利き手を使いボディ上で弦を鳴らします。この奏法の場合は、利き手の指を指板上に移動させ非利き手の指と組合せ、ハマーリング・オン及びプリング・オフを駆使し弦を鳴らします
*ハマーリング・オン:弦を鳴らした後、押弦している指より高いポジション(同弦の高い音が出るポジション)に他の指をハマー(ハンマー)の様に叩き付けて弦を鳴らす技
*プリング・オフ:ハマーリング・オンの逆。弦を鳴らした後、押弦している指を弦に引掛けながらはずして弦を鳴らし、押弦していた指より低いポジション(同弦の低い音が出るポジション)の音を出す技
*アーミング:ストラトキャスターにはスプリングと金属アームの組合わせにより弦の音程を変え音を震わせる「シンクロナイズド・トレモロ・ユニット」が搭載されており(無いものも有る)、このトレモロ・ユニットを使用したプレイを通称「アーミング」と言う。フロイド・ローズ・トレモロ・ユニットはシンクロナイズド・トレモロ・ユニットを元にフロイド・ローズ氏が改良したもの。弦をロックして音程のくるいを防ぎ尚且つ、音程の変化を劇的に大きくした
*スイッチング・トレモロ:ピック・アップが2基ある場合、ピック・アップ切替スイッチを細かく動かしトレモロ効果を得る奏法
*トレモロ(伊太利亜語で振動):本来音を連続的に細かく小刻みに弾き音が持続しているように聴かせる奏法
*IRON MAIDEN:言わずもがなのメタル・キング。彼らのデビューも衝撃的でした
*JEFF BECK:ハイ・テクニック&ハイ・センスでアイデアに溢れた、ギタリストに崇拝されるギタリスト
*LED ZEPPELIN:ジミー・ペイジ率いる言わずと知れたHR/HM或いはROCKの権化

LIVE WITHOUT SENSE/DESTRUCTION '89
ライヴ・ウィズアウト・センス/デストラクション 
order
ライヴ・ウィズアウト・センス/デストラクション FIFAワールド・カップ2006独逸大会。伊太利亜優勝(おめでとう御座います)...仏蘭西かと思ったんだけどなぁ...。いやその前に、独逸VS伯剌西爾のファイナル組合せかと予想していたのですが...。と、行き成り音楽のページで蹴球話ですが、独逸なのです。独逸−ドイチュラント。
 今回のW杯独逸大会で、何と言っても印象に強く残ったのは、国旗。独逸国旗。独逸は日本同様一寸込入った過去を持つ国であるからでしょう、どうも独逸国旗は何時も控えめ、の印象が強かった。ナチス第三帝国時代の国旗とは異なるものですが、やはり何とはなしに、過去に由来する複雑な思いが、潜在していたのかもしれません。我々が日章旗に感じるものと共通するものでしょうか。所が今回、東西統一後初の国際的国家イヴェントと言う事も有ってか、大小様々な独逸国旗が此れでもかとはためき或いは翻(ひるがえ)り、Tシャツ・プリントからフェイス・ペイントまで、スタジアムどころか国中を埋め尽くさん勢い(飽くまで映像からの印象です)。非常に新鮮な感覚を味わいました。集団的愛国心発揚的行為(特に統一後)には、慎重にならざるを得ないのは、我々と同様でしょうが、時代が世代が変わりつつあるのでしょうか...。
 クラシックの次はスラッシュ・メタル、しかも行き成りサッカー話...と、分裂しとるなぁ、とお思いでしょうが、全て「独逸」なのです。
 ここで今回紹介致すは、スラッシュ・メタル華やかりし頃、独逸代表として名を馳せたデストラクション。名前からして直球勝負。当初は三人組でしたが、この作品当時はツイン・ギターの四人組。ミニ・アルバムを含めれば六作目に当る、’87〜’88年にかけてのツアーにおいて収録されたライヴ作品。彼らの代表曲を(一応)網羅(もうら)したベスト・アルバム的意味合いも持つ、彼らの代表作と一般にはされています。一聴耳を捉(とら)えるのは、その見事な金属的整合性に満ちたギター・リフの圧倒的突進。凄みでは二歩三歩譲るとしても、この突進力と機能的美は、SLAYERの超名作「REIGN IN BLOOD」をも凌駕(りょうが)する勢い。そして何より、このバンドの看板と言えば、シュミーア(b,vo)。彼の耳障(ざわ)りな金切り声は、ナイフのような鋭利さを湛(たた)えるサウンドに、狂気を醸(かも)し出し、唯一無二の個性を与える。全体に音は軽めですが、生生しく、緊張感にあふれ、ライヴの臨場感は良好。音質も良いし、演奏レヴェルも全体に非常に高い。ただ、ドラムがやや一本調子(キレの良さとスピード感は光る)なのと、ベースが良く聞えないのが(ヴォーカル兼任なので仕方ない面もあるのですが)若干残念です...が、間違いなく、メタルLIVEの名作の一つ。
 独逸のバンドらしい、精密工業的整合感漂う、質実剛健、男メタル。音の軽重とはまた別な重厚感(飽くまで”感”)。ダークな美を追求しつつも、どこか今一つあか抜けない親しみやすさ。祖国の大先輩ルードヴィヒさんにもSCORPIONSにもACCEPTにも、そしてRAGEHELLOWEENにも通づる「独逸」なにほい...。何故か日本人受けするキャラです。私も大好き。当時の主流と言えば、やはりMETALLICAMEGADETH、そしてSLAYER等の亜米利加ン・スラッシュですが、彼らとは異なる湿りや冷気、そこはかとないクラシック音楽的「美」等、やはり「欧州」。"ETERNAL BAN"で聴かれるギター・ソロ等、リッチー直伝のネオ・クラシカルなテイスト...。
 金鑢(やすり)で引っ掻くが如きヒステリックな音像...聴き手に一切媚(こ)びない潔さ...先輩ACCEPTの歴史的名作「RESTLESS AND WILD」の持つ雰囲気も髣髴(ほうふつ)とさせる、彼らが残した、メタルの名盤...であると同時に、あの轟音・爆音一筋ウン十年のMOTORHEADが残せし「NO SLEEP'TIL HAMMERSMITH」をも凌がん勢いのハイ・テンション、ハイ・エナジーで飽和状態の、ライヴの名盤。

 '06 7/12

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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭♭♭ 暗度:♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭ ポップ度:♭
〔この作品後、何を血迷うたかシュミーア解雇。その後没落するも現在シュミーア中心に再起動(三人編成)され活躍中  official

*ドイツ国旗:ナポレオン軍との戦いに参加した学生義勇軍の「黒いマント・赤い肩章・金のボタン」に由来するそうな
*第三帝国:ナチスは、第一帝国=神聖ローマ帝国 第二帝国=ドイツ帝国(ホーエンツォレルン家)とし、ナチス・ドイツ=第三帝国 とした
*ホーエンツォレルン家:Hohenzollern 元は南独逸の貴族。十五世紀よりブランデンブルグ選帝候、1701〜1918年までプロイセン(プロシア)王。1871〜1918年迄ドイツ皇帝を兼ねる。今も田園中の山上に建つ居城ホーエンツォレルン城は有名
*スラッシュ:thrash 鞭打つ 強く叩く 打ちのめす等の意。’80年代後半メタル界を席捲した、より激しさとスピードを追求したメタルを「スラッシュ・メタル」とよんだ。当時は何よりも過激な音楽でした
*リッチー:リッチー・ブラックモア:DEEP PURPLERAINBOWで活躍した英国人ギタリスト
*ネオ・クラシカル:クラシック音楽的音階やフレーズを大きく取り入れたヘヴィ・メタルの一スタイル
*ギター・リフ(Riff):ボーカルやソロ演奏の伴奏として使われるギターによる比較的短い反復旋律。メタル音楽にとりとっても重要
*MOTORHEAD:モーターヘッド。英国が誇る爆音系ROCKの師匠。「NO SLEEP'TIL HAMMERSMITH('81)」はメタルLIVEの名作中の名作

Symphony No. 5 in C minor, Op. 67/LUDWIG VAN BEETHOVEN
交響曲第5番 ハ短調 作品67/ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン 
order
交響曲第5番(カラヤン'82年盤) ベートーヴェン交響曲第5番(カルロス・クライバー指揮) 「運命」アルトゥーロ・トスカニーニ1939年盤
 所謂《運命》。冒頭の人類史上最も有名なフレーズが、余りにあちら此方で使いまわされ、すっかり陳腐に聞え、「今更なぁ...」と、長年、正直思っていましたが、全編聴いたらもう、流石天下の名曲、メタル馬鹿なメタル耳にも、寄せる寄せる歴史の波涛...。大体交響曲には、ヘヴィなメタルを感じ、中でもベートーヴェンの作品には強く其れを感じてきましたが、この第一楽章、フル・ヴォルーム(ヘッド・フォン着用)で聴けば、メタルな魂に引火します。「シンフォニック・メタル」「ネオ・クラシカル」等と言うジャンルがあるくらいですから、メタルは昔からクラシックと繋がりの深い音楽です。以外とお思いかもしれませんが...。リッチー・ブラックモア大先生からイングヴェイ・マルムスティーンへと続くクラシックの系譜...メタラーにはお馴染みの世界です。
 この《運命》、日本では一般的な呼び名ですが、世界的には日本ほどは使われる事はないようです。ベートーヴェンの弟子、アントン・シントラーの「最初の4音は何を表すのですか」の問いに、「運命は斯く扉を叩くのだ」とベートーヴェンが答えた事に由来する題名とか。もし史実であるなら、すでに難聴になっていた彼の言葉、そしてこの音...重いですね...。
 《運命》は、1808年、交響曲第6番《田園》などと共に、初演(アン・デア・ウィーン劇場)されたそうですが、幾つか革新的部分があったそうです。一つは、今まで神聖な教会音楽用にしか使われなかったトロンボーンを「世俗」的な交響曲にはじめて使用。またコントラファゴット、ピッコロなども新たに編制に加えたのだとか。更に大きなもう一つの革新は、それまで独立性の強かった各楽章(交響曲は四つの楽章依りなる)の有機的統一性を、この作品ほど図ったものはなかった点、なのだそうな。う〜ん...この曲を聴きはじめた当初、第一楽章(Allegro Con brio)の重厚でダークなヘヴィ・メタリックな雰囲気と、第二楽章(Andante Con moto)の穏かさ(第三楽章(Allegro)の一寸ミステリアスなにほいは良しとして)、第四楽章(Allegro)の弾けるような明るさ等、流れに違和感を感じ、当初は第一楽章リピートが多かったのですけれど、聴き込む内に、自然な流れ、「苦悩から歓喜」への必然な流れが感じられ、全編を通して聴けるようになりました。第三楽章の囁(ささや)くような蠢(うごめ)くような暗いエンディング部分から、第四楽章の光の奔流(ほんりゅう)のような明るさへの休止なしの移行は、聴く度に立毛筋反応。
 クラシック音楽は全く素人のメタル馬鹿野郎も、素直に感動。冒頭のフレーズは勿論知っているけれど、全編通して聴いた事はない、という方が案外多いと思いますが、「今更《運命》?...」等と言わず(私言っていましたね)、全編通して聴いて見て下さい。きっと、イメージ変わると思います。恥ずかしがらずに、是非。
 この《運命》と「第九(交響曲第9番)」は共に人気が高いですが、どちらもヘヴィ&ダークな楽章で導入し、軽快で光明に満ちた終楽章に至る、「苦悩(暗黒)を経て歓喜(光)へ」と言うテーマで貫かれていますね。多くの人を惹き付けるのは、聴く者が、自身とベートーヴェンの多難な人生を重ね、そこにシンパシィを感ずるからでしょうか...。単にカッコイイからか...。

  '06 5/11

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お気に入り度:♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭
〔冒頭の超有名フレーズのリズムが、モールス信号の「V」に対応する為、Victory=勝利の「V」と言うことで、第二次大戦中BBC(英国国営放送)は放送開始の時この曲をかけていたそうです。本当は敵性音楽(独逸音楽ですもの)だからご法度ですけどね。今回取り上げたアルバムは、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による'82年11月ベルリン、フィルハーモニーでの録音です(左画像)。中画像は、カルロス・クライバー指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による'74年3・4月録音盤。右画像はアルトゥーロ・トスカニーニ指揮、NBC交響楽団による'39年2・3月録音盤(当然モノラル)。華やか且つじっくりなカラヤン。豪快、爽快、ダイナミックなクライバー。緊迫感に充ち熱溢れ若々しぃトスカニーニ(録音時72歳)。

リスト編曲ピアノ独奏版「運命」(グレン・グールド)因みにこんなアルバムもある。イケメン魔術師フランツ・リスト編曲のピアノ独奏盤である(左画像)。リストはベートーヴェンの交響曲全9曲をピアノ独奏用に編曲し自身のリサイタルで演奏して回った。それがベートーヴェンの死後忘れられつつあった彼の交響曲の人気を高めるに、一役買ったとも言われる。交響曲をピアノで演奏しちゃうなんて、リストってやっぱりすごい、と思わせてくれる作品。ロック(メタル)耳には余りに複雑怪奇でなかなか捉えにくい管弦楽曲の、骨格がむき出しになったようで構造が解り易くって面白い。あくまで参考作品であるが、興味のある方はこちらも聴いて頂きたい。画像はグレン・グールドによる'67-'68年録音盤〕

*ネオ・クラシカル:クラシック音楽的音階やフレーズを大きく取り入れたヘヴィ・メタルのスタイルの一つ
*シンフォニック・メタル:ネオ・クラシカルに近い系統といえると思いますが、オーケストラとのアンサンブルが特徴。バックにオーケストラを入れるのではなく、バンドとオーケストラが一体、と言うに近い。伊太利亜のRHAPSODYが代表的
*リッチー・ブラックモア:DEEP PURPLERAINBOWで活躍したギタリスト。クラシック大好きなネオ・クラシカル・ギターの始祖
*イングヴェイ・マルムスティーン:「エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲変ホ短調」と言う曲まで作っちゃったネオ・クラシカルの完成者。戦後最大の問題児
*《運命》:欧米等でも使われる事は使われるそうですが、日本の様に一般的なものではないそうです
*アントン・シントラー:ベートーヴェンに関する事は彼の弟子&秘書であったシントラーの著作(「ベートーヴェン伝」)によるものが多いそうですが、内容には疑いも持たれているそうな
*難聴:20代の頃より。振動を伝達する骨の硬化による伝音性難聴と言われるが、彼の遺髪に通常の100倍にのぼる濃度の鉛が含まれていた為、鉛中毒により難聴になったとの説(鉛中毒で難聴になる事は稀だそうですが)や梅毒説などある
*ピッコロ:フラウト・ピッコロ(小さいフルート)の略
*コントラファゴット:ファゴットより一オクターブ低い音域
*トロンボーン:元来は広く用いられていたが十八世紀頃には専ら教会音楽に使われる様になっていた
*第9交響曲:CDの収録時間はこの曲(カラヤンの)が収まる様に定められましたが、LPレコードの収録時間は《運命》が収まる様に定められたのか或いは《運命》が収まる、と言う謳い文句が使われたのか...不明ですが(済みません曖昧で)、何れにしろ《運命》が絡んでいる(と思う...)

TIME TELLS NO LIES/PRAYING MANTIS '81
タイム・テルズ・ノー・ライズ/プレイング・マンティス 
order
タイム・テルズ・ノー・ライズ/プレイング・マンティ ’80年代、メタル・ムーヴメント華やかなりし当時、HR/HM系レコードの帯には、今見るとちょいこっ恥(ぱ)ずかしくなるような大袈裟フレーズが、踊っていたものですが、このアルバムの帯にもありました。「警戒せよ!この疾駆する旋律(メロディ)に!!」と...。しかし、この作品の場合、強(あなが)ち大袈裟とも言い切れません。心地よいメロディとこれまた心地よい適度な疾走感。メタルと言えばダークなイメージが強いですが、この作品、哀愁漂いながらも、明るく爽やか。同時代共に活躍し近しい間柄でもあったIRON MAIDENとは、新世代メタルとしての共通項は持ちながらも、ある種対極にある存在。メタル・ファン以外の方にも、十分違和感なくお聴き頂けると、思います(私見ですが)。ファンタジックで一寸笑える(失礼)ジャケットは、下のアルバムと同様ロドニー・マシューズ
 この作品リリース当時、僕のメタル師匠であったO・T君は、「爽やかメタル」と呼んでいましたが、正に。メタルと言っても、大分オーソドックスなHRのにほいも漂い、「アメリカンな明るいHR(KISSとかAEROSMITH)は好きだけど、メタルはねぇ...」と、僕のお薦めアルバム(まぁメタルばっかり)には悉(ことごと)く眉を曇らせるていた女友達(当時)のM・Tさんも、このアルバムは一発で気に入りました。まぁ、アメリケンなHRとはちょと異なりますが、彼らの売りの一つである爽やかなハーモニーには、乾いた風も感じられます。
 当時4人のメンバーですが、核となるのが、ティノ(g)とクリス(b)のトロイ兄弟。父は地中海のキプロス島、母は西班牙出身と言う南欧の系統。湿っぽい空気漂う重厚な雰囲気は英吉利のバンドの特色ですが、彼らの持つ一風異なる軽快感や明るさには、そうした南の血が生み出すものが、若しかしたら、あったのかもしれません。
 そんな彼らの生んだこの作品、楽曲も名曲・佳曲粒揃いで、演奏力も新世代らしいレベルにあり、プロダクションもこの当時の新人デビュー作にしては決して悪いものではなく、全体のクオリティはなかなかのもの...なのですが、個人的に一つ残念なのは、専任ヴォーカリストの不在。上記トロイ兄弟とギタリストのスティ―ヴ・キャロルが其々三曲づつヴォーカルを担当し、其々に個性もあり、全体的なバラエティ感も生まれているのですが、やはり焦点を絞りきれない、何処とない散漫な印象を受けてしまいます。
 彼らと同様に、メンバーの大半がリード・ヴォーカルをとれるバンドに、KISSやQUEENがありますが、彼らの場合これらバンドのメンバー程にはそれぞれのキャラークターが濃厚でなく、線が細い。且(かつ)、KISSにはポール・スタンレィ、QUEENにはフレディ・マーキュリィと言う、芯となる存在、確たるメイン・ヴォーカルの存在があるからこそ、散漫にならず、バラエティ豊か、となり得たと言う所があったように思うのですが、残念ながら、このマンティスにはそれがなかった。Bassのクリスの透明感漂うややソフトなヴォーカルは、叙情性の強い楽曲で非常に活きているのですが、やはりメイン・ヴォーカルとなるには、少し線が細い...。この作品後、’82年に、専任ヴォーカル(バーニー・ショウ)を迎えてシングル("Turn the Tables"他全三曲(下のマグナムと同じjetレコード))をリリースした時は、新ヴォーカルも力量のある方だったので、此れは良い方向へ...と歓迎したのですが、契約問題も含め、バンドは不運続きで、結局マンティスとしては、このアルバム一作で解散となってしまいました...。
 メジャー・デビュー前に出演した、レディング・フェスティヴァル(DEF LEPPARDやANGEL WITCHも出演)のパンフレットには、"METAL MELODY FROM MANTIS"の文字があったとか。正に...。メタルとは本来、結構メロディアスな要素も多く持つ音楽ですが、このプレイング・マンティスは特にその性質が強い。当アルバム最期を飾る名曲、"CHILDREN OF THE EARTH"は、そんな彼らの作品中の、白眉(はくび)と言えるでしょう。

 '06 5/4

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お気に入り度:♭♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭ 硬度:♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭ 旋律度:♭♭♭♭ ポップ度:♭♭♭♭
〔英国出身 ’90年、NWOBHM十周年記念ライヴ(中野サンプラザ)を契機に再結成。現在まで作品を発表
し続けております。今も活動している、NWOBHM生まれのバンドとしては、数少ない存在 official

*レディング・フェスティヴァル:’60年代から続く英国はLONDONの西READINGで開かれるROCKイヴェント
*NWOBHM:New Wave Of British Heavy Metal イギリスで’80年頃に興ったHR/HMの一大ムーヴメント
*DEF LEPPARD:’80年メジャー・デビュー。HMと言うよりはややドライなHRスタイル。4作目「HISTERIA」で全米No.1を獲得
*ANGEL WITCH:’80年「ANGEL WITCH」でデビュー。タイトル・ナンバーは永遠のメタル賛歌
*KISS:ポール・スタンレィ(g)、ジーン・シモンズ(b)、ピーター・クリス(d)そして後にはエース・フレーリー(g)も歌う
*QUEEN:ご存知フレディ・マーキュリー、ブライアン・メイ(g)そしてロジャー・テイラー(d)が歌います

CHASE THE DRAGON/MAGNUM '82
チェイス・ザ・ドラゴン/マグナム 
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チェイス・ザ・ドラゴン/マグナム ロドニー・マシューズ描く、異星のキャッスル&ドラゴンのイラストも印象的な、彼らマグナム5人組(当時)の3rdアルバム。「大英帝国」のひほい芳(かんば)しい、プログレ系ハード・ロックの名作。
 ’80年代初頭、マグナムの所属するjetレコードは、HR/HMの大波押し寄せる当時、オジー・オズボーンと、ゲイリー・ムーア、そしてこのマグナムを、ハード系三本柱としてプッシュ。オジーは大成功。ゲイリーは契約問題で大分揉(も)めて不遇でしたが、のち他社移籍後大成功。でもマグナムは...コアなHR/HMファンは別として、今一つ...いや少なくも日本では今二つ...今三つ...。確かに前二者と比較すれば、ちょと小粒。失礼を承知で言わせて頂ければ、ちょと格違い...(ホント御免なさい)。が、この当時、jetレコードが推しただけあって、なかなかの逸材。伝統的HR/HMを血肉としつつ古臭さとは無縁。マニアを唸(うな)らせるセンスとテクニック、そして普遍的ポップ感覚を併(あわ)せ持ち、何故こうも無名かと、惜しまれる存在。
 英国バンド特有の、湿っぽさを漂わせる重厚なサウンド...。オープニングのSEと、力強いヴォーカルが印象的な"SOLDIER OF THE LINE" ポップ感に溢れながらも十分にヘヴィな"ON THE EDGE OF THE WORLD" 切々とした抒情感漂う"THE SPIRIT" そして美しき"SACRED HOUR"の荘厳...。プログレッシブ・ロック的スケール感と、ヘヴィ・メタル的ダークネスを湛えた前半(レコードのA面)は、ドラマティックなハード・ロックと言うスタイル、ここに一つの頂点を極めたり、の感有り。プログレ的構築美・展開美、そしてメタル的耽美。個人的に大好物。
 後半(レコードのB面)のポップ感には、メタル馬鹿な僕は、若干のギャップを感じてしまうのですが、一般的ロック・ファンの方には、逆に親しみ易く入り込み易いものと思われます。
 一寸ムードの異なる前半と後半。しかし、全編を通じてこのサウンド・作品をしっかりと貫き支えているのは、華は余りないのですが、味わいとソウルを感ずるエモーショナルなボブ・カトレイのヴォーカル、そして多彩で此方は華やかな、マーク・スタンウェイのキィボード。勿論他メンバーの力量も高く、楽曲も粒揃いで全体的なクオリティは非常にハイ・レヴェル。BEATLES...プログレッシブ・ロック...そしてハード・ロック...等など、先人達が受継ぎ或いは産み出し磨き上げて来た懐(ふところ)深きブリティッシュ・ロックのエッセンスを、摂(と)り込み体現している辺り、初期QUEEN的なセンスを感じます。そしてさらに、NWOBHM的モダンなハードネス・ヘヴィネスをトッピング...。確かに地味では有るのですが...本作及び次作(「THE ELEVENTH HOUR」(こちらのジャケットも素晴らしい))等、HR/HMファン以外の方には、若干馴染み難い存在ではありましょうが、コアなファンだけのもにしておくのは勿体無い、良い作品だと思います。何故に日本盤ないの?(昔は出ていたはず) 地味でも良質な作品は、根気良く売って下さい。お願い。流行り廃(すた)りに左右され易い国民性など、諸事情有るでしょうが...でも、日本以上にHR/HMがマイナーな存在となっている亜米利加、日本以上に一色に染まり易い亜米利加でも、ちゃんとリマスター盤リリースされてますし(亜米利加流石に懐が深い...)...。
 新しきHeavyMetalの風吹く’80年代初頭、RAINBOWSCORPIONS等、’70年代からの老舗(しにせ)バンドしか認めていなかった頭の堅(かた)い僕に、IRON MAIDEN筆頭にこのマグナム他の新世代アーティストや、’70年代からの老舗ながら新しいHR/HMのスタイルを築きあげたJUDAS PRIEST等、僕が「喧(やかま)しい」と一括(くく)りに毛嫌いしていた連中の素晴らしさを伝えてくれた友人のO・T君(メタル師匠)、すっかり無沙汰してしまっているのを、この作品を聴く度思い出します。彼のお蔭で、随分とHR/HM世界が広く深くなったのに...忘恩の徒、恩知らずですな...。読んでくれてるかな?...O・T君。

 '06 4/6

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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔GREAT BRITAIN出身 ’78年デビュー以来、解散・再結成を経今も現役。「日本では今三つ...」等と失礼か
ましてしまいましたが、この作品、本国では当時チャート17位まで行ったのです。さすがHR/HMの母国 
official

*オジー・オズボーン:メタルの元祖BLACK SABBATHのヴォーカル。ミスター・ヘヴィ・メタル
*ゲイリー・ムーア:愛蘭が生んだ骨太系ギター・ヒーロー。この当時はハード・ロックおにいさんでした
*jetレコード:オジーの奥さん(マネージャーでもある)はここの社長さん(BlackSabbathのマネージャーでもあった)の娘さん
*NWOBHM:New Wave Of British Heavy Metal (ニュー・ウエイヴ・オブ・ブリティッシュ・へヴィ・メタル)の略。英吉利で’70年代終わりから’80年代初頭にかけて興ったHR/HMの一大ムーヴメント。この頃から「ヘヴィ・メタル」という言葉が一般化。IRON MAIDEN、ANGEL WITCH、DIAMOND HEAD、PRAYING MANTIS、DEF LEPPARD、SAXON、TANK、RAVEN、TYGERS OF PAN TANG等などが活躍
*ロドニー・マシューズ:’45年生。英国のイラストレイター・デザイナー。’70年代から数々のアルバム・ジャケットを手懸ける。このマグナムの他上記DIAMOND HEADやPRAYING MANTISの作品カヴァーも有名。ロジャー・ディーンにも通づるファンタジックな作風で、HR/HMファンには特に人気が高い
*ロジャー・ディーン:’44年生。英国のイラストレイター・デザイナー。 YESの数々の作品で有名

TALES FROM THE THOUSAND LAKES/AMORPHIS '94
テイルズ・フロム・ザ・サウザンド・レイクス/アモルフィス 
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テイルズ・フロム・ザ・サウザンド・レイクス/アモルフィス 氷雪に閉ざされた山並み...其処に抱かれた瀧轟く湖...そしてそれを仄かに照らし出す蒼褪めた月光...。ジャケットに描かれる世界は、冷ややかな透明感と、ダークなミステリアスさを醸し、このアルバムの音世界を見事に表現しています。ジャケットと内容の一致度の高さでは、個人的には一二を争う作品。
 アルバム・ジャケットに見事に表現されたその作品はと言うと、スタイルとしては、所謂(いわゆる)メロディック・デス・メタル。ドラマティックでメロディアスなサウンドに、邪悪なディストーション・ヴォイスが乗る...と言うもの。そしてそのスタイル、この内容にはこのスタイルしかない、と言うほどのマッチングで描かれているのは、「KALEVALA:カレワラ」。彼等アモルフィスの祖国フィンランドの民族叙事詩。全編このカレワラをモチーフに、コンセプト・アルバムとして形を成しています。とは言っても、プログレッシブ・ロック的なこの手法に有りがちな、聴き手を突放すが如き取っ付き難さ、そうしたものは有りません。また、デス・メタルが根本にあるとは言っても、全編美しく叙情的なメロディに満ち、且ミドルなテンポの曲が主ですので、非常に聴き易い。ただ、ヴォーカルがそのまんま「デス声」ですので、その辺り、苦手な方はいらっしゃるでしょうが...。でも、聴かず嫌い本当に、モッタイナイお化けイッパイ出ちゃいますよ。
彼等アモルフィス五人組(当時)。失礼ながら、傑出したプレイヤーは居りません。ギターが上手いとか、ドラムが凄いとか、カリスマ的メンバーが居る...、等と言うことはない...のですが、このアルバムにおける五人の有機的一体感、これはお見事。カレワラと言う、彼等フィンランド民族のアイデンティティに関るテーマがそうさせたのか、1×5≠5、1×5=10にも20にもなっている。この為この作品は、とても重い存在感を持つ、アンダーグランドが産んだ奇跡的存在(失礼ですね)となり得たのかもしれません。
 傑出したプレイヤーはいない、と上に書きましたが、ただこの作品から参加したキィボーディストのプレイは、所謂「上手」なものではないのですが、全体を包み或いは牽引し、ファンタジックな奥行きを構築。この作品の聴き所となっています。オープニングの"Thousand Lakes"のピアノで、一気に、この凍てついた湖の国に惹き込まれてしまいす。また、時折遠方より絡(から)む、ノーマルなハイ・トーン・ヴォーカルも、とても効果的。
 エスニックなメロディを織り交ぜた、暗鬱なファンタジー...。地から響くような、ディープなディストーション・ヴォイスが、北の国の叙事詩を語り聴かせてくれます。デス・メタル色は濃厚ですが、同じメロディック・デス・メタルと言うカテゴリで捉えられる、IN FLAMSARCH ENEMYDARK TRANQUILLITY等に比し、古典的HR/HM的な匂いがやや強く漂い(人によってはこれを「古い」と感じる場合も有るかもしれませんが...)、一般的ロック・ファンの方にも、入り易い(と思う)、名盤。

 '06 2/16

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お気に入り度:♭♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭ 技巧度:♭♭ 旋律度:♭♭♭♭ ポップ度:♭♭
〔芬蘭出身 此れ以降の作品では、デス・メタル離れが進み、この当時とは大分異なるスタイルとなっている様です official

*KALEVALA:「カレワの国」の意。古来から(一説には紀元前)民間でカンテレ(弦楽器)を伴奏に歌い継がれていた口承歌謡物語。産まれながらに老人である賢者にて詩人・歌い手・カンテレ奏者でもあるワイナモイネンを中心とする、世界創造・英雄・冒険物語(「古事記」に近いか)。1835年、医師エリアス・リョンロートが採録・編集し出版(若干の創作部分もあるそうな)。ナショナリズムを刺激し帝政露西亜からの独立を果たす上で大きな力を与えたとされる。のち芬蘭民族のアイデンティティを示すものとして多くの芸術作品のモチーフとされる(シベリウスの多くの作品など)。このアルバム「Tales from The Thousand Lakes」もその一つと言うことですね(彼等アモルフィスには「TUONELA(トゥオネラ(黄泉の国)」と言うアルバムも有るし、「MY KANTELE(カンテレ)」と言う曲も有る)
*シベリウス(1865-1957)の作品:「ワイナモイネンの歌」(混声合唱と管弦楽)、「キュリッキ」(ピアノのための3つの叙情作品)、「トゥオネラの白鳥」(交響詩「レミンカイネン組曲」第2曲)、「ポヒョラ(ポホヨラ)の娘」(交響詩)、「クレルヴォ交響曲」(独唱・合唱入り交響曲)等々多数

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