MYSTIC RHYTHMS

Heavysphere '07年版
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ヘヴィ・メタル、ハード・ロック、プログレッシブ・ロック、クラシック等について語らせていただきます。
                                                                                                                                    
Profile

*時々加筆・訂正をする事があります。ご了承ください。
*
凡例

ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い

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ワイプド・アウト/レイヴンWIPED OUT/RAVEN '82
ワイプド・アウト/レイヴン order

 下に書いた作品(「ENTROPIA」)とは、ある種対蹠(たいせき)的位置関係にある作品かもしれません。とにかくおバカ(褒め言葉です)。若手お笑い芸人さん的徹頭徹尾のハイテンション・ハイエナジー。聴いているだけで汗だくになりそうなパワーと暑苦しさ。此処まで来ると、爽快。
 ハード・ロック・バンドには、おバカ・ロックの最高峰AC/DCを筆頭に、結構おバカ(しつこいですが褒め言葉です)系は多く存在しますが、大まかに言って、メタル・バンドはシリアス志向が強く、こうしたタイプは珍しい。サウンドのベースもロックン・ロール系統でこれまた少ないタイプ。他に似たタイプを見付け難い強い個性の持ち主。ご当人達は「アスレチック・メタル」と称しておりました。
 ジョン(b&vo)とマーク(g)のギャラガー兄弟を中心に現在も活動するこのメタル・バンド、デビュー(アルバム・デビューは’81年)からこの2ndアルバムをリリースした頃は、世界的なメタル・ムーヴメントが盛り上り始めた時代で、日本でも、RAINBOWやMSG、JUDAS PRIESTIRON MAIDEN等が大人気。でも、こうした比較的オーソドックスな古典的ドラマ性を多分に含むタイプのメタルに飽き足らない連中に、このRAVEN、好かれていました。当時のメタル・ファン(私の周りのですが)の間では、このRAIVENはVENOM等と共に結構と言うか可也アンダー・グラウンドな存在で、私などRAINBOWを神の如く崇めていた人間には、一寸手の出しにくいバンドでした。ハード・コア・パンクもメタルと共に聴くような連中に好かれていたかな。
 そう書くと何か怪しげで危険な音楽性かと思われるかもしれませんが、全然。怪しさなど微塵も無い軽快で明るい(メタルにしては)音楽。ただ、古典的ドラマ性もなくなはないですが希薄。そして(当時としては)速い。つんのめる様なスピード感とある種の忙(せわ)しなさは、どっしりと構えた伝統的メタルに親しんでいたファンには一寸違和感があったのかも知れません。高音でヒステリックに喚(わめ)き散らすようなジョンのヴォーカルなど、RAINBOWのロニー・ジェイムス・ディオを最高のヴォーカリスト考える当時の多くのメタラーには確かに受け容れ難かったかもしれませんね。でも、今聴けば、ブリティッシュな湿りもドラマ性も其れなりに漂うし、ギター、ベース、そしてドラム(ロブ・ワッコ・ハンター。何故かアイス・ホッケーのヘルメットを着用)何れも演奏レベルは高く、曲構成も結構起伏に富む。特にジョンのベース・プレイ等なかなかに侮れないハイ・レベル。ちゃんと聴かなきゃ駄目ですね。見た目や上っ面だけで決め付けると、こうした良い作品を聴き逃す事になる。でも、音悪...モノラルかと思ったよ...。
 ウツっぽい時など、私には抗鬱的作用を齎(もたら)してくれる、元気アルバム。但し、可也マッドでクレイジーなので、一般的では無いかも知れません事をお断りさせて頂きます。 "Danger!!!!!"

  '07 10/23
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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭ ポップ度:♭♭
〔英国ニューカッスル出身3人組。メタル史的に見るとスラッシュ・メタルの源泉的存在の一つと言えるかもしれませんね official

*MSG:”神”マイケル・シェンカー率いる大人気バンドでした
*VENOM:スラッシュ・デス・ブラック等過激系メタルの祖と呼ばれるバンド。因みにRAVENとは同郷同レーベル同年デビュー

エントロピア/ペイン・オブ・サルヴェイション◆●ENTROPIA/PAIN OF SALVATION '97
エントロピア/ペイン・オブ・サルヴェイション order


 雰囲気が「重い」...。心理的・精神的部分に働きかける「重さ」を持った作品としては、私のコレクション(と言える程のものでは御座いませんが)の中では代表的作品。人間の内面を描くべく、心血注いで作りました...的な重さと深さ。デビュー・アルバムですが、侮(あなど)れん。
 "死は決して存在しなかった 人生の... ほんの夢に過ぎない... ...だが夢とは何なのだ?"と言う言葉が導く、所謂、コンセプト・アルバム。嘗ての独逸を髣髴とさせる、東西(ジャケットにも「東西」とある)に分裂した「エントロピア」なる架空の国家を舞台に叙述される長大な詩。描かれているものも、書いているだけで気持ちが凹むような内容。戦争...父子の離別...死...。でも複雑でよう解らん。曲構成・展開も歌詞も演奏も複雑。複雑この上ない人間の内面や行いを描こうとするならば、作品もプレイも複雑にならざるを得ない、と言うことか。全体に非常にプログレッシブ・ロック的にほいを漂わせる彼らですが、プログレッシブ・ロック的手法を取ろうとして生まれた姿ではなく、表現しようとしたらこんな形になりました...的必然が感じられて好感が持てる。プログレッシブ・ロックが失った本質を、彼らは持っているな。
 息を吹きかければ脆(もろ)く崩れ去ってしまうような部分から、どろどろとした粘着質的な部分まで、ダニエル・ギルデンロウ(g兼任。ソング・ライティングも彼がメインで、バンドの核)は、シアトリカルとも表現できる、変幻自在なヴォーカル(’87年、前身バンドでスウェーデン音楽大賞にノミネートされ当時14歳の彼はベスト・ヴォーカル賞を受けている)で、此れでもかと描いてゆく。アーティストとしての執念の様なものが滲(にじ)み或いは溢(あふ)れ、殊更にへヴィ。鬱屈した精神と、爪を立て地面を這うようにしても前進を試みる不屈な精神の混在。血涙を搾(しぼ)る様な絶望と、幽(かす)かで仄(ほの)かな希望...そんな印象を私はこの作品には感じるのですが...でも、その幽かな希望がより絶望や孤独の深淵を際立たせるようで、なかなかしょっちゅう聴く気にはなれない。けれど一旦聴き始めると、惹き込まれ最後まで通しで聴かずにはいられなくなる様な作品。ノリのいい曲も数曲ありますが、全体的にはノリとは無縁な、「ながら」では無く、眼を閉じじっくりとヘッドフォンで聴き込みたい作品。
 彼らPAIN OF SALVATION、スタイルとしては、プログレ・メタルといえると思いますが、プログレ・メタルと言えば、DREAM THEATER。ジャズ・フュージョン的センス、スラッシュ通過後のメタルと言うことで、共通項が多く感じられ、また比較されることも多いようですが、彼らに比べると正直やや軽い。演奏面も、非常に高度なものであることはその通りなのですが、同じデビュー作「WHEN DREAM AND DAY UNITE」と比較しても、失礼ですが、格の違いを感じてしまう。まあ、DREAM THEATERが余りに特殊な存在であると言うことかもしれないし、勝負しているところが違う、と言うことなのかもしれませんし...。また、メタルのコンセプト・アルバムと言うことで、QUEENSRYCHEの歴史的名作「OPERATION:MINDCRIME」との比較もしてみたくなりますが、矢張り、アルバムの持つトータル性と個々の楽曲の持つ魅力のバランスが見事なこの作品と比較すると、正直聴き劣りはしてしまう。DREAM THEATERもQUEENSRYCHEも、複雑なれども聴き易い...のだけれど、この作品にはその聴き易さはないのだよね(メロディは美しいですよ)。精神性の深度では決して引けは取らないと思うのですけれども。でも、先輩二バンドだって、デビュー当時からあのレベルだった訳ではないしな...。第一スタンスも精神性も異なる他者と比較して、彼是言うこと自体失礼ですよね。御免なさい。
 デビュー作に有り勝ちな、詰め込み過ぎて一寸散漫...一歩手前ですが、緩急の調和も見事な、メタル音楽の深みと可能性を感じさせてくれる佳作。素晴しい。...第10曲目はボーナス・トラック。飛ばして聴いた方が良いかも(良い曲ですが、一寸流れが止まる気がする)。

  '07 8/6
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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭
〔瑞典出身5人(当時)組。残念ながら私は2ndアルバム以降はまだ未聴なのですが、是非機会があれば聴いてみたいと思っています official

*コンセプト・アルバム:一貫したテーマやストーリーを持つアルバム。トータル・アルバム
*プログレ・メタル:プログレッシブ・メタルの略。アヴァンギャルドなスタンス、複雑な曲構成・高度な演奏技術・コンセプト性等々プログレッシブ・ロック的性格を多分に有するへヴィ・メタルの一スタイル。下記2バンドのほか、FATES WARNING等が有名
*DREAM THEATER:ドリーム・シアター。名前はベタですがメタル界で最も「上手い」バンド。上手いだけでなく「深い」
*QUEENSRYCHE:クイーンズライチ(ライク)。追随を許さぬ孤高のメタル・バンド
(訳詩:川原真理子)

ファー・ビヨンド・ドリヴン/パンテラFAR BEYOND DRIVEN/PANTERA '94
ファー・ビヨンド・ドリヴン/パンテラ order

 この”Heavysphere”、私の大好きなへヴィな音楽を、へヴィな音楽などには全く或いは殆ど縁が御座いません、と仰られる様な方に、勝手に紹介させて頂くことを意図したこのサイトを開設するに当たり、こんな作品を紹介したいな...と当初念頭に浮かびイメージされた作品は、実は、この作品だったりするのです。
 このサイトにおける「へヴィ」という語には、サウンドの「重さ」だけでなく、発するauraの「重さ」や、ダークさと言う、謂わば心理的・精神的部分に響く「重さ」等(曲が長くて「重い」等も有る)、色々なニュアンスが含まれるのですが、この作品、発する音「重い」、発するaura「重い」、そしてダ〜クで「重い」と、三拍子揃った逸品。ジャケットからして、重い(暗い)でしょう...。
 パンテラは、’90年代を代表するメタル・バンドで、’80年代にワールド・ワイドに大ブレイクしたメタル・ミュージックがそろそろ飽和状態となり、(全体としては)沈滞化してきたその頃に、「COWBOYS FROM HELL('90)」「VULGAR DISPLAY OF POWER('92)」を引提げてメジャー・シーンに飛び出し、ヴァン・へイレン以来の革命を起こした存在。ただ、’90年代を代表するとは言っても、自主レーベルでのデビューは、亜米利加でのメタル・ムーヴメントはまだ黎明期とも言える’83年。自主レーベル盤を含めれば、本作は第七作ともなる結構な苦労人なのです。
 「革命」と上に書きましたが、彼らは、スラッシュ・メタルに代表されるような当時のメタル、スピードや激しさを追求したメタルとは明らかに一線を画す、ハード・ロックにも通ずるようなグルーヴ感と、速さを押し殺すような「重さ」を前面に押し出すモダンな「ヘヴィネス」を確立させ、METALLICAの「METALLICA('91)」アルバムと共に、新たなスタイルを生み出し、へヴィ・ミュージック・シーンをすっかり塗り替えてしまったのです。そう、それまで隆盛を誇った’80年代型へヴィ・メタルを又も、オールド・スタイルに逆戻りさせてしまったのです。なので、オールド・ファンの小生は、はじめなかなか彼らの作品に馴染めませなんだ。ヴォーカルは一寸ヒップ・ホップ(ミュージック)入ってるし、短パンでステージ出てるし...。
 この、メジャー・デビュー第三作となる本作は、「革命」を引起した前二作に比べると、全体にメロディは後退し、前作までには存在した、キャッチーさや叙情等は一切(少しオーヴァー)排除された、硬質で無機質な、まさにマシンの如き冷徹な音像(ヴィジュアル的に言えばアルバム・ジャケットのイメージは近い)。ファストな曲は一部。大半がミドルな楽曲で、ダイムバッグ・ダレル(’66年生)の硬質でありながらも、纏い付く様にねちっこいギター・リフと言い、レックス(’64年生)とヴィニー・ポール(’64年生)の放射線防護壁の如き隙の無いベース&ドラムスのコンビネーションと言い、鋼とコンクリート塊に圧殺されそうな程に息苦しい。そして、無機質とは言い、何処か有機的仄かな体温、体臭が感じられるのが、更に息苦しい。其の上、フィル・アンセルモ(’68年生)の咆哮(歌と言うより咆哮)は、有機極まりない「情念」、それも「負」の情念の如きものを撒き散らし、無慈悲なマシンのそのオイルの血液の中にその「情念」が沸々としているが如く感じられるのも、又更に息苦しい。もぅ、厭になるくらい息苦しい...のが、妙に嵌る。彼らの最高作は、モダンなヘヴィネスとハード・ロック的グルーブ感やキャッチーさ又叙情が、絶妙にバランスしていた前作「VULGAR DISPLAY OF POWER」だと思います。本作はこの前作に比せば、確かに地味で、ひたすらダークなヘヴィネスを突詰めるその楽曲も少々取っ付き難い感は否めず、評価も左程高いとは言えませんが、でも、彼等ほどの存在となれば、どの作品もハイ・レヴェル。「普通」のメタルには新鮮味が感じられん...等とお思いの方、SLIPKNOT等のモダンなへヴィ・ロックには結構馴染める、等とお思いの方には、逆にこのスタイル、合うのではないでしょうか。何せ彼らパンテラこそ、モダン・ヘヴィネス或いはラウド・ロック等と称せられる’90年代へヴィ・ロックの祖とも言われる存在ですから(彼ら自身は、飽くまで「へヴィ・メタル」であるとの拘りを示していたようですが)...。
 この圧殺激烈鋼鉄音塊に、興味のある方、身を委ねてみて下さい。息苦しさも極限に達した頃、ラスト・ナンバー"Planet Caravan"(
BLACK SABBATHのカヴァー)が、貴方・貴女を、心地よい安堵の中へと、誘(いざな)ってくれますよ。

 ...’03年、以前より、アンセルモのアルコール・ドラッグ問題や彼のサイド・プロジェクト活動等により深まっていたメンバー間の溝は、遂に埋められることなく、バンドは解散。各人は夫々の道を進むこととなりました。其の中で、兄であるヴィニー・ポールと共に、新バンド「DAMAGEPLAN」で活動中だったギタリストのダイムバッグ・ダレルは、’04年12月8日、オハイオ州コロンバスのステージ上で、PANTERAファンの一人に射殺され、落命致しました(詳しくは
此方を)。観客達の眼前で...兄の目前で...。彼は、ジャズ/ブルースのセンスも内包した、非常に懐の深いプレイヤーで、そのスター性と相俟って、嘗てロック界を牽引して来た、’70・’80年代のギター・ヒーローを髣髴とさせる存在でした。ただ、その技術は’70・’80年代のヒーロー達とは明らかに質を異にするような高度なもので、ギター・ヒーロー不在を言われた’90年代の中にあって、正にギター・ヒーローであったと、言えるような存在でした。合掌...

  '07 5/20
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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭♭ 硬度:♭♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭ ポップ度:♭♭
〔北米テキサス出身 「PANTERA」はラテン系言語で「豹」の意 official

*aura:ラテン語。所謂「オーラ」。ものが発する微妙で独特な雰囲気
*レックスとヴィニー・ポールのベース&ドラムス:このコンビは強力。個人的にはフロ・モーニエ&エリク・ラングロワ(CRYPTOPSY)、コージー・パウエル&ボブ・デイズリー(RAINBOW)、そしてジョン・ボーナム&ジョン・ポール・ジョーンズ(LED ZEPPELIN)のコンビに勝るとも劣らないHR/HM界きっての強力リズム隊のひとつ
*’70・’80年代のギター・ヒーロー:HR/HMで言えば、ジミー・ペイジリッチー・ブラックモアウリ・ジョン・ロートエドワードヴァン・へイレンアンガス・ヤングマイケル・シェンカー、ゲイリー・ムーア、ランディ・ローズ、ジョン・サイクス、イングヴェイ・マルムスティーン 等など

ルック・アット・ユアセルフ/ユーライア・ヒープLOOK AT YOURSELF/URIAH HEEP  '71
ルック・アット・ユアセルフ/ユーライア・ヒープ order

   所謂「へヴィ・メタル」なグループではけっしてないのですが、この作品は、可也メタリックな音像。冒頭、タイトル・ナンバーで炸裂する、歪(ひず)んだオルガンによるリフと言い、全体に漲(みなぎ)る疾走感と言い、QUEENのルーツを知ることが出来る大仰で荘重なコーラスと言い、劇的な展開と言い、非常にへヴィ・メタリック。一般に、ユーライア・ヒープの最盛期は、この作品(3rd)から次作「DEMONS AND WIZARDS('72)」、次々作「THE MAGICIAN'S BIRTHDAY('72)」(及び次のLIVE盤)辺りとされ、彼らの最高作も、大体この3作の中から挙げられる場合が殆どなのですが、この3作中最もハード&へヴィなのが本作。他二作は、どちらもトータル・イメージを持つややプログレッシブ・ロック寄りのコンセプト・アルバム的作風で、アコースティック楽器がフューチャーされ、ポップさキャッチーさも前面に出、本作よりハードさは後退し全体にファンタジックなムードが強い。一般的ロック・ファンの方には、此方の方が馴染み易いかな...。(因みに、二作ともYESでお馴染みロジャー・ディーン作のジャケットが素晴しい)
 でも本作、幾らハードでメタリックとは言っても、全篇ギンギンギラギラしている訳では当然なく、基本は、キャッチーさを持ち、叙情と湿度を多分に含む、ブリティッシュなハード・ロック。やや、第一期DEEP PURPLE的アート・ロックな雰囲気も強いと感じます。線はやや細いが、繊細でナイーブなプログレッシブ・ロック的感性とでも言えましょうか(次作、次々作ではこちらの方が前面に出てくる)。同時代の他のハード&へヴィ系アーティストであり、このユーライア・ヒープと共に四大ブリティッシュ・ハード・ロック・バンドと称される事もあった、DEEP PURPLELED ZEPPELINBLACK SABBATH等に比し、そうしたにほいを感じます。
 この作品(或いはこの当時のこのバンド)の特筆点と言えば、なんと言ってもヴォーカルとコーラス。今は亡きデヴィッド・バイロン(R.I.P)の、ファルセット・ヴォイス(裏声)を多用し、これでもかのビブラートをかける、情感豊かで一寸ソウルフルなヴォーカルと、その高音ファルセットを活かしたコーラス。このコーラスをはじめて聴いたときは「クィーンみたい」と思いましたが、クィーンの方が後です。後にクィーンの専売のようになったコーラス・ワークのルーツを聴く思い。ロジャー・テイラー(QUEENのドラマー)のファルセット等、デヴィッド・バイロンのファルセットを彷彿とさせます。ただ、バイロンさん、声質がポップス・シンガーなのです(と私は感じます)。バンドの目指すハード路線にはそぐわない、と解雇された第一期DEEP PURPLEのロッド・エヴァンスに似ているのです。ややソフトで甘さの有る声質。其の辺り、コアなへヴィ系ファンには物足りなく聞こえてしまう場合もあるかもしれませんが、逆に言えば、ハードなのは一寸な...と言う方には聴き易いかと思います。
 もう一つ、忘れてならない特筆点は、メイン・ソング・ライターでもあるケン・ヘンズレーの、レスリー・スピーカーから溢(あふ)れ出る歪んだオルガン。なかなかに重厚。確かに、同時期のジョン・ロード(ディープ・パープル)や、キース・エマーソン(ELP )に比べれば、技術的には聴き劣りする感は否めませんが、迫力では全く退けはとらない。むしろカッコよさで言えば彼らより上かも。ギタリストが花形であった当事のロック・シーンにおいて、リーダーでもあるミック・ボックスのアンサンブル重視のギターが脇に徹し、キィボーダーが看板となる、特にハード&へヴィ系では稀有なスタイルとなっています。
 発表以来30年以上たつ今日も、当時と左程変わらぬ熱さで聴き継がれている上記ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスなどの同時期の作品に比し、現在この作品及び其の周辺の作品が余り聴かれないのは、一つには、これら3バンドに存在する、真のスター・プレイヤー、名実共にスターと言えるようなメンバーが存在しなかった、と言うことがあるかもしれません。リッチー・ブラックモアやジミー・ペイジクラスのギタリストがいたら、或いは、オジー・オズボーンやロバート・プラント級のオーラを発するヴォーカリスト、イアン・ギラン並の圧倒的歌唱力を持つヴォーカリストがいたら...大分変わっていたかも...と思ったりもします。また、もう一つ彼らの作品が聴かれることの少ない要因として、当時のサイケデリックな匂いが、他の3バンドと異なって仄(ほの)かに漂う為、一寸「時代」を感じてしまう様なところがあるからなのか、とも考えます。当時のサイケ文化を知る者にとっては、「ちょと古い...」と感じてしまうところが、正直無くもない。でも、サイケ文化を知らない方には、逆に新鮮かも。確かに、パープル・ツェッペリン・サバスのように、「時代」の中にありながら、その「時代」を超越した普遍的要素を多分に内包した存在ではないかもしれません。が、お聴きになって損は絶対にありません。ケン・ヘンズレーが歌うハード・ナンバー(アフロ・ロック・バンドosibisaメンバーによるパーカッションもgood)"Look At Yourself" 物悲しくも劇的で、デヴィッド・バイロンのヴォーカル特性が良く活きた、10分を超える大作(Manfred Mannがシンセサイザーで客演)"July Morning" ハードネスとドラマが融合した"Shadow of Grief"...と、名曲・佳曲も多い、少なくも、HR/HM道を極めたいとお思いの奇特な方には、必聴歴史的作品です。演奏面での充実度では、リー・カースレイク(dr)、ゲイリー・セイン(b)(R.I.P)参加の次作・次々作、全体的完成度の高さで言っても次作・次々作に一歩譲りますが、ハードさをお求めの方には、本作をお勧めします。

 '07 3/11
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お気に入り度:♭♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭ 技巧度:♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔英国出身 結成30数年を誇る大ベテラン。グループ名は、チャールズ・ディケンズ(「クリスマス・キャロル」や「二都物語」で有名)の小説「デイビッド・コパフィールド」中の登場人物から命名。当時英国はディケンズ・ブームだったとか。しかし、三大名作国内盤が全て廃盤とは...哀しい... official

*アート・ロック:’60年代後半に生まれた娯楽性よりも芸術性を追求・重視したスタイル。日本のみの呼称・分類。個人的にはプログレッシブ・ロック一歩手前、と言う感じ
*第一期DEEP PURPLE:所謂「第二期=黄金期」を迎えるハード・ロック時代の一つ前。一般に評価は低いですが、それは第二期のイメージで見る限りにおいてで、繊細で「深い紫」的世界を現出させたなかなかに高レベルな作品(アルバム3作)。ロッドの解雇理由には諸説有る
*サイケデリック(psychedelic):LSD(リゼルギン酸ジエチルアミド)等の幻覚剤により引起される幻覚や陶酔などの精神状態を表現した、音楽・美術・ファッション等の風俗・文化を指す。超現実的・夢幻的な音作りや、原色を多用した賑やかな視覚イメージ等で表現される場合が多い。’60年代から’70年代半ば辺りの一大ムーヴメント。初期PINK FLOYDの音楽、LED ZEPPELINの「LED ZEPPELIN III('70)」やSANTANAの「ABRAXAS('70)」のジャケット等に見られる
*レスリー・スピーカー:ロータリー・スピーカー。レスリーさん開発のホーンが回転することによるドップラー効果を利用しトレモロ効果やヴィブラート効果を得る、ロック界ではオルガン専用(とも言える)スピーカー
*Manfred Mann:’60年代英国で活躍したロック・バンド「マンフレッド・マン」のリーダー

フォール・フローム・グレイス/ライオンズ・シェアFALL FROM GRACE/LIONS SHARE  '99
フォール・フローム・グレイス/ライオンズ・シェア order

 一聴、耳を捉えるのは、力強いヴォーカルとパワフルなドラム、そしてエッジの効いたギター・リフでしょう。その骨太な音像は、瑞典(北欧)のプログレ・ハード系バンド、と言う先入観を持って聴くと、「?...ちょと雰囲気違う...」となるかもしれません。
 ここで聞かれる、輪郭のはっきりとした、力強い、張りも華もあるアンディ・イングベルグのヴォーカルは、デビュー(アルバム・デビューは’95)当時から彼らのウリであったようですが、これ以前の作品(1st、2nd)は、サウンド的にはもう少しキャッチーなにほい漂うスタイルだったようです(ボーナス・トラックとして収録されている"Lions Share"は、これ以前のテイストが良く現れているらしいのですが、確かに他の曲に比し親しみ易いソフトさを持っています)。でも、この作品は、非常にメタリックでダーク&へヴィ。BLACK SABBATH的暗黒テイスト、JUDAS PRIEST的邪悪さ、そしてRAINBOW的叙情とドラマ...。「古き良き」「正統」を血肉とした、非常に良質なHR/HMサウンドを提供してくれています。ただ、上に「プログレ・ハード系...」と書きましたが、プログレ色は、左程濃くはありません。複雑な展開、リズム・チェンジ、また変拍子等の「プログレ」っぽさ或いは「プログレ・フィーリング」的要素は確かに持っていますが、少なくもこの作品を聴く限り、例えばDREAM THEATER的なテクニカルさやごっつい「プログレ」さはなく、ドラマティックでメロディアスなプログレ風味のへヴィ・メタル、と言う感じでしょうか。若干の曲の弱さは否めませんが、プロダクションは良好で、演奏レベルも非常に高く、派手さはないものの、「味わえる」作品に仕上がっています。全体にミドル或いはスローな楽曲が多い為、メタル慣れしていらっしゃらない方にも、比較的違和感無く聴いて頂けると思います。因みに、プログレ的展開とポップ感及びコーラスが印象的な6曲目"The Day The Earth Caught Fire"は、CITY BOYと言うUKバンドの’79年発表の同名アルバム収録曲の結構忠実(と思う)なカヴァー。又8曲目の"A Touch Of Evil"は、JUDAS PRIESTが’90年に発表した「PAINKILLER」収録曲のカヴァーです。
 この作品発表当時、某雑誌のインタビュー記事で読んだのですが、実はリーダーのラーズ・クリス(g)以外のメンバーは、別に職業を持つ方々で、謂わばセミ・プロの集団だと言うことでした(現在は不明)。「他のメンバーと違って僕(ラーズ)は別に仕事を持っていないし、ガール・フレンドもいないからレコーディングに専念できるんだ」云々...と言うような事を仰っていたように記憶しています(間違えていたら御免なさい)。彼らの住む瑞典では、これまた、やや曖昧な昔のインタビュー記事(他のバンド)の記憶で申し訳ないのですが、芸術活動に対する国からの補助が受けられる為、バンド活動をしていれば、機材を揃える等も出来るし、贅沢さえしなければ最小限生活には困らない...のだそうです。日本人の好みに合う所為なのかも知れませんが、瑞典からは非常に多くのHR/HMアーティストが次々と紹介されています。良質なバンドも多い。その秘密は、そこら辺りにもあるのかもしれません。日本もそれくらいやってほしいものです。でも、瑞典、その代わり税金が高いのか...。消費税25%か...(食品は12%)。でもその分様々な社会保障が得られると...。高くても、払って良かった...と思える使い方をされているなら、良いのだよな。

 '07 1/21
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お気に入り度:♭♭  ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭ 暗度:♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔瑞典出身 オフィシャル・サイトで見ますと、ラーズ・クリスの好きなバンドは、KISS、BLACK SABBATH、JUDAS PRIEST、RAINBOW、DEF LEPPARDとなっています。成程...ですね。KISSやDEF LEPPARD的な親しみ易いハード・ロック味は初期の頃比較的前面に出ていた、と言う事なのでしょうか。じゃあプログレ味はどこから...?と見ると、好きなべーシストにゲディ・リー、好きなドラマーにニール・パートの名前があります。RUSHが好きなのか... official

*プログレ・ハード:プログレッシブ・ロック的テイストを持つハード・ロック
*瑞典のHR/HMバンド:EUROPA SILVER MOUNTAIN MERCYFUL FATE EDGE OF SANITY YNGWIE J. MALMSTEEN ENTOMBED THERION IN FLAMS ARCH ENEMY DARK TRANQUILLITY  MESHUGGAH NOCTURNAL RITES HAMMERFALL SOILWORK PAIN OF SALVATION  DARKANE THE HAUNTED MAJESTIC 等々

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:HeavyMetal :HardRock :ProgressiveRock :その他(Rock音楽以外も含む)
(あくまで主観に依る分類です。色の違いに特に意味はありません)
表示は アルバム・タイトル/アーティスト名  アーティスト名に続くのは作品発表年
お気に入り度:♭結構お気に入り ♭♭可也お気に入り ♭♭♭相当お気に入り ♭♭♭♭凄くお気に入り
        ♭♭♭♭♭棺桶に入れてほしい位お気に入り
ビギナーお薦め度:♭一寸無理です ♭♭どうかな… ♭♭♭どうぞ ♭♭♭♭是非聴いて下さい
           ♭♭♭♭♭是が非にもお聴き下さい
重度(ヘヴィさの度合い):♭左程ではない ♭♭まあまあ ♭♭♭普通 ♭♭♭♭相当
              ♭♭♭♭♭尋常ではない
硬度(ハードさの度合い):♭左程ではない ♭♭まあまあ ♭♭♭普通 ♭♭♭♭相当
              ♭♭♭♭♭尋常ではない
暗度(ダークさの度合い(雰囲気のヘヴィ度)):♭暗くはない ♭♭一寸 ♭♭♭普通 ♭♭♭♭可也
                           ♭♭♭♭♭呆れるほど
技巧度(演奏超絶度):♭そこがウリではない ♭♭(失礼ながら)意外と ♭♭♭普通 ♭♭♭♭可也
             ♭♭♭♭♭尋常ではない
旋律度(メロディアス度(旋律の美しさ)):♭ないに等しい ♭♭若干 ♭♭♭普通 ♭♭♭♭相当
                        ♭♭♭♭♭あふれる程
ポップ度(親しみ易さ):♭ない ♭♭若干 ♭♭♭普通 ♭♭♭♭結構 ♭♭♭♭♭可也
(以上すべて5段階評価(独断及び偏見))
(vo):ヴォーカル (g):ギター (b):ベース (ds):ドラムス (key):キィボード

HR/HM:ハード・ロック/へヴィ・メタル プログレ:プログレッシブ・ロック メタラー:ヘヴィ・メタル・ファン
official:オフィシャル・サイト 試聴出来る所も多いので是非
order:CD販売サイトへ移動します
(クリックしても注文にはなりません。移動するのみです)

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