MYSTIC RHYTHMS

Heavysphere  その九

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メタル、ハード・ロック、プログレそしてクラシック等について語らせて頂きます  Profile

BARTOK:弦楽四重奏曲第4番
ARMAGEDDON:クロッシング・ザ・ルビコン
BLACK SABBATH:ヘッドレス・クロス
DRAGONFORCE:インヒューマン・ランペイジ
IMPELLITTERI:スクリーミング・シンフォニー
DEICIDE:リージョン


§索引
§凡例
§ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い

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String Quartet No. 4, Sz. 91/Bela Bartok 弦楽四重奏曲第4番 Sz.91/ベーラ・バルトーク (1828) order
バルトーク四重奏団 エマーソン弦楽四重奏団 東京クヮルテット アルバン・ベルク四重奏団
 聴いていて楽しくなる音楽ではない。
 大分以前(2005年3月12日)に、この「Heavysphere」でキング・クリムゾンの「ラークズ・タンズ・イン・アスピック」(1973)中の「Larks' Tongues In Aspic, Part 1」につき、こう書いた。
「誰もが、心底に持つ漠然とした不安。そして対象のない恐怖・・・。その不安や恐怖を弥(いや)が上にも掻き立て増幅させずにはおかない様な、ノイジーなギター・リフ、ヴァイオリンの暗い旋律、激しく逼り来るドラムとベース、そして狂気を孕んだ如きパーカッションの混沌・・・。激しさと静謐が崩れたモザイクの様に入り混じる」
 この作品もまさにそうである。クラシックであるから、エレクトリック・ギターやドラムは登場しないが、イキフン的には瓜二つ。第5楽章の弦の激しいリズムの刻みなど、「Larks' Tongues In Aspic, Part 1」序盤でのヴァイオリンのプレイに投影されている様にも聴こえる。

 近・現代音楽の巨匠ベーラ・バルトーク(1881-1945)の作品は、程度の差はあれ、親しみ易さや解り易さなどとは縁の薄い、所謂「難解」な音楽である。口ずさめる様なメロディもなく、上に書いたように聴いていて楽しくなるどころか、何か不安に囚われそうになってくる場合すらある。「名曲名盤」紹介的な本では必ず取り上げられる、有名な「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz.110(1936)」と「管弦楽のための協奏曲 Sz.116(1943)」ですら、可也に取っ付きにくい。私がはじめて触れたバルトーク作品は、この二曲だった(何れもそれなり評価の高いアンタル・ドラティ指揮盤であった)が、二三回聴いて挫けてしまった。orz
 で、このジャンルにおいては、ショスタコーヴィチの作品群と共に、ベートーヴェン以降最大級の山脈とされる全6曲の弦楽四重奏曲である。これ等もご多聞にもれず難解だ。私の様なクラシック聴き齧り者にとっては、難解の権化のような存在であるシェーンベルクの、弦楽四重奏曲第3番と第4番を聴いたとき、相通ずるような匂いを感じた。モーツァルトベートーヴェンまた後期のシューベルト等、質・量ともに充実した(シューベルトはやや数が少ないが)、バルトークの大先輩達の弦楽四重奏曲群を聴き馴染んだ耳では、まともに聴くと、思わず「何コレ」と珍百景的リアクションをとってしまう。だが、何故か、不思議と惹かれるのだ。
 ここでは、バルトークの弦楽四重奏曲に限って言うが、早くからロック好き・メタル好きであった若き日の私でも、なかなか理解できなかったプログレッシブ・ロック、なかなか近寄れなかったデス・メタルに似ているかもしれない。その異質ぶりゆえ、当初は戸惑ってしまうのであるが、虚心に聴くうち、何かの拍子に感性の受容体に嵌ると、「ハマる」のである。
 私の内の何処が如何なってハマるのかは不明だが、バルトークの弦楽四重奏曲も、プログレッシブ・ロックやデス・メタルと同様、違和感は覚えつつも幾度か聴くうち、何時しか心奥の糸は共鳴し、単純にカッコよく、また面白く感じられて来るのである。私の様なメタル耳の人間には、テクニカル系メタル・バンドの作品のように馴染みやすい存在へと姿を変じて来るのだ。クラシックの聴き方としては邪道であると、若しかしたらお叱りを受けるかもしれないが。

 乏しい音楽的知識・理解力しか持ち合わせていない私だが、弦楽四重奏曲第4番の解説的な部分も必要と思われるので、頑張って挑戦してみる。
 当作が作曲されたのは、バルトーク47歳の年。パリでラヴェルの「ボレロ」が初演され、イタリアでファシズム大評議会が国家最高機関となり、日本で大相撲のラジオ中継が始まり、満州で張作霖が暗殺され、アメリカでミッキーマウスが公式デビューし、手塚治虫やチェ・ゲバラがこの世に生を受けた1928年である。
 曲は無調で、クラシックの曲名で普通に見る「ハ短調」とか「イ長調」等と言う調性を持たない。構造は全5楽章で、第1楽章と第5楽章、第2楽章と第4楽章が第3楽章を挟みそれぞれ形式・旋律・長さなどが類似した、A-B-C-B'-A'というシンメトリカルなアーチ構造を持っている。各楽章の内容と個人的な印象を簡単に下に記す。

・第1楽章 Allegro:ソナタ形式(通常、二つの主題を持ち提示部・展開部・再現部・終結部から構成される楽曲形式)。既に緊張感を孕み、第5楽章の激しさ荒々しさを予兆する。
・第2楽章 Prestissimo, con sordino:弱音器(ソルディーノ)を付けて演奏。忙しなく飛び交うミツバチの群れの羽音を微かに聞く感じ。
・第3楽章 Non troppo lento:バルトークの緩徐楽章はしばしば「夜の音楽」「夜の歌」等と呼ばれるが、ここも、静かに沈潜した夜の世界である。アーチ構造の中核をなしている。
・第4楽章 Allegretto pizzicato:ピツィカート及びバルトーク・ピツィカートのみで構成されている。ピツィカートとは、本来弓で弾く弦を指でつまんで弾(はじ)いて音を出す奏法。バルトーク・ピツィカートはこの作品で初じめて指示されたもので、弦をつまんで弾くだけでなく指版にぶつける。よって非常にパーカッシブ。ピツィカートの断片的な音の連続が第2楽章の「ミツバチ」との符合を感じさせる。
・第5楽章 Allegro molto:第1楽章と同じソナタ形式。荒々しく激しいリズムがメタルのギター・リフのように押し出される。

 特殊な奏法も多く、数ある弦楽四重奏曲の中でも、技巧上難曲中の難曲とされているのだそうだ。
 全体として、精神の安寧(あんねい)を打ち毀(こぼ)つような不安定感や焦燥感が漂っており、ファシズムが台頭し始めた当時のヨーロッパの状況が、ファシズムを嫌った彼、後ナチス寄りとなった祖国ハンガリーを去りアメリカへ亡命(1940年)したバルトークの当時の内面に反映しているようにも思える(まったくの私見)。
 曲は、プロ・アルテ四重奏団に献呈されたが、初演は1929年ブダペストにてヴァルトバウエル四重奏団により行われた。

 バルトークの弦楽四重奏曲は、この第4番を含めいづれも、緊張度が高く、緻密で、ダークなヘヴィネスを湛えている。よって、メタルやプログレッシブ・ロック、特にテクニカル系・プログレ系のメタル(メシュガーメコン・デルタペイン・オブ・サルヴェイション辺りにメタル・アレンジで演ってほしい感じ)やジョン・ウェットン&ビル・ブルーフォード時代(1973-1974)のテクニカルでヘヴィなキング・クリムゾンに惹かれる方などには、大いにアピールする作品群ではないかと思われる。なかでもこの、荒ぶるリズムと不協和音がアヴァンギャルドでトンがった第4番が、一押しである。そして次には、似たベクトルを感ずる、前年に作られた姉貴分の第3番 Sz.85を押す。前衛もトンがりも嫌よ、と仰る方には、バルトークらしさは十分持ちながら、後期ベートーヴェンやロマン派的な「普通」さを持つ第1番 Sz,40(1908)、そして、民族的で(比較的)分かり易く名作ともされる第5番 Sz.102(1934)をお薦めするが。
 若し間違って(?)、本作或いはバルトークの他の弦楽四重奏曲が気になり、聴いてみようかな・・・とお考えになった場合は、メタルやプログレッシブ・ロックが好きな方には、表現主義的と呼ばれる演奏タイプのグループをお薦めする。テクニカル&メカニカルなプレイとタイトな音像は相性が良いのではないだろうか。ジュリアード四重奏団やエマーソン弦楽四重奏団、そしてアルバン・ベルク四重奏団等がそうだ。
 メタルやプログレッシブ・ロックなど好きではない、というノーマルな方には、バルトークの持つマジャール(ハンガリーの自称)の土俗的・民族的な色合いが表に出た、比較的オーソドックスで親しみやすい演奏タイプのグループ、ハンガリー四重奏団やバルトーク四重奏団等を圧倒的にお薦めする。ただでさえ聴き手を突き放すような近寄りがたさを持ち、金属的ヒンヤリ感の漂う音楽を、こうした方々が前者のテクニカル系の演奏で聴いたならば、バルトークの弦楽四重奏曲(下手したらバルトーク自体)大っ嫌いになることは必定ではなかろうか。で若しそうなったらば、その方の人生にとっては一大損失である。この愛想はないが、深く固有な音宇宙を味わわずに生涯を終えてしまうのは、余りに勿体ないのである。

 因みに私は、ファースト・チョイスは同郷ハンガリー出身で土俗系のバルトーク四重奏団(1991年録音盤。画像左端)だった。その骨太で衒(てら)いの無い演奏は、録音も新しくとても聴き易い。次に非常にメカニカルでテクニカルなエマーソン弦楽四重奏団(1988年録音盤。画像左より2番目)を聴いた。筋肉質でロックなプレイは私は好きだが、聴き手を選びそうな感はある。両者何方もそれぞれ良いと思うが、現時点で言うと、一番多く聴いているのは、その後にチョイスした、特定の色があまり濃く出ていない東京クヮルテット(1993-1995年録音盤。画像右より2番目)かもしれない。多少線の細い感は有るが、繊細でシャープなプレイは、しなやかで抒情も仄かに匂わせ、なお且つこの作品の持つ本質的な硬質さも醸しており、その辺りのバランス感が好もしい。

2015年12月31日追記:
 アルバン・ベルク四重奏団(画像右端)によるものをやっと聴いた。可也遠くの図書館所蔵であるので、なかなか借りられなかったのである。
 これは世評最も高い演奏である。このカルテット自体、現代四重奏団のお手本的存在とも見做されているので、モーツァルトでもベートーヴェンでもシューベルトでも、弦四の演奏では皆一様に最高評価となるが、バルトークも例外ではない。バルトーク云々ではなく、これ等楽曲を純粋に一つの弦楽四重奏曲として聴くならば、一番良いかもしれない。トータルなバランスは最も高次元で取れているように感じる。ただ、情緒的な滲みが一寸強く、テクニカルでメカニカルではあるが、無機的印象は薄い。

 2015 10/06

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お気に入り度:♭♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭
重度:♭♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭ ポップ度:♭
〔ベーラ・バルトークはハンガリー王国ナジセントミクローシュ生まれ。東欧地域の民俗音楽をレコーダーを持って収集し研究、成果を作品にも生かした。ピアニストとしても活躍(リストの直系の弟子。自演の録音もパブリックドメインで聴くことが出来る)。アメリカ亡命後は印税収入の滞りや自作品への無理解また病等で困窮し、友人らの支援や作曲依頼を受ける。大戦終結直後の9月、白血病によりニューヨークで没した。ハンガリーは日本同様名前は姓が前に来るので本来は、バルトーク・ベーラとなる。
代表曲は、「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」「管弦楽のための協奏曲」「ピアノ協奏曲第2番」「弦楽四重奏曲(全6曲)」「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」「ルーマニア民俗舞曲」「ミクロコスモス」等。
ジュリアード四重奏団(1949)ハンガリー四重奏団パブリックドメインで、ジュリアード四重奏団の1949年録音盤(左)とハンガリー四重奏団の1961年録音盤(右)を聴くことが出来る。前者はエマーソン弦楽四重奏団と同じくテクニカル系。モノラルだが若さ迸る内容は素晴らしい。後者はバルトーク四重奏団と同系の土俗的で骨太な演奏。緩くはあるが温もりを感じる(ステレオ)〕

*表現主義的な演奏:20世紀初頭に登場した音楽の一スタイルに表現主義音楽がある。不安定な旋律、自由なリズム、不協和音の使用、極端な高音域・低音域の使用、極端な強弱などを特徴とするもので、アルノルト・シェーンベルクが代表的とされる。表現主義的な演奏とはこうした表現主義音楽の特徴を前面に出したような演奏スタイルと言うことであろうか
*調性:狭義には長調・短調からなる和声的調体系。広義には中心音(主音)が存在する音の組織に基づいた音楽(分から〜ん)。こうした調性音楽の枠を取り払って自由に発展させた形態が無調音楽。シェーンベルクが創始者とされる
*アルノルト・シェーンベルク(1874-1951):ウィーン生まれ。一般に「現代音楽と言えばシェーンベルク」的イメージの存在。無調音楽、十二音技法の開発者。ナチス台頭を避け(彼はユダヤ系であった)バルトークより先1933年にアメリカへ移住。上に書いた弦楽四重奏曲第3番は1927年、第4番は1936年の作曲。何方も無調で、第3番は室内楽として初の十二音技法による作品
*十二音技法:オクターブ内の12の音を均等に扱って音列(セリー)を設定し、それに基づき曲を構成する技法。これにより調性を否定した。この技法による音楽を十二音音楽(Dodekaphonie)と呼ぶ(分から〜ん)
*ドミトリ・ショスタコーヴィチ(1906-1975):ソヴィエト連邦の音楽家。それぞれ15曲ある交響曲と弦楽四重奏曲のほか、社会主義体制と言う難しい状況下で、当局への賛美とも反抗とも定められない数多くの作品を生んだ
*Sz番号:セールレーシ番号。ハンガリーの作曲家・音楽学者、アンドラーシュ・セールレーシ(ハンガリー的には、セールレーシ・アンドラーシュ)により付けられた作品番号。他にブダペスト・バルトーク研究所所長ラースロー・ショムファイによるBB番号、音楽学者デニス・ディーレによるDD番号がある
*ファシズムの台頭:国家ファシスト党他による第一次ムッソリーニ政権成立が1922年、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)によるヒトラー政権成立が1933年。ハンガリーが日独伊三国同盟に加入したのはバルトークが去った一月後の1940年11月であった
*キング・クリムゾン:UK出身のプログレッシブ・ロック・バンド。1969年デビュー以来数多のメンバー・チェンジ、音楽的変遷を経現在も活動中。ジョン・ウェットン(vo,b)&ビル・ブルーフォード(ds)時代の作品は「ラークズ・タンズ・イン・アスピック(太陽と戦慄)」「スターレス・アンド・バイブル・ブラック(暗黒の世界)」「レッド」及びライヴ・アルバム「USA」で、高度な演奏力に基づいた即興性の高いプレイが特徴。全体にハードで、私の様なメタルばかには最適な時代

CROSSING THE RUBICON/ARMAGEDDON クロッシング・ザ・ルビコン/アルマゲドン (1997) order
Crossing the Rubicon この「Heavysphere」での、記念すべき(?)第一回目(2002年4月13日)に取り上げたのは、スウェーデンのメロディック・デス・メタル・バンド、アーチ・エネミーの2ndアルバム「スティグマータ」であった。ここで取り上げる訳であるから、当然お気に入りのなのだが、なかんずく、ドラム担当のピーター・ウィルドアーのプレイが、大のお気に入りで、今回取り上げた当作品も、彼がドラムを叩いていると言うことがメインの理由で、USEDで発見した際、迷わず購入したものである。
 とは言っても、本作の主役はピーターではない。ピーターをメインで捉えたのはあくまで私(わたくし)的理由で、このアルバムのメインは、アーチ・エネミーのギタリスト、アモット兄弟の弟君、クリストファーである。これは彼のソロ・プロジェクトの第一作なのである。
 そんな主役クリストファーを、失敬にも半ば無視して、ドラムをメインに聴き始めた私であるが、正直、彼のプレイにちょっと驚いた。クリストファーが素晴らしいギタリストであることは、彼の本業であるアーチ・エネミーのアルバムで十分承知していたつもりであったが、この作品を聴いて、こんなセンスも持ち合わせていたのか、と己が聴く耳の無さに気付かされた。
 何故と言って、アーチ・エネミーでの彼のプレイは、兄マイケルの、エモーショナルで抒情的な、所謂「泣き」のギターに対し、テクニカルで速弾きメインの何方かと言えばクールで少々ドライなギターと言う印象が強く、上手いけど味はやっぱりお兄ちゃんだな、と考えていたからだ。ところが、この作品では、泣いているのだ。歌っているのだ。元来のテクニカルで流麗なプレイはそのままに、楽曲によっては、お兄ちゃん張りの「哀愁」もたっぷり漂わし、往年のマイケル・シェンカーゲイリー・ムーアを彷彿させるのである。本業のアーチ・エネミーの方では、マイケルと役割分担しておられるのであろうが、こんな、ギタリストとしての懐の深さをお持ちであったとは、気付かなんだ。しかも、1997年2月の本作レコーディング時、クリストファーは十九歳(1977年11月生)である。それも驚く。少しスタイルが異なるが、同世代のギター・ヒーロー、チルボドのアレキシ・ライホ(1979年生)と並び称されてしかるべき存在である。

 作品全体だが、ヴォーカルは同郷のメロディック・デス・メタル・バンド、イン・ザイ・ドリームスのヨナス・ナイレンで、デス・ヴォイス(グラウル)ではあるが余りディープなものではなく、またチューニングもおそらくダウン・チューニング(通常より低く調弦する)ではなくノーマルなので、メロディック・デスと言うよりは、少し重めでメロディックなスラッシュ・メタルといったイキフンも感ずる。デス系は一寸・・・と言う方にも、比較的聴き易いのではないだろうか。ギター(クリストファー)、ドラム(ピーター)そしてベース(マーティン・ベンソン)が翌年リリースの上記「スティグマータ」と同じだが、そちらほどダークな深刻感は無く、可也オーソドックスなメタルに近いひほいも有るので、ご安心を。
 歌詞はすべてお兄ちゃんが提供しているようで、地球を破滅に導いた人類が、異星生物の侵略を受け、アーサー・C・クラークの「太陽系最後の日」の如く宇宙船で脱出し、新天地を目指すが、終には歴史の最終ページを開いてしまう・・・、という物語に沿ったコンセプトなものとなっている。「アルマゲドン」「クロッシング・ザ・ルビコン」という語句も見える。新しい世界を求めて旅立つこのストーリーに沿ってのことであろうか、第6曲のエンディングで、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第1楽章のフレーズの一部が使用されている。
 各所に挿入された実験的なインストルメンタル曲(ヴァイオリンとリコーダーが参加したトラディショナルな第5曲は名曲)が、後半では少々流れを滞らせるように感じられたり、楽曲全体としても後半に少々弱さが気になるなど、トータルに名作とは呼べないが、十二分に平均レヴェルは軽く凌駕する佳作であり、デス系メタルの名盤と表現しても、強(あなが)ち過言ではない。私が贔屓にするピーターの、フュージョン系センスを醸すテクニカルなプレイも存分に楽しめる。

 「クロッシング・ザ・ルビコン」とは、「ルビコン川を渡る」の意で、後戻りできない重大な決断或いは行動をすることの例えとして使われる言葉。クリストファーが、そのような思いでアルマゲドンでの活動を行っていたのかどうかは不明だが、彼の言動や実際の活動からはあまりそのようには見受けられない。しかし、2011年にアーチ・エネミーを脱退後、アルマゲドンは再始動し、3rdアルバム(2002)から13年の時を経、本年4thアルバムをリリースした。やる気が出たのであったならば喜ばしい。

 2015 7/31

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お気に入り度:♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭♭ ポップ度:♭♭
〔1975年にたった一枚のアルバムを残し消えてしまった、元ヤードバーズのキース・レルフが率いた同名のハード・ロック・バンドが存在するが、全く別。しかしそちらのアルバムもなかなか名盤なので、何時か紹介させて頂きたいと思っている〕

*ルビコン川を渡る:古代ローマ時代、ガリア(現在のフランス・ベルギーそしてオランダ・ドイツ・イタリア等の一部でのちカエサルに征服されローマ領に)とイタリアとの境をなすルビコン川を、カエサル(BC100-BC44)が「賽は投げられた(投げてしまおう」と言い、法を無視して渡河した故事に由来する。現在イタリア中部を流れる全長24kmほどのルビコン川がこの有名な川にあたるとされる
*太陽系最後の日:SF作家クラーク(1917-2008)の最初に売れた作品(1947)。此方での地球人は、太陽の爆発から逃れるため宇宙船で旅立つ(参考:北の離れ2008年7月26日記事)
*チルボド:シベリウスとメタルの国フィンランドで国民的バンドの一つともされるメロディック・デス・メタル・バンド、チルドレン・オブ・ボドム。リーダーがアレキシ(g,vo)

HEADLESS CROSS/BLACK SABBATH ヘッドレス・クロス/ブラック・サバス (1989) order
Headless Cross 「メタルとはこんな音楽です」と、メタルに馴染みの無い方に一枚まず聴いて頂くとしたならば、現時点で言えば、私はこのアルバムを選びます。それくらい、メタルらしい重さ、ダークさそしてドラマ性等といった特殊な性質と、排他に陥らない普遍的性質とが、高いレヴェルでバランスした作品。メタル元祖ブラック・サバス後期を飾る一枚です。

 第14作目にあたる本作は、長いサバスの歴史において、正直華は余り無いやや地味目なアルバムではありますが、全体的クオリティはかなり高く、私的には、東国武士の如き質実剛健な渋メタルが好もしく、初期四作(「ブラック・サバス」「パラノイド」「マスター・オブ・リアリティ」「Vol.4」)に次ぐ存在。歴史的名作と名高い「ヘヴン・アンド・ヘル」、完成度・洗練度が高く後期の名作とされる次作「TYR(ティール)」より、此方の方が好きだったりします。
 そんな私のこの作品での聴きどころは、トニー・マーティンのヴォーカルとコージー・パウエルのドラム。両者ともに素晴らしい。
 トニー・マーティンの深さと強靭さを持ったヴォーカルは、他者との比較は失礼になるかもしれませんが、言ってみればちょい低音の若々しいロニー・ジェイムス・ディオ。ただ、メタルを歌うために生まれてきたようなロニーよりは、やや甘さがありブルージィでもある。ハード・ロックや一般的ロック音楽でも十分イケそうな幅の広さを持って「歌」を聴かせてくれているので、メタルに馴染みの薄い方にも、聴き易いのではないかと思う。
 若手トニー・マーティンに負けず、ベテラン、コージーもまた素晴らしい。レインボー時代に比せば、パワーやアタックの強さが低下しているのは致し方ないが、凄味は健在だし、フレーズも多彩で、深みあるそのプレイでアンサンブルを支え或いは牽引し、存在感は増しているとも言える。らしいハード・プレイだけでなく、曲によって見せる、独特のスイング感での、歌うようなドラミングも印象に残る。
 楽曲も全体に良く練られて高質である。ミドル・テンポ中心で、コージーのドラムと相俟って重厚そのもの。初期サバスのおどろおどろしさも希薄で、アヴァンギャルドなイキフンも尖鋭さもなく、余りに「普通」すぎて、コアなファンには物足りなさが否めないかもしれませんが、歌メロもなかなかにキャッチィで非常に取っ付きやすく、メタル初心者の方には、花丸のお薦め。
 だがしかし、それぞれにメタル・フロンティアを切り拓いてきた、プロデューサーも務めるトニー・アイオミ(リーダー)とコージー・パウエルのオヤジ二人、その人生の道程が凝縮されたような「重い」作品です。決してビギナー向けのお手軽作品では御座いません。

 "When Death Calls"で聴かれる、ご存知"We Will Rock You"の作者であるクィーンのギタリスト、ブライア・メイのソロがまた、これ、まじブライアン?と思うほどに重硬でクール。

 2015 2/22

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お気に入り度:♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔変遷多きサバスのラインナップの中で、本作はトニー・マーティン(vo)、トニー・アイオミ(g)、ローレンス・コットル(b)、コージー・パウエル(ds)、ジェフ・ニコルス(key)という面子。ベースが軽めなのはジャズ・フュージョン系セッション・マンの方だから致し方なしか〕

*ヘヴン・アンド・ヘル:1980年発表の第9作。「ミスター・ヘヴィ・メタル」オジー・オズボーン脱退で揺らぐなか、ロニー・ジェイムス・ディオを迎え大復活。当時のメタル・ムーヴメントと相俟ちヒットした大名盤。オジー時代に比しメロディ・ドラマ・スピードといった要素が目立つようなスタイル転換で、多くの新たなファンを獲得した一方初期からのファンにはらしくないと違和感を持たれもした

INHUMAN RAMPAGE/DRAGONFORCE インヒューマン・ランペイジ/ドラゴンフォース (2006) order
Inhuman Rampage まぁ、超速い。知らなかったら、プレイヤーいかれたか、と思うかもしれません。
 近年では珍しいイギリス生まれのメタル・バンド(メンバーは多国籍)の3rdアルバムですが、私は当作品を図書館で借りて聴いたとき、昔メタリカの「マスター・オブ・パペッツ」をお初に聴いたときくらいにクリビツでした。彼らについてこれと言えるほどの基礎知識がなかったので。

 これ以上は飽和でしょ、と思うほどに音数をぎっちり詰め込んで、何処行きたいの?と聞きたくなるほど超高速で駆け回る。スラッシュ、デス、ブラック等のエクストリーム系メタルを思わせる突進ドラムにツイン・ギターとキィボードが(ちょいとベースも)速弾きフレーズを織り込み(皆上手い)、仄かに哀愁と憂いの匂う親しみやすい歌メロを乗せるその姿は、二倍速のハロウィンか、ノーマル・ヴォイスの爽やかなチルボドか。
 ただ、速い・上手いだけでは、味わいも何もないサウンドになりそうですが、そうはならずに一度聴いただけで飽きはせず聴き込みたくなるのは、作曲能力の高さ故なのでしょうね。楽曲には起伏もドラマもあり、展開力もアレンジ力も共になかなか。「みんなおんなじ」などと侮っては罰当たりです。また、当時平均年齢29歳とメンバーはそこそこいってるからか、高速疾駆も高度に制御され、猪突猛進的暴走とはならない絶妙なバランス感も持ち合わせているので、意外に(と言っては失礼ですが)聴き易くもある。
 そこはかとない愁いを帯びたクサいメロディ、そして適度な重厚感と湿り気は、正にジャーマン・メタル系で、そこに、ブリティッシュの遺伝子か或いは「イギリス出身」の言葉が生む幻影なのかは不明ですが、何処とはなしの洗練感が加わる。この辺り、長らくジャーマンな或いはブリティッシュなハード・ロックやヘヴィ・メタルを聴き馴染んできた耳には、しっくりと親和的で、嬉しい。

 味わいの深さを求めれば、少々物足りない感が残るのは事実。速けりゃ良いってもんじゃぁないぜ、と当初思ったのも事実。でも、こうしたタイプ・スタイルもあるのだと知り、可也おっさんのオールドなメタル・ファンである私ですが、音楽世界、一寸広がった感があるのも、また事実。
 ただ、この「非人間的な」超速に慣れるまでちょっと時間かかったのも、また、事実です。

 2015 2/18

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お気に入り度:♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭♭ ポップ度:♭♭♭♭
〔ヴォーカル、ギター×2、ベース、キィボード、ドラムの6人組。本作当時メンバーの出身は南アフリカ(vo)、イギリス(g, ds)、香港(g)、ウクライナ(key)、フランス(b)と可也多文化。BABYMETALともコラボしている。因みにタイトルのinhumanは非人間的な・冷酷な、rampageは暴れまわる・凶暴な行動等の意 official

*エクストリーム系メタル:エクストリーム・メタルと呼ばれるメタルのサブジャンル。メタルは元来、速い・重い等の要素また暗い・邪悪・攻撃的・反社会的等の雰囲気が目立ちますが、その辺りが更に突出し、ロック音楽の持つ普遍的要素が希薄となり特殊化したメタルの中でもより特殊化したジャンル。スラッシュ・メタル、デス・メタル、ブラック・メタル等
*ジャーマン・メタル:アクセプトハロウィンブラインド・ガーディアンに代表されるドイツのメタル。重厚でメロディアスでスピィーディ。そして何処かあか抜けない親しみやすさが特徴

SCREAMING SYMPHONY/IMPELLITTERI スクリーミング・シンフォニー/インペリテリ (1996) order
SCREAMING SYMPHONY 弾きまくりのギターといい、脳貧血が心配になりそうなハイトーン・ヴォーカルといい、また手数足数の多いドラムといい(ベースとキィボードは残念ながら一寸存在が薄い)、暑苦しさ満載の、まさにメタル馬鹿(褒め言葉)が作ったメタル馬鹿の為の一枚。これを聴いて、あぁ・・・ダメ、と感じた方、貴方は正常かも。

 このバンドは、「世界一の速弾きギタリスト」とも呼称されるリーダーのクリス・インペリテリが、イングヴェイ・マルムスティーン脱退後のアルカトラスのメンバー・オーディションを受けるも落選(1984年。受かったのはスティーヴ・ヴァイ)したそののち、以降長く活動を共にすることとなるロブ・ロック(vo)等と結成されました。そんな経緯があるためか、速弾き中心でクラシカルなフレーズも多いプレイ・スタイルのためか、又グラハム・ボネットを後にヴォーカルに迎えたりしている所為か(アルカトラスはグラハムのバンド)、よくイングヴェイ・マルムスティーンと比較されます。しかしイングヴェイとクリス(或いはインペリテリ)の音楽性は、大分異なるように私は感じます。
 イングヴェイの音楽は、クラシック音楽的ふくよかさが顕著で、楽曲は起伏に富み、少なくも初期の頃は何方かと言えばたおやかな音像です。それに対しクリスの音楽はまさに「ロック」であり、シンプルでストレート、剛直なストロング・スタイル。両者ともに、大先輩にあたるリッチ−・ブラックモア及びその在籍バンド、ディープ・パープルまたレインボーの系譜に連なる存在と言えると思いますが、イングヴェイが、リッチーやレインボー等の持っていたロマン的またクラシカルな側面を拡大して行ったような方向性とすれば、クリスはリッチーやレインボー等の底流にあるロックンロール的側面(レインボーの3rdアルバム原題は「ロックンロールよ永遠なれ」)を推し進めて行ったもの、と言うような捉え方も出来るかと思います。
 何れにしろ、イングヴェイ・マルムスティーン共々、彼らインペリテリは、ネオ・クラシカルというヘヴィ・メタルの一つのスタイルを代表する存在として、主に日本や欧州で高い人気を誇っております(本国ではデビュー間もなくメタル自体が衰退して行ったため苦労されている)。
 ただ、人気は有るのですが、音楽的に如何かと言えば、残念ながら余りクオリティは高いとは言えない(失礼は承知の上。ファンの方御免なさい)。このアルバムに関して言っても、クリスの超高速ソロや、ザクザクとした快い切れたリフはこの上なく素晴らしいとは言い、曲の展開は比較的単調だし、似た曲が多いし(第1曲と第3曲なんてイントロほぼ一緒。第9曲は前作の第7曲とくりそつだし。クラシックではフレーズの使いまわしは結構あるけど)、音も浅いしサウンド・プロダクション(総合的な「音」の造り)も決して良好とは言い難い(どうして本職のプロデューサーさん頼まなかったの?)。
 でもね、何故なのでしょう、この心地の良さは。安心して身を委ねて聴いていられる。クラシックで言えば、ハイドンモーツァルトのよう、とも言えましょうか。いい意味で展開が読め聞き流せる(聴く者に緊張を強いない)。聴き手の需要を把握・考慮しツボを押さえた、独善に陥らないバランスの良い楽曲を提供してくれています。
 そして何と言っても、その頭からお尻までみっちりのメタル道一直線、迷い一切なしの鋼鉄音界が爽快。深みや味わいに若干欠ける部分は否めないとはいい、こんなのが欲しかったんだよぉ、と思わずメタラーが言いたくなるような、メタル耳に美味しい逸品となっておるのです。

 エンジェル・ウィッチ1stアルバムのアートワーク(「地獄の堕天使」)でお馴染みジョン・マーティン描く「エジプト第七の災禍」(1833)のジャケットもカッコイイ。でもこの絵から伝わるような古代史発掘的濃厚ドラマな音楽ではないですよ。何方かと言えば硬質でドライな風(ふう)。タイトルも「シンフォニー(交響曲)」とされていますが、それよりは叫ぶギター独奏の「コンチェルト(協奏曲)」の方が内容的には合うような気が個人的にはします(イメージ的には「シンフォニー」の方がヘヴィな感じで良いですけどね)。
 「セヴンティーンス・センチュリー・チキン・ピッキン」を聴いてくれ!

 2014 5/4

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お気に入り度:♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭ 硬度:♭♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭♭
〔1987年ミニ・アルバムでデビュー。カリフォルニアはロサンゼルス出身の五人組(このアルバム当時)。本作はフルレンスとしては4thアルバム。前作「アンサー・トゥ・ザ・マスター」(1994)もバラエティに富んだ良い作品でしたが、内容や人気の高さなど総合的に見てこのアルバムが彼らの代表作、と言って良いのではないでしょうか。
インペリテリ、良いバンドなのですが、登場が少し遅すぎたのかな。もう一寸早くデビューして前作や本作が1980年代終わり頃までに出せていたら、随分と評価も活躍も変わっていただろうな、と彼らの良質なメタル・サウンドを聴きながら、歴史の「if」を妄想する私です〕

*リッチー・ブラックモア(1945-):HR/HM界のカリスマ的ギタリスト。HR/HMにクラシック音楽的要素を持ち込んだ張本人。今はハード&ヘヴィな音楽からは離れていらっしゃる
*ネオ・クラシカル:ヘヴィ・メタルの一ジャンル。クラシック音楽的音階やフレーズを大きく取り入れたスタイル
*プロデューサー:この作品はクリスがプロデューサーをしていますが、ミキシングはHR/HM界では有名なマイケル・ワグナーと言うドッケンやスキッド・ロウ等手がけたプロデューサーさん。プロデュースも頼むことは出来なかったのだろうか?ややハード・ロック寄りの人の様なので作風が合わないと判断したのでしょうか
*フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1792-1809):交響曲・弦楽四重奏曲の父。ベートーヴェンの師匠
*ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791):クラシック界最大の天才。世界で一番レコード・CDを売ったアーティストではないかと私は思っている。ハイドンとはお友達
*エンジェル・ウィッチ:1980年デビューのNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の代表的バンドの一つ。最新作(2012)でもジョン・マーティンの作品(「最後の審判」の部分)をジャケットに使用
*ジョン・マーティン(1789-1854):イギリスのロマン主義の画家。宗教的場面をドラマティックに描いた作品が多い。「最後の審判三部作」は圧巻。「第七の災禍」とはユダヤの民エジプト脱出の物語である旧約聖書「出エジプト記」中に描かれた十の災禍のお話の一つ。
「地獄の堕天使」は所蔵するテイト・ギャラリーのHPでは「嘗てはジョン・マーティン作とされた」とある。違っていたのか・・・
*コンチェルト(協奏曲):協奏曲は一般にソリスト(独奏者)の名人芸を披歴すると言う性質が強い。それが最も顕著なのは、イングヴェイも敬愛するパガニーニ(1782-1840)のヴァイオリン協奏曲
*チキン・ピッキン:幾つかパターンがあるようですがここではピックでダウン・ピッキングをしながら指(中指)で引っ張るように弾く奏法のこと(だと思う)

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・どうぶつ救援本部 http://doubutsukyuen.org/
・福島県動物救護本部 http://www.fuku-kyugo-honbu.org/

LEGION/DEICIDE リージョン/ディーサイド (1992) order
LEGION よくこのバンドの作品が図書館にあったなぁ、と私は驚きましたよ。だって、アンチ・クライストの凶悪デス・メタルの権化的バンドでっせ。知らなかったのか、或いは別に問題はないと判断したのかは解りませんが、何故置いたのか?不思議。私個人としては、音楽的に素晴らしいので、その思想信条をとやかく言う気もありませんし、図書館にあったところで問題もないとは思います。ただ、クリスチャンの皆さんのなかには、このバンドを取り上げることで、お気持ちを害される場合もあるやもしれません。その時は御免なさい。私このサウンドが好きなのです。そして、このバンドの作品を語るにつき、その思想信条に触れざるを得ないのです。予めご了承を願います。
 「deicide」と言うこの天をも恐れぬ名を持つバンド、1987年の結成(当時はAMONという名)以来、現在に至るまで活動を続ける、デス・メタルの古参ビッグ・ネームの一つ。この2ndアルバムで聴かれるその音楽は至ってストレートな、スレイヤー直系ともいえる直球勝負ゴリ押しストロングスタイル。今となっては特にブルータルでもヘヴィなサウンドでもありませんが、気迫が音圧と化して迫りくる。この凄味は、おそらくは、リーダー、グレン・ベントン(vo, b)のキリスト教に対する並々ならぬ強い思い(信仰とは逆のね)から生じるものなのでしょう。その様に感じられる、負のオーラ満載。彼の額の逆さ十字が、妖しい光を放っているようです。
 「教会の定義によれば、俺はサタニストなんだろう。でも、だからといって血塗れで踊って赤ん坊を食うかって?それはない。神を憎み、キリスト教を憎み、それに反する事を言っているか?それはある。誰かがやらなくてはならないことだ。だから俺はもう二十年もやっているんだ。それが俺という人間だ。」某メタル雑誌でのグレンのインタヴューでの発言だそうですが、彼の信念の伝わってくる内容です。そして彼は、続いてこう言ったそうです。
「この地球上で一番多くの人を殺したもの。それが宗教だ。」
 彼グレン・ベントンが真の反キリスト教者、サタニスト(悪魔崇拝主義者)であるのかどうか、私には解りません。また、私は無信仰ですが彼の思想に対し特に賛意を持つ者でもありません。が、彼の「この地球上で一番多くの人を殺したもの。それが宗教だ」の言葉には、少々感じるものがありました。
(グレンの発言に関しては、インタビューの一部を引用した記事のさらに一部を引用させて頂きました)

 宗教が主因となった戦争・紛争が歴史上どれほどあったのか或いはなかったのか、残念ながら私には解りません。しかし、多くの戦争や紛争に宗教が絡んでいるものは確かに多い。
 宗教間・宗派間の対立が、政治的対立や権力的或いは領土的野心に利用されて来た部分もありましょう。カトリックとプロテスタント間の争いとされ「宗教戦争」と一般に呼ばれる、ユグノー戦争(1562-1598)、オランダ独立戦争(1568-1648)、三十年戦争(1618-1648)など、世俗的対立或いは権力や利権を求める世俗的野心が、その本質なのかもしれません。また、イスラムからの聖地エルサレム奪回を目指したものとされる7度にわたる十字軍遠征(1096-1270)(8回とする場合も)も、宗教的動機は当然あったにしろ、その本質は政治的・領土的野心であったと言えるかもしれません。
 経済的問題、貧困・格差・不公平感などが根底にあり、それらが宗教・宗派間対立と結びついた(或いは結びつけられた)場合も多々あるでしょう。現代におけるポソ宗教戦争(1998-2001)、イスラム過激派・武装勢力による一連のテロリズムなども、そうした例と言えるかもしれません。また、パレスチナ問題(ユダヤ教のイスラエルとイスラム教のパレスチナ人との間の問題である)、北アイルランド問題(宗教対立ではないがイギリスへの帰属を望む側がプロテスタント主体、独立を望む側がカトリック主体と言う側面を持つ)、スリランカ内戦(多数派シンハラ人に対する少数派タミル人の独立運動だがシンハラ人は仏教主体、タミル人はヒンドゥー教徒が多い言う側面がある)、シリア内戦(イスラム教スンニ派の反政府勢力とイスラム教アラウィ派の政権との対立と言う図式)等、政治的対立に、宗教・宗派が絡んでいる問題は、現在に於いても非常に多い。
 確かにここに挙げた数々の戦争・紛争の根本原因が宗教ではないとしても、やはり、「この地球上で一番多くの人を殺したもの。それが宗教だ」の言葉に説得力を感じてしまうのは、見当違いのことでありましょうか。
 宗教は、一般的に言って、人智を超えた絶対的存在に対する疑念を挟まぬ絶対的確信、がその信仰の根本にある、と私には見えます。この「絶対」性が他者(異教・異宗派)を認めない、不寛容(イントレランス)へと繋がりやすく、その宗教の持つ性質が、政治的対立或いは権力抗争などに利用されやすい、或いはそうした対立・抗争に巻き込まれやすいという側面となっているように思える。そして、歴史的にみると、一旦政治的或いは権力的対立と宗教が結びつくと(結びつけられると)、その性質ゆえ、その対立(戦争)は可也凄惨な様相を帯びてくる。
 現代においても、政治的問題や経済格差、差別など、人と人との対立を生みやすい問題に、宗教を結びつけ排他的行為(戦争)に利用しようと言う勢力と繋がり易い、ある種の危うさを、宗教は変わらずに内包しているように思えます。そして歴史的に見るのと同様、排他的行為(戦争)に宗教が結びついたとき(結びつけられたとき)、その行為は残酷なものとなり易い。
 この様な、宗教の持つ性質が、「この地球上で一番多くの人を殺したもの。それが宗教だ」の言葉に説得力を与えているように、思えます。
 異なるものを受け入れる寛容は、人類とは無縁のものなのでしょうか。
(以上は、宗教の持つ一般的性質及び宗教と政治的或いは社会的問題との関係性について私見を述べたもので、特定の宗教また宗教そのものを不寛容なもの危ういものと言うものではありません)

 大分話がそれてしまいましたね。音楽を語るページですよ、ここは。
 ディーサイド。その過激なスタンスから、聴かず嫌いになっている方は多いのでは?確かに彼らの写真は余りにコワイし、ジャケットはなんかアブナイしね。でも、その高度な演奏力に支えられたサウンドは完成度も高く聴き応え十分。この「リージョン」で聴かれる、ソリッドなギターもドラムも、グレンの気合溢れるディストーション・ヴォイスも、デス・メタル勃興期の熱と凄味を、生々しく今に伝えてくれます。
 絶え間なく叩き付けるように繰り出されるリフに、息苦しさを覚える程の、圧倒的緊迫感に満ちた作品。メタルの極北デス・メタルの、Evilな極光(オーロラ)。

 2013 7/30

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お気に入り度:♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭♭ 暗度:♭♭♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭ ポップ度:♭
〔フロリダ出身四人組。グレンはイエスを超えるため彼の亡くなったと同じ33歳になったら自殺すると公言しておりましたが、後あれは酔っぱらいの戯言だと否定し、現在も元気に活動中。この辺りからグレンのアンチクライスト、サタニストというアティテュードについては疑念を挟む声もあると聞く。
話は違いますが、ジャケットの金属構造物は何を表しているのでしょう。表は歪んでいますが裏ジャケでは形が良く解る。逆さ十字三つと変形した逆さの星形が二つ組み合わされたように見ます。逆十字も逆さペンタグラム(5点が繋がった星形)もサタニズムと関連付けられる場合があります(逆十字は本来謙虚さの象徴)。そういう事なのでしょうか?でも星形は二つとも一か所繋がっていないので厳密にはペンタグラムでないよな〕

*DEICIDE:ラテン語の「神deus」と、「殺害cide」との合成語
*LEGION:古代ローマの軍団、あるいは単に軍隊、軍団
*デス・メタル古参ビッグ・ネーム:他には、草創期から続くモービッド・エンジェル(1983年結成)、オビチュアリー(1985年結成)またカンニバル・コープス(1988年結成)など
*逆十字:聖ペトロ十字。元来は、イエスの使徒ペトロが磔刑に処されるとき、イエスと同じ頭の向きで処刑されるに値しないと頭を下にすることを望んだと言う故事に基づいた、謙虚さの印。のちアンチクライスト、サタニズム(悪魔崇拝)の象徴とされるようにもなる
*ユグノー戦争:フランスにおけるカトリック・プロテスタント両教徒間の対立と貴族の勢力争いが結びつき内乱へ。のちスペイン(カトリック側)とイギリス(プロテスタント側)の干渉も呼ぶ。1572年カトリック教徒によるサン・バルテルミの虐殺事件が起き激化。1598年アンリ4世によるナントの勅令によりプロテスタントに大幅な信教の自由が与えられ終結。ユグノーとはフランスのカルヴァン派(プロテスタントの一派)信徒のこと
*オランダ独立戦争:スペイン支配下ネーデルラントの独立戦争。フェリペ二世によるプロテスタント信者迫害や重税に抗し開戦。1581年に北部7州がユトレヒト同盟を結びネーデルラント連邦共和国として独立し1648年ウェストファリア条約により承認される(現在のオランダの原型)。カトリックの多かった南部10州はスペインに帰順(凡そ現在のベルギー、ルクセンブルク)。八十年戦争とも。因みにネーデルラント連邦共和国はホラント州がもっとも有力であったためホラント(日本ではオランダ)とも呼ばれ、これが現代にも続いている
*三十年戦争:当初はドイツ新旧両教徒の内戦であったが、旧教側にスペイン、新教側にデンマーク、スウェーデン、フランスが加担する形で外国勢力介入。これにより政治的対立の側面が強くなる。最終的にはオーストリアとスペインのハプスブルク家とフランスのブルボン家との対抗関係が主となる。ウェストファリア条約で終結
*ポソ宗教戦争:インドネシア、スラウェシ州ポソでキリスト教徒とイスラム教徒の間で起こり、1000人以上が死亡、数万人が難民となった。土着キリスト教徒と移住イスラム教徒との間の経済的格差への不満が遠因にあるとされる。停戦合意後も緊張状態は継続し散発的に事件が発生している
*宗教の絡んだ紛争:日本でも座主をめぐる派閥争いから発展し200年余り続いた「山門寺門の抗争」(天台宗の延暦寺(山門)と園城寺(三井寺(寺門))との抗争)、法華宗徒(日蓮宗)と一向宗徒(浄土真宗)との衝突した「法華一揆」(1532-1536)(のち延暦寺宗徒による「天文法華の乱」で衰退)、戦国時代諸地域で起きた「一向一揆」(浄土真宗本願寺派信徒主導の支配層に対する武装蜂起・闘争)などなどあった

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