MYSTIC RHYTHMS

Heavysphere その十四

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メタル、ハード・ロック、プログレそしてクラシック等について語らせて頂きます  Profile

HAVOK:タイム・イズ・アップ
WARLORD:デリヴァー・アス
WAGNER/MAAZEL:言葉の無い「指環」(ニーベルングの指環)
ORANGE GOBLIN:タイム・トラヴェリング・ブルース
CAPTAIN BEYOND:キャプテン・ビヨンド
LOUDNESS:サンダー・イン・ジ・イースト
BERNIE TOEME:エレクトリック・ジプシーズ

§索引
§凡例
§ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い


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タイム・イズ・アップ/ハヴォック order

TIME IS UP
TIME IS UP/HAVOK (2011)

 「はい、時間切れです(Time is up)」と12時を指す時計を示しながら、ガヴェルを打ち下ろそうとしている死神さん(と思うけど)のジャケットが少しコミカルで、手を出しにくかったこの作品。でも、聴いてよかった。ジャケット見て引いてたら勿体ない、極上のスラッシュ・メタル・アルバムだ。
 バンドは、コロラド州デンヴァー出身の若手。本作当時はまだ二十代(23歳から26歳)。しかし、内容的には1980年代から1990年代頃の、元気いっぱい、勢い余ってレコードがぶち割れそうだった、あの頃のスラッシュだ。若きメタリカやスレイヤー或いはエクソダス、デストラクションなどなどのあの「音」だ。勿論、こういった連中のコピーでも真似でもない、彼らの「音」となっているのは聴けば分かるが、でも、メタルおじさんには懐かしさも感じさせる作品なのである。

 冒頭触れた、コミカルなジャケ(Halseycaustさん画)だが、死神さんの示す時計の針は、稲妻走る窓の外が暗いのでおそらく深夜12時を指している。バンド名HAVOKが「破壊、荒廃、大混乱」等を意味する「Havoc」に若し由来するとすれば、この深夜12時は、核戦争の開始或いは人類滅亡を意味するものなのであろうと思われるが、如何なのであろう。その辺りの事は、調べても出てこないので、推測するしかないが(見当外れの推測だったらごめんなさい)。「HAVOK」と言う同名のメタル・バンドはドイツやイタリアにも存在するし、マーベルのヒーローにも同じ綴りのHavokさんがいるし、固有の意味があるのかもしれない。でも、私には分からない。

 その名の由来が何であれ、良いバンドである。演奏のレヴェルも全体に高いし、楽曲はよく練られて突進しながらも単調には陥らない。プロダクションも悪くない。その辺り、ヴォーカルとサイド・ギターを担当し、作曲もプロデュースもレコーディング・エンジニアもこなしている、デイヴィッド・サンチェス(David Sanchez)と言う人物の能力の高さなのかもしれない。荒々しい前作(デビュー作)も聴き易い次作もよくできた内容でお勧めできるが、全体的なクォリティーの高さで、私としては本作を推したい。何方かと言えばカラッとした空気で、左程に暗くもない。エクストリーム・メタル・ビギナーの方には、比較的聴き易いと思う。だが、なぜか日本盤がリリースされない。オレンジ・ゴブリン同様Wikipediaにも彼らの日本語版が無い。非常にネンザンだ。
 しかし、アートワークは正直頂けない。おそらくは、彼らがリスペクトしているであろう1980・1990年代頃のスラッシュ・バンドのアルバムを意識しての「態と」ダサいジャケット(ディスりではない)なのだとは思うが、これで聴く意欲を削がれる人も多いかもしれない。が、これはこういうスタイルなのだ、と是非割り切って頂きたい。そんな意図など全くないのに、結果的にダサくなってしまったスコーピオンズの「フライ・トゥー・レインボー」やライオットの「NARITA(成田)」またスレイヤーの「ショウ・ノー・マーシー」等とは違うのである(これもディスりではありません。作品は大好きです)。

 COVID-19オーヴァーシュートを防ぐため、大分遅めで大分緩めであるが緊急事態宣言が出された。こちらは「時間切れです」とならない様、皆でガンバリましょう。対策は長期戦になるであろうから、焦らず、気長に、そして冷静に。

 2020 4/8

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お気に入り度:♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭ ポップ度:♭♭
〔2004年にサンチェスを中心に結成。2009年にアルバム・デビュー。2ndアルバムである本作は1stからリード・ギターとドラムが代わり、次作ではベースが変わっている。やはり唯一の創設メンバーであるサンチェスがバンドの核なのであろう。なお、彼らのアルバムでマスタリングを担当しているのは、あの名ギタリストジェームズ・マーフィーだ。其れと例のジャケットだがアートワーク担当のHalseycaust(Halsey Swain)さんは可也メタル系ジャケットを描いておられ髑髏の登場が多い〕

*ガヴェル(gavel):裁判や議会(アメリカ)或いはオークションなどで使用される木槌
*エクストリーム・メタル:ヘヴィ・メタルの中でも取り分け激しいスラッシュ・メタルやデス・メタルなどを指す。エクストリームは「過激」「極端」等の意
*スラッシュのアートワーク:初期の頃は皆予算が無かったので無名アーティスト或いは素人さんに依頼した絵をジャケットに使ったのでダサくなってしまったとも言われている。しかしいつの間にやらこの「ダサ」さがスタイルとして定着した感がある。スラッシュに限らずヘヴィ・メタルは一般にジャケットがダサいイメージがある。残念ながら否定はできないが、カッコいいのやキレイなジャケもあるぞ
*NARITA:ライオットのHR/HM史上に残る名盤だが、ジャケット的には「超迷盤」としてダサいジャケットの代名詞的存在となっている。でもこれは当時の三里塚闘争(成田闘争。成田空港建設反対闘争)を風刺した至って真面目なジャケットなのである

新型コロナウイルスと闘う日本の医療従事者と医療を守ろう (Change.org)
コロナ専門家有志の会

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デリヴァー・アス/ウォーロード order

DELIVER US
DELIVER US/WARLORD (1983)

 知らずに聴けば、イギリスかスウェーデン辺りのバンドと思うであろう。この湿りと叙情と、クサイほどの濃厚なドラマ性。でも、ロスアンゼルス出身の生粋のアメリカン・バンドだ。ただ彼らは、レインボーはじめ、1970・1980年代のヨーロピアン・バンドの大ファンで、クラシックを学んだメンバーもいるそうだ。楽曲を聴けば、頷ける話である。
 なお、本作のオリジナルは6曲入りで、ミニ・アルバム或いはEP的扱いを受けるが、メンバーによれば、自分たちの「1st」フルレンス・アルバムと言う認識だと言う(日本盤は4曲目にヴォーナス・トラックが入っていた)。

 どの曲も、よく練られてハイなレヴェルであるが、三曲目六曲目等の怒涛の展開は、特筆もの。ああ、これを正統ヘヴィ・メタルと言わずして何としょう。「正統」とは何ぞや?と聞かれても困るが、まだヘヴィ・メタルと言う音楽が先鋭化もせず細分化もされていなかった時代、まだハード・ロックとの明確な差異も少なく混然としていた時代、謂わば様々に枝分かれする以前の「幹」の時代のものと言えるような音楽である。ジューダス・プリースト直系、と言う言い方をしても強ち遠くは無い様な、そんな音楽。パワー・メタルもスラッシュ・メタルも、みんなここから生まれたんだよと、そう言えるような「ヘヴィ・メタル」だ。

 こんな素晴らしいバンド・作品なのに、どうも全く日の目を見なかった。2012年に再リリースされるまで長年廃盤であった所為もあるだろうが、それ以前に、どうもなんか胡散臭いB級感が漂い手が出し難い雰囲気を当初より醸していたのだ、彼らが。
 四人のメンバーは其々、ダミアン・キング(vo)、デストロイヤー(g)・レイヴン(b)(同一人)、サンダー・チャイルド(ds)そしてセンチネル(key)と、ヴェノムにも通じるようなステージ・ネームを付けている。しかも、ステージ・ネームがありながらライヴは一切行っていない。どうです、胡散臭いでしょう。果たして実体があるのやらないのやら、それすら分からないという、謎のバンドだったのだ。ジャケットも、ちょっと諸星大二郎さんの漫画っぽい怪しげなイキフンで、右にはなんか天使がフラダンス踊ってるし。大してお小遣いも持っていない、当時のメタル・キッズは、なかなか手が出せないアルバムだった。
 のちに明らかになるが、このバンドはサンダー・チャイルドことマーク・ゾンダー(1988年からフェイツ・ウォーニングで活躍)と、デストロイヤー&レイヴンことウィリアム・J・ツァミス二人が作り上げたプロジェクトであった。この二人が、他にメンバーを集い、恰も実在する完全なるバンドであるかのように振舞ったのである。マークによると「レーベルの為に」。レーベルとは、彼らを見出したメタル・ブレイドである。
 本作当時、既に独特なセンスを発揮しているマークは24歳(1959年生)、ウィリアムは22歳(1961年生)だが、作曲もバンドのコンセプトもウィリアムによるもので、彼がこのウォーロードの核であると言えるのだろう。
 なおこの翌年には、ファンにライヴを見て貰うため無観客の疑似ライヴ・ヴィデオ&サウンドトラック・アルバムもリリースしている。彼らが実際にライヴを行えなかったのは、シンガーの技量的な問題と、レーベルからのサポートが無かったためだそうだ。

 バンドは1986年に解散するが、2002年にスウェーデンの「正統派」メタル、ハンマーフォールのヴォーカリスト、ヨアキム・カンスを迎えて再結成されアルバムをリリースした。ヨアキムは、ウォーロードの熱烈なファンであったという事である(ハンマーフォールは1stアルバムで本作の曲をカヴァーしている)。その後も2013年にアルバムをリリースしている。ヨーロッパでは、根強い人気があるらしいが、ウィキペディアに日本語版が無い。ネンザン。

 2020 2/22

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お気に入り度:♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔WARLORDは軍閥とか将軍の意で、日本では戦国大名などがこれに当たる。当初の日本盤はFEMS(SMS)レーベルから出ていた(レーベルの第一弾だとか)が、あのバーニー・トーメと同じである。あの頃は何でもかんでもリリースされていたのだね。メタラーにとっては黄金時代だった〕

・参照:HMV&BOOKS online「伝説のUSメタル・バンド WARLORD」(2015年6月25日)

*メタル・ブレイド:1982年当時21歳のブライアン・スレイゲルによって設立されたアメリカのレコード会社。コンピレーション・アルバム「METAL MASSACRE」(全10作)で新人メタル・バンドを次々世に送り出した。そのバンドの中にはウォーロードの他にもラット、メタリカスレイヤー、オーヴァーキル、ヴァージン・スティール、リジー・ボーデン、ヴォイヴォド、フェイツ・ウォーニング、メタル・チャーチ、ヘルハマー、ポゼスト、メイヘム、ダーク・エンジェルなどなどと、後々活躍する内外のアーティストが多数含まれる

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言葉の無い「指環」/ロリン・マゼール(ニーベルングの指環/リヒャルト・ワーグナー) order

The RING Without Words
DER "RING" OHNE WORTE/LORIN MAAZEL, BERLINER PHILHARMONIKER (1988)
DER RING DES NIBELUNGEN/RICHARD WAGNER

 私は、クラシック音楽はジャンル問わず大抵好きで、有名どころの音楽家もタイプ問わず大抵好きだ。だが、例外的に歌ものが苦手。歌曲やオペラ、特にオペラが大の苦手である。PCやスマフォそしてHDには数千のクラシックの曲が入っているが、オペラはたった三曲しか入っていない。モーツァルトの「後宮からの誘拐」と「魔笛」、そしてワーグナーの「ラインの黄金」のみ。しかも、モーツァルトの方は二三回聴いたのみ、ワーグナーはまだ一度も通しで聴いていないという有様。どうも、私にとってオペラはほぼお芝居で、音楽としては捉え難い様だ。
 私の好きな音楽の三本柱は、ヘヴィ・メタル、ハード・ロックそしてクラシックだが、何れも演奏中心の音楽である。そう、私は演奏を聴くのが好きなのだ。高度なテクニックを持ったプレーヤーの、その演奏に浸りたいのである。だから、プログレッシブ・ロックも好きだし、フュージョンも結構好きだ。
 そんな嗜好の私なので、大好きなクラシックも、歌のあるものはバッハの宗教曲やシューベルトの歌曲など一部を除きほぼ聴かない。なので、オペラがその作品の中心である音楽家はほぼ知らない。ロッシーニやヴェルディ、そしてプッチーニなどは全くと言ってよい程知らないし、ワーグナーも知らないと言っていい。オペラは残していないが、歌が多く入るマーラーのその交響曲も苦手だ。勿論聴くことは聴くが、何時も聴いているうちに何時の間にか曲が終わってしまう。彼らの作品を理解できるようになれば、私の音楽世界ももっと広がり深まるだろうにと、とても勿体なく思う。でも、苦手だったブラームスも今は大好きになったので、何時か好きになれる日が来るかもしれない。そういう意味で言えば、とても楽しみである。

 で、前置きが長くなったが、この作品だ。これは、本アルバムの副題「ORCHESTRAL HIGHLIGHTS FROM RING CYCLE」とある様に、リヒャルト・ワーグナー(1813-1883)の、「ラインの黄金」、「ワルキューレ」、「ジークフリート」そして「神々の黄昏」という連作楽劇「ニーベルングの指環」のハイライトを、管弦楽曲に編曲したものである。それもタイトルにある様に、言葉詰まり歌無しで。「ニーベルングの指環」(略して「指環」)は、一作一夜の上演、つまり全部で連続四夜に渡り上演されるなんとも長大・壮大な作品。一作3-4時間ほどの上演時間であるから、CDで聴くだけでも、私の様な根性なしにはコワくって手が出せない。オペラ(ワーグナーは楽劇と呼んだ)なので当然物語であるが、簡単に言えば、それを持つ者に世界支配を可能とさせる黄金の指環をめぐる雄大な叙事詩、という今で言えばSFファンタジーかロールプレイング・ゲームの様なもの(らしい)。ワーグナーはこれを、35歳から61歳までの26年に渡り書き続けた(作詞作曲だ)。それも、スゴイ。
 この音楽史上最大級の超々大作である「指環」を、CD一枚約70分にぎゅっと纏めたのが、今回紹介する本アルバムである。これは、ワーグナーに興味はありながらもその歌の部分や長さに引っ掛って聴くことが叶わない私の様な者には打ってつけの作品だ。管弦楽曲はクラシック音楽の中で最もヘヴィなもので、私の大好物だし。しかも、演奏は天下のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。編曲は指揮者のロリン・マゼール(1930-2014)。編曲に当たっては、全体を切れ目なく続け、楽劇の最初の音で始まり最後の音で終わる。元の作品中歌なしの部分はほとんど使い、歌が必要な部分は楽器で補うが、ワーグナーが書いた音以外は一切付け加えない、等の原則を設けたそうだ。ご本人がそのまま、指揮も行っている。
 全編の構成は以下の通りで、これらの曲がすべて、途切れることなく続く。

≪ラインの黄金≫
かくてラインの「緑色の黄昏」が始まる
ヴァルハラ城への神々の入場
地下の国のニーベルハイムとこびとたち
雷神ドンナーが岩山に登り、力強く槌を打つ

≪ワルキューレ≫
我らは彼の愛の眼差しを見る
戦い
ヴォータンの怒り
ワルキューレの騎行
ヴォータンと愛する娘ブリュンヒルデとの別れ

≪ジークフリート≫
ミーメの恐れ
魔法の剣を鍛えるジークフリート
森をさまようジークフリート
大蛇退治
大蛇の悲嘆

≪神々の黄昏≫
ジークフリートとブリュンヒルデを包む愛の光
ジークフリートのラインの旅
ハーゲンの呼びかけ
ジークフリートとラインの娘たち
ジークフリートの死と葬送行進曲
ブリュンヒルデの自己犠牲

 ワーグナーを若い頃から高く評価していたフランツ・リストが創始者であるところの、交響詩のように聴くことが出来る。それも、可也壮大な。切れ目なく続く音楽を編みまた操るマゼールも見事だが、ベルリン・フィルの演奏も重厚で、誠にヘヴィでなかなかにメタリック。メタル馬鹿のメタル耳には、非常にハマる。
 でも、こうしたワーグナーの聴き方は、ワグネリアン(熱狂的ワーグナー・ファン)の方々からすれば、邪道中の邪道で、お叱りを受けるかもしれない。こうしたワーグナーの「良いトコ取り」的な作品も、我慢ならんものかもしれない。しかし、これを聴くことにより、ワーグナーかっこいい、と思ったのである。どうか広いお心で、お許しを願いたい。

 私にとって、クラシックの高い敷居を下げてくれたのはグレン・グールドであったが、ワーグナーの高い敷居を下げてくれるのは、この作品となるかもしれない。

 2020 1/13

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お気に入り度:♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭
〔マゼールはフランス生まれのアメリカ(生後すぐに移住した)の指揮者・作曲家。録音は1987年12月1、3、4日。場所はベルリン(フィルハーモニー)。本作はマゼールの指揮でも作曲でも代表的存在で自身指揮の公演も行い、他指揮者による公演・録音もある。アルバムのセールスも可也良かったらしい。私の様な人間は、世界にも多いのであろう、きっと〕

*楽劇(musikdrama):ワーグナー創始のオペラのスタイルで音楽と劇を緊密に融合させた様式
*交響詩:標題音楽の一つで、文学的・絵画的内容を楽曲で表現したもの。交響曲と異なり決まりはなく形式は自由。スタイルとしての完成者がリストとされる。リスト「前奏曲」、スメタナ「わが祖国」、リヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラかく語りき」、ドビュッシー「海」、シベリウス「フィンランディア」等など、19世紀に多く作られた
*リストとワーグナー:この二方は関係が深く二歳年長のリストはワーグナーの不遇時代に援助している。ワーグナーもリストを尊敬していたらしい。が、後にワーグナーはリストの弟子である指揮者ハンス・フォン・ビューローと結婚していたリストの次女コジマと恋愛関係となり(のち結婚)リストと絶縁状態となったりした(のち和解)

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タイム・トラベリング・ブルース/オレンジ・ゴブリン order

TIME TRAVELLING BLUES
TIME TRAVELLING BLUES/ORANGE GOBLIN (1998)

 所謂「ストーナー・ロック」だ。ストーナー(stonner)とは、麻薬の常習者の意。要するに、麻薬(コカイン、マリファナ、LSD(合成麻薬)など)と関係性の非常に強かった、1960年代から1970年代ロック・ミュージックからの影響を受けたヘヴィ・ミュージックの一スタイルである。私的な感覚で言わせて頂ければ、サウンド的にはブルース系ハード・ロックの括りである。初期レッド・ツェッペリンや初期ブラック・サバスの音楽に近しい、グルーヴ感たっぷりにぶっとい音で荒くれる音楽。そしてそれに、中期ザ・ビートルズやジェファーソン・エアプレイン、ジミ・ヘンドリックス、またクリーム或いはアイアン・バタフライ的なサイケデリック感覚が混ざり合い、カオティックな様相を呈している。
 こうした感じ、当アルバム―2ndアルバム―のアート・ワークを見て頂ければ、或る程度イキフン(雰囲気)は伝わるのではなかろうか。レーハー(ハーレー・ダビッドソン)のクーバイ(オートバイク)にまだがったグラサン(サングラス)のチャンネエ(おねえちゃん)と、カラフルにくねった「オレンジ色の小鬼」のロゴ。私はこれを見て1960年代のバンドのアルバムだと、しばらくの間そう思い込んでいた。正にサイケ系ロックだ。然し、聴いてクリビツ(ビックリ)、音は1990年代そのもの。演奏力も高いし、プロダクションも良好。重低音が、お腹に響いて、非常に心地良い。

 冒頭、初期ブラック・サバスに近しい音楽と書いたが、そういった意味で言えば、「ドゥーム・メタル」と同じである。しかし、あちらはサバスのオカルト的なおどろおどろしい部分が強調され、遅さや重さそして暗鬱さが前面に押し出されるが、こちらはそういった要素はやや希薄で、サバスの重いグルーブ感やブルース・センスまた薬物的な要素が顕著。よって、左程に「陰性」ではない。こうしたところから、全体的にヘヴィ・メタルではなくハード・ロックの系統に、私は感じるのである(まったくの私見)。特に、本バンドは結構「陽性」。大分以前に紹介したカテドラルなどは、こうしたストーナー・ロックとドゥーム・メタルの中間的なスタイルで、「ストーナー・ドゥーム」等と表現されたりもする。

 上で、アート・ワークに触れたけれど、これだけ見れば非常にアメリカンな印象を受ける。が、オレンジ・ゴブリンはバリバリのイングリッシュでロンドン出身だ。1995年結成という事で、結構ベテランだが、二十数年を経た今も創立メンバーでまんま継続しているという、ロック界では珍しい仲良しグループ(2004年にギタリストが一人抜けたけど)。
 楽器隊は、失礼ながら突出したプレーヤーはいない。が、演奏はなかなか整合感もあり、ラフな楽曲ながら締りがあり崩れが無い。リズム隊はうねる様なグルーヴをヘヴィに流出させ、ツェッペリンやサバスを聴いてきた世代でも十分満足させてくれるだろうと思う。
 私はこのジャンル、最近齧り始めたばかりの未熟者でエラそうなことは書けないが、それでも聴いた範囲、同ジャンルのカイアス(KYUSS)やモンスター・マグネットなどに比べたら、やはりブリティッシュな重厚感や湿りを感じる。アルバムは、如何にものバイクのエンジン音で幕を開け、泥臭いヘヴィ・ロックが展開して行くが、何所かに仄かな叙情が漂い、欧州的志向の強い私には、非常に好もしい。

 1960代・1970年代のクラシック・ロックも好きだと言う方、お薦めである。そうしたロック、プリミティヴで今よりもっと自由で荒々しく、反社会的で戦闘的だったロックの、リヴァイヴァルとも言える。題名通り、時間旅行ブルース、が味わえると思う。
 しかし、彼ら日本では人気が無い様で、国内盤は廃盤、ウィキペディアも日本語版が無い。カナシイ。

 2020 1/5

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お気に入り度:♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭ 技巧度:♭♭♭ 旋律度:♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔グループ名は元はアワ・ホーンテッド・キングダムであったが1997年に改名。カテドラルのリー・ドリアン主催のレーヴェルと契約し1996年にシングル・デビュー。このシングルは同レーヴェルのエレクトリック・ウィザードと片面づつで、エレクトリック・ウィザードの方のジャケットはあのブラック・ウィドウのステージ写真だ。ちなみにエレクトリック・ウィザードは可也暗鬱でドゥーム・メタル的〕

*ストーナー・ロック:ストーナー・メタルとも。全体に余りアップ・テンポな曲はなく重いグルーヴ感が特徴である。ブラック・サバスの「マスター・オブ・リアリティ」が元祖の一つともされる
*ドゥーム・メタル:初期ブラック・サバスに顕著な、遅さ・重さ、オカルティズム、終末観・破滅観などを前面に押し出したヘヴィ・メタルの一スタイル
*サイケデリック・ロック:薬物による幻覚・トリップ感などを表現したロック音楽。1960年台後半から1970年代前半くらいが盛期
*麻薬:鎮痛・麻酔作用があり依存性を生じやすい薬物の総称

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★●キャプテン・ビヨンド/キャプテン・ビヨンド order

CAPTAIN BEYOND
CAPTAIN BEYOND/CAPTAIN BEYOND (1972)

 当時の「スーパー・グループ」である。元ディープ・パープルのヴォーカリスト、ロッド・エヴァンス、元アイアン・バタフライのギタリスト、ラリー・ラインハルトとベーシストのリー・ドーマン、そして元ジョニー・ウィンター・バンドのドラマー、ボビー・コールドウェル。今聞くと、ディープ・パープル以外は「?」が付いてしまうが、アイアン・バタフライはサイケデリック・ロックのトップ・バンドの一つで、2nd「イン-ア-ガダ-ダ-ヴィダ」(1968)を3,000万枚も売ったバンドだし、ジョニー・ウィンターはCBSと巨額の契約をして「100万ドルのギタリスト」と称された当時人気のブルース系ギタリスト。十分に「スーパー」だったのだ。
 が、しかし、同時期同じ様にスーパー・グループと呼ばれた、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)やバッド・カンパニーの様な成功は、手にすることが出来なった。

 1968年から翌年にかけ、ディープ・パープルで三枚のアルバムに参加したのち、ハード志向のバンドに合わないとの判断で解雇されたロッドは、アメリカに渡り、1971年に解散したアイアン・バタフライのラリー、リーと「ライヴ/ジョニー・ウィンター・アンド」(1971)に参加していたボビーらと共にこの、キャプテン・ビヨンドを結成した。そして、ボビーがライヴに参加した縁で、デュアン・オールマンの紹介によりカプリコーン・レコードと契約し、1972年に本作でデビューしたのである。しかし、残念ながら、売れなかった。
 本作に続き翌年には2ndアルバムもリリースされているが、ボビーは抜けており、その後ロッドも脱退(その後引退)したので、実質的にはこのアルバムで、キャプテン・ビヨンドは終わってしまったと言えると思う(私見です)。アメリカでの成功が叶わなかったと言うのが、根本の理由なのではないかと思うが、アメリカでのヒットを狙ったにも拘らず、作品は余りに欧州的で複雑なもの。ヨーロッパではファンを得、ディープ・パープル大好きな日本ではヒットしたが。
 確かに、ハード・ロックのコンセプト・アルバムとして素晴らしい作品ではあるけれど、一般大衆受けするような作品ではないと思う。第一期ディープ・パープルの所謂「アート・ロック」の発展形と言えるようなものだが、時代はもうレッド・ツェッペリンやディープ・パープル、そしてイエス、ELP、ピンク・フロイドなどが君臨する世界。スタイルとして何所か中途半端な印象を否めないアート・ロックに代わり、ハード・ロックとプログレッシブ・ロックと言う二大巨峰の時代である。ヒットしなかったのは、致し方の無いところかもしれない。ディープ・パープルだって、アート・ロックを捨ててハード・ロックに生まれ変わり、大ブレイクしたのだもの。
 もう一寸粘ってほしかったな、と言うのも正直なところではあるが、翌1973年にはクイーンがデビューしていることを思えば、これもまた致し方のないところかもしれない。アート性の強いハードなロックという事では、同路線とも言えるクイーンとは、失礼ながら洗練度が大分異なる。時代は、完全に新しく変ってしまったのだ。

 まあ、そういった時代変遷的な所は置いといて、一個の作品として見れば、ハード・ロックにプログレッシブ・ロックやサイケデリックな要素が混淆し、非常に面白い。キャッチーさを持ちながらも、プログレ的な紆余曲折がある。ロッドの歌も上手いし、当時まだ21歳のボビー(1951年生まれ)のスピードとキレとパワーのある正確なドラミングが本当に素晴らしい。手数・足数は多く変拍子もバリバリだが、一切の無駄が削ぎ落され、鍛え上げられた強靭な日本刀の様だ。ドラム好きにはたまらない(自分では全く叩けないけど)。ギターとベースは正直目立たないが、しっかりと堅固にヘヴィ・サウンドを構築し、存在感を持っている。YouTubeで当時のライヴ(Live in Montreux 1972)も見られるが、みんな上手い。
 セールスは振るわなかったが、商業的成功と作品の内容は必ずしも一致しない、の好例的アルバムの一つだ。

 なお、アルバムのクレジットだが、作曲はロッドとボビーの名のみになっているけれど、英語版ウィキペディアによると、実際は全メンバーによるものという事となっている。ラリーとリーの二名が元のバンド、アイアン・バタフライとの契約の関係により法的理由でクレジットされなかったらしい。
 クレジット通りの二人による作曲なのか、本当は全員によるものなのか実際の所は、私には不明だが、何れにしろ、曲は素晴らしい。上記のように、ハード・ロックの明快さと、プログレッシブ・ロックの変態性の香りがブレンドされ、絶妙である。

 2019 12/20

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お気に入り度:♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔本作は、前年10月にオートバイク事故で亡くなったデュアン・オールマンに捧げられている。バンドは1973年に解散したが、1976年に3rdアルバムをリリース。その後も解散・再結成を繰り返し今もボビーを中心に現役。ボビーは生年も名前も同じ歌手ボビー・コールドウェル(Bobby Coldwellの綴りも同じ)と間違えられるが、全くの別人である。なお、当バンドを脱退後音楽活動から退いたロッドは、英語版ウィキペディアによるとアメリカの病院で呼吸療法のディレクター(director of respiratory therapy)を1980年まで務めたという。そしてその後「偽ディープ・パープル」事件を引き起こすこととなる〕

*偽ディープ・パープル:1980年にロッドが全く関係のないメンバーを引き連れて、当時解散状態であった「ディープ・パープル」の名を用いてコンサートを行った。当然「本物」のディープ・パープル側から訴えられ多額の賠償を命じられ印税の権利も放棄させられた

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サンダー・イン・ジ・イースト/ラウドネス order


THUNDER IN THE EAST/LOUDNESS (1985)

 すぐれた音楽作品に、バンドの出身地域や国など一切関係するものではないのだが、なぜか私は洋楽専門で、日本のバンドはほとんど聴かずに来た。十代の頃、最初に出会ったハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドがKISSであった所為、なのかもしれない。
 とは言っても、まったく日本のアーティストを聴かなかった訳ではない。多少は聴いたのだが、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルと言う音楽に、力強さや迫力を強く求める傾向のある私には、どうも日本のバンドの音は、線が細くて馴染めなかった所がある。作品の完成度や個性或いは演奏技術などは、欧米のアーティストに決して引けを取るものではない事は分かっても、感覚的に馴染めなかったのだ。
 スポーツを見ていれば理解できると思うのだが、日本(或いは東アジア)の選手に比し、欧米の選手のプレイで、こんなの日本人にはできない、と思わせる様なものが多々ある。主にリストの強さなど、筋力的な部分だと思う。楽器演奏と言うのは身体を使うものなので、この筋力の違いと言うのは如実に音に現れる。特にハード・ロック/ヘヴィ・メタルの様な音楽は、基本体力勝負的な要素が強いので、この筋力の違いが音の違いとして非常に目立つ(殊にドラムやベース)。私の感じる欧米ミュージシャンと日本人ミュージシャンの音の違いは、楽器や録音機材・スタジオなどの違いによるものではなく、この「身体」の違いに起因するのではと思うのだが(まったくの私見です)、理由はどうあれ、上手いとか如何とかではなく、単純に欧米ミュージシャンの出す音は強く迫力があり、私は、如何もこうした辺りに非常に惹かれる。ので、洋楽専門となったのではなかろうかと、自己分析する次第である。

 そんな、音楽の「音」に関しては非常に欧米偏重の私だが、このバンドに関しては、まったく違和感が無い。バンドの名は、ラウドネス(意は、音の大きさ・強さ)。日本が世界に誇る、一流ロック・バンドである。おそらくは世界中どこへ行っても、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル好きならば、聴く聴かないは別として、まず知らぬ人はいないであろう様な、そうした存在だ。
 ラウドネスのデビューは古く、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの世界的なムーヴメントが巻き起こっていた当初の1981年(昭和56年)。もとは、レイジー(ディープ・パープルの楽曲に由来)というアイドル・バンドに所属していた、高崎晃(g)と樋口宗孝(ds)を中心に結成された。アイドル・バンドと言うと、失礼ながら、音楽的には如何なの?となりがちであるが、元々小学校の同級生やその友人たちが自ら結成したバンドで、「アイドル」は、当時非常に人気のあったイギリスのアイドル・バンド、ベイ・シティ・ローラーズの様にしたかった事務所側による後付けだ(レイジーを見出したのは、ムッシュことかまやつひろし)。メンバーは其々「スージー」「ミッシェル」「デイビー」「ファニー」「ポッキー」のニックネームを付けられ、アイドルとしてのその置かれた状況に大分戸惑ったという。実際、私も当時、お揃いの衣装と振付で演奏する彼らをテレビで何度も見たが、のちにこの中のメンバーがかなり本格的なメタル・バンドを結成したことを知り、驚いたのを覚えている。尚、レイジーのヴォーカルを務めていたのは「ドラゴンボール」で有名な、「ミッシェル」こと影山ヒロノブである。
 このレイジー解散後、「スージー」こと高崎晃と「デイビー」こと樋口宗孝が、高崎の幼馴染の山下昌良(b)と彼の推薦した二井原実(vo)と共にラウドネスを結成するのだが、高崎晃は、私の記憶が確かならば、レイジー時代からギター演奏の能力の高さは評判になっていた。

 アルバムであるが、当初より世界指向であったバンドの、本格的な海外(アメリカ)進出第一弾。前作「DISILLUSION 〜撃剣霊化〜」(1984)が当初日本語で歌われ、後に英語バージョンが出されたのとは異なり、ATCOレコードからの至上命令もあって当初より英語で歌われた。作品全体としても、前作はテクニカルで複雑な演奏・楽曲で、且つ何方かと言えば欧州的ウェット感やダークさが顕著であったのに対し、大分演奏も楽曲もシンプルで、全体にアメリカンなドライさや明るさが漂う。この辺りは、当時大人気のオジー・オズボーン・バンドの一連の作品をプロデュースしていた、プロデューサーのマックス・ノーマンの意向であったらしい。この変化に関しては、いろいろ見解はあるのであろうけれど、好みの問題は別として、これはこれで「正解」であるのではなかろうかと、個人的には思う。今回、本作同様、ラウドネスの名作とされる前作と、何方を紹介しようかと迷ったのだが、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルに余り馴染みのない方々を念頭に置いた本blogでは、やはり本作の方が相応しいように感じた。前作は十分に世界レヴェルに達した作品だと思うが、何方かと言えばコアなファン向きで、本作の方がより多くのリスナーに訴えかける内容の作品ではないかと考える。実際、このアルバムはアメリカのビルボード誌のアルバム・チャートで74位にまでなった。これは日本のロック・バンドでは「快挙」とされる成績である。ちなみに、国内ではオリコン4位になり、第27回レコード大賞の最優秀アルバム賞も受賞している。純粋なメタル・アルバムが、である。これも、「快挙」。
 売れればいい、という訳ではない。チャートの順位と作品の内容は、必ずしも比例関係にある訳ではない。しかし、芸術作品として、多くのリスナーに受け入れられるという事は、やはり素晴らしいことなのである。芸術は、人々の人生を豊穣へと導くものなのだから。

 前作についても少し触れたが、前作が世界レヴェルなら、本作は世界レヴェル・オーヴァーである。少なくもこの当時―1980年代前半頃―、雨後のタケノコ的に世界中でハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドが出現し、数え切れぬほどのアルバムがリリースされていたが、其の中で本作は、同年発表のハロウィンの「WALLS OF JERICO」、イングヴェイ・マルムスティーンの「MARCHING OUT」、セルティック・フロストの「TO MEGA THERION」、アンスラックスの「SPREADING THE DISEASE」、スレイヤーの「HELL AWAITS」、そしてメガデスのデビュー作「KILLING IS MY BUSINESS... AND BUSINESS IS GOOD!」等の名作に比しても遜色なく、他からは群を抜いていると思う。少なくも、私が知る中においては、そうである。あくまでも個人的見解だが、一般的評価ともそう大きくずれてはいないのではなかろうか。楽曲、演奏、プロダクション、どれをとってもハイなレヴェルだ。特に、高崎晃のギターは格が別。完全に、世界のスーパー・ギタリストの仲間入りを果たしている。タッピングを多用したそのプレイは、基礎的な部分を含めたテクニック、そしてセンス共に群を抜き、スピードや旋律、オリジナリティなど含め、そのギタリストとしての総合力は非常に高い。多くのハード・ロック/ヘヴィ・メタル系ギタリストが、彼を高く評価した或いは彼に影響を受けたとされているのも頷けるプレイである。
 その他全般、作品の完成度は高い。まあ完成度でいえば次作「SHADOWS OF WAR」(1986)、次次作「HURRICANE EYES」(1987)の方が高くまた聴き易くもあると思うが、ロックには重要な要素である所の「荒削り」感とのバランスは本作の方が非常によいと思う。何れにしろ、ビギナーの方々にも安心してお勧めできる内容だ。強いて難を言えば、そのパワフルでドスの効いた歌唱そのものは非常に素晴らしいのだが、ヴォーカルの英語が余りに「ジャパニーズ」であることが少々気になることくらいである(他人の英語をとやかく言える私ではないが―)。英語に関しては、二井原実はレコーディング前に一人先に渡米し、相当厳しいレッスンを受け、相当に苦労したという(彼は現在非常に英語が堪能だそうです)。

 でも、こんな世界的バンドの母体となったレイジーを見出した、かまやつさんは、やはりスゴイ人だったんだなと、改めて思う。

 2019 11/18

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お気に入り度:♭♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭
〔本作当時のメンバーは全員関西出身(高崎、二井原、山下は大阪、樋口は奈良)。旭日(あさひ)をイメージしたジャケット(上画像はアメリカ盤で日本盤と若干異なる)は、当時の彼らの心意気と内容の高さを示している様で純粋にデザインとしてインパクトがある。当時の海外ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ファンには新鮮・斬新であったであろう。30年を経た後もこのジャケットにサインをねだられることが多いそうだ。バンドは、この後多くのメンバー・チェンジを繰り返す事となるが、現在、49歳で亡くなった樋口宗孝を除きオリジナルのメンバーで活動中 official

*レイジー:かまやつさんに見出される切っ掛けになった演奏はディープ・パープルの「BURN」(なんとYouTubeで聴ける。かまやつさんベタ褒め)であるのを見ても、彼らが当初からハード志向であったことが窺える
*ベイ・シティ・ローラーズ:スコットランド出身のロック・バンド。タータンチェックの衣装に身を包み、1970年代にポップな楽曲でワールド・ワイドにヒットを連発。日本でも大大大人気であった
*ATCOレコード:アメリカの大手アトランティック・レコードのレーベル
*タッピング奏法:ピッキングする方(右利きなら右手)の指を指板上で弦に叩き付け音を出す奏法。ジャズでは1950年代からあったそうだがロックでは1970年代以降に一般化した
*SHADOWS OF WAR:米ソ冷戦只中であったのでアメリカではアルバム・タイトルが「LIGHTNING STRIKES」に改題されたリミックス盤となった(曲名・曲順も異なる)

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エレクトリック・ジプシーズ/バーニー・トーメ order

エレクトリック・ジプシーズ
ELECTRIC GYPSIES/BERNIE TORME (1983)

 なぜかは分からぬが、最近、急にこのアルバムの事を思い出し、無性に聴きたくなった。そして聴きながら、このバンド、バーニー・トーメをリーダーとする三人組のハード・ロック・バンド「バーニー・トーメ&エレクトリック・ジプシーズ」についてあれこれと調べるうち、バーニーが今年の3月17日―誕生日前日―に亡くなっていたことを知った。享年66。死因は、肺炎と言う。

 彼バーニー・トーメは、個性的で非常に優れたギタリストであった。だが、その実力の割には知名度は低い。元ディープ・パープルのイアン・ギランのバンドや、元ブラック・サバスオジー・オズボーンのバンド等、有名バンドへの参加もあったが、ソロ活動がメインであった所為もあるかもしれぬ。でも、同世代(二歳下)のウリ・ジョン・ロートも有名バンド(スコーピオンズ)からスタートし後にはソロ活動メインとなったが、知名度は可也ある。同じ様に有名バンド(シン・リジィ)に参加し後ソロ活動を続けた、同年齢のゲイリー・ムーアも、雲泥の差と言えるほどの知名度がある。金髪の毛先を虹色に染め、マフラーをなびかせ、如何にもロック・ミュージシャン然とした、そのルックスも良かったのだが―。まあ、ウリとゲイリーはロック界でもかなりの天才性とカリスマ性を持つ御仁なので、比較は意味を持たないかもしれないが。
 何れにしろ、バーニーをご存知の方の多くは、ギランとオジーの二バンドを通じてのことであろうと思われる。斯く言う私も、そうであった。レコードの帯に、「ギラン、オジー・オズボーン・バンドと渡り歩いた影のギター・ヒーロー」とあるのを見ても、世間一般での認識は、この二バンドに居たギタリストそれも知名度は余りないギタリスト、と言うものであったのであろう事が窺われる。

 バーニー(本名:Bernard Joseph Tormey)は、1952年にアイルランドの首都ダブリンで生まれた。若い頃既に自身のバンドで活動していた様だが、表舞台に立ったのはやはりギランへの参加であろう。1979年から1981年の三年間で、「ミスター・ユニヴァース」、「グローリー・ロード」そして「フューチャー・ショック」の三枚のアルバムと日本を含むワールド・ツアーに参加し、バンドの黄金期を支えた。しかし、ギランでの二作目三作目の頃は可也作品やバンドの状況には不満があったようで(レコード解説より)、それが直接の理由かどうか詳細は不明乍ら、バーニーはギランでの活動を終えた。そして、飛行機事故で亡くなったランディ・ローズに代わり、脱退の翌年、1982年3月(ランディがなくなったのは3月19日)オジー・オズボーンの依頼を受け「Speak of the Devil」ツアーに参加。しかし、オフなしで進行するツアーなんてクレイジーだ、耐えられない(レコードの解説より)、とバンドに残ることは無く、彼はソロ活動を本格化させ、ソロ第2弾の本作をリリースした(第1弾はギラン時代にリリース)。
 で、この彼のソロとしては二枚目となるアルバムが当時のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ムーヴメントの波に乗り、日本でもリリースされ、私の目にもとまった訳だが、はっきり言ってバーニーの事など、ギランやオジーのバンドに居たことぐらいしか知らなかった私が、なぜ、お金も無いのにこのアルバムを購入する気になったのか、今となっては不明だ。もう、全く忘却の彼方だ。当時の私に聞けるものなら、理由を聞きたい。まあ、おそらくはハード・ロック/ヘヴィ・メタルなら何でもいいから聴きたいという飢渇感にも似たものに充ちた当時の私だったからであろうと、そう推測は出来るが。
 しかしだ、理由はどうあれこのアルバムを選び聴いたその当時の若き私を、誉めてあげたい。それほど、素晴らしいプレイに充ちた佳作である。
 アルバム・タイトルを見て、分かる方には分かると思うのだが、彼はジミ・ヘンドリックス・フリークである。「エレクトリック・レディランド」(1968)と「バンド・オブ・ジプシーズ」(1970)というジミ・ヘンドリックスの二枚のアルバムのタイトルを、(多分)合成したタイトルと、そう推測される。ギターのスタイルも、自ら歌うのも、そのブルース・スピリット滲む楽曲も、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスを彷彿させる。三人バンド(エヴァートン・ウィリアムス(b)、フランク・ヌーン(ds)とのトリオ編成)であるのも、意識してのことなのかもしれない。ジミがプレイした三人編成に対する憧れがある、とも言っているし(レコード解説より)。
 内容は基本的に、ブルース基調のハード・ロックで、曲調はポップなものからパンキッシュなもの、ヘヴィなものからバラードまでヴァラエティに富む。全編で、バーニーのアーミングを多用した奔放でワイルドなギター・プレイが存分に堪能できる。(おそらくは)ノーマルのストラトキャスターを(おそらくは)ハイワット・アンプに直でぶっこみ(裏付けなしの私見)、驚くほどの骨太な音をかましている。スタイルとしては1970年代的なシンプルなものであるが、流石に1980年代に生きるプレイヤー、それなりにテクニックは高く(タッピングもこなす)、サウンドもヘヴィメタリックな装いを持つ。とはいっても、けっしてヘヴィ・メタルではない。あくまでそのスタイルの基盤は、ブルース・ロック。粗削りなギターが唸る、シンプルなハード・ロックン・ロールだ。そういう意味では、同郷のパイセンである名ギタリスト、ロリー・ギャラガーみたいである。

 私は本作と前作、及び本作の楽曲を含むライヴくらいしか、彼のプレイを知らぬが、他の人間がリーダーを務めるバンドの枠に収まる音楽性ではないことは、伝わってくる。彼は言う、「イアン・ギランやオジー・オズボーンのようなミュージシャンと一緒に組むのはたやすいことさ。(中略)僕は自分のやりたいことを、やりたいようにやるだけだ!ヘヴィ・ロックの固定観念なんて、クソくらえだ!!」(レコード解説より)。やはりバーニーは、1980年代のジミであり、ロリーだ。

 アルバム冒頭、西部劇「ローハイド」のSEから始まる「ワイルド・ウエスト」は名曲だが、個人的にはヘヴィで仄かに叙情漂う「ライトニング・ストライクス」が昔からお気に入り(テンポアップのライヴ・ヴァージョンもお薦め)。

 R.I.P

 2019 10/7

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お気に入り度:♭♭ ビギナーお薦め度:♭♭♭
重度:♭♭♭ 硬度:♭♭♭ 暗度:♭ 技巧度:♭♭♭♭ 旋律度:♭♭♭ ポップ度:♭♭♭
〔ちなみにだが、ギランでの後任ギタリストは現アイアン・メイデンのヤニック・ガーズ、オジー・バンドでの後任はのちナイト・レンジャーを結成するブラッド・ギルズ。皆名ギタリストだ。なお、少々チープな感が否めないジャケットは、前年リリースのシングル曲「Shoorah Shoorah」のPVからの流用である。このPVで、バーニーの後ろにはハイワットのアンプが置いてある。レコード裏ジャケットにもスペシャル・サンクスとしてHI-WATTの文字が見える〕

*アルバム・タイトル:ジミ・ヘンドリックスの「エレクトリック・レディランド」(1968)と「バンド・オブ・ジプシーズ」(1970)は、前者はエクスペリエンスとしての後者はジミとしてのそれぞれ最後の作品
*ギランからの脱退理由:英語版ウイキペディアでは、バンドの成功にもかかわらず資金面・金銭面で充分な報酬がなかった事に対する不満がバンド内にあった、様なことが書かれている
*ストラトキャスター、ハイワット:前者はフェンダー社製でエレクトリック・ギターの大ベストセラー。バーニーの愛器は写真やヴィデオで見る限り11点止めのピックガードでスモール・ヘッド。1960年代前半頃の製品と思われるが、ヴィンテージ・ギターの知識は皆無なので自信はない。後者はマーシャル、ヴォックスと並ぶブリティッシュ系アンプの老舗。ザ・フーの要請により開発。太くて歪みにくい音が特徴(らしい)
*ロリー・ギャラガー:アイルランド出身のブルース系名ロック・ギタリスト。塗装はげはげのストラトキャスターとチェックのシャツにデニムパンツのスタイルがトレードマーク。自ら書き歌いそして弾くのは、ジミやバーニーと同じだ
*ローハイド(Rawhide):1959-1965年にアメリカで放送されたTV西部劇。日本でも同時期に放送され大人気。若きクリント・イーストウッドも出演

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