MYSTIC RHYTHMS

「ヘヴィ・スフィアー」ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い

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ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い

 ハード・ロックとヘヴィ・メタル(ヘビー・メタル、ヘビメタ)。どこが違うの?とお思いの方は多いのではないでしょうか。新聞等でも、可也曖昧な使われ方をしているのを見かけます(これら音楽が新聞記事に取り上げられる事自体、滅多に御座いませんが)。そこで、私見ではありますが、少々、この二つの音楽の違いにつき、解説させて頂きたいと思います。
 ハード・ロックとヘヴィ・メタル。この二つ、"HR/HM(ハード・ロック/ヘヴィ・メタル)"と表記される事も多く、非常に近しい間柄・関係ではありますが、明かに異なるものです。特殊化の度合いが異なる、と言えるでしょうか。
 以下に、ハード・ロックとヘヴィ・メタルをそれぞれ具体的に解説。

 先ずはHard Rock。ハード・ロックは、読んで字の如く、「ハード」なロック。要するに、ロック音楽の持つ様々な要素のうち、ハード、ヘヴィ、アグレッシヴ等と言う部分を強調する方向へ少し特殊化したものです。よって、まだロック音楽の持つ一般的性質が濃厚です。ブルース基調であり、アコウスティック楽器(ギター、ピアノ、ストリングス等)を多く用いたり、ポップな曲やスロー・バラードがあり等、楽曲的にバラエティに富んでいます。また、歌詞は、「車と女の子とお酒とドラッグ」がメインのテーマとなることが多く、その多くがラヴ・ソングで有る等、初期ロックン・ロールの持つ性質を色濃く残しています(プログレッシブ・ハード・ロックは例外的)。全体にノリ重視で有る為、さほど速くは無く、所謂「横揺れ」です。またグルーブ感(機械的ではない、人間的な雰囲気・ノリ、とでも言えましょうか)が強いのも特徴です。特殊化の度合いが少ない分柔軟性があり、形・形式への拘りは比較的弱い。陽性度高。服装はラフで自由でカラフル。
 サブ・ジャンルとしては、プログレッシブ・ロック的要素を取り込んだプログレッシブ・ハード・ロック、ポップな要素を全面に出したメロディアス・ハード・ロック、1960・1970年代的ブルース、サイケデリック色の濃いストーナー・ロック等のサブジャンルがありますが、元来フレキシビリティ度の高い音楽性ゆえか、ヘヴィ・メタル程の細分化は起きていません。
代表的アーティスト:
LED ZEPPELIN, DEEP PURPLE, URIAH HEEP, BLUE OYSTER CULT
FREE, BAD COMPANY, UFO, CAPTAIN BEYOND, THIN LIZZY, AC/DC,
BUDGIE, KISS, AEROSMITH, QUEEN, CHEAP TRICK, VAN HALEN,
WHITESNAKE, GARY MOORE, DEF LEPPARD, BON JOVI, GUNS N' ROSES,
SKID ROW, FAIR WARNING, TNT, ROYAL HUNT, RUSH, TRIUMPH,
BOSTON, KANSAS, MR.BIG, ORANGE GOBLIN, MONSTER MAGNET

 *アーティストの分類は、飽くまで個人的見解です。

 次ぎにHeavy Metal。辞書で引くと「重金属(比重5.0以上)」「重砲」。ハード・ロックが進んだ、ハード、ヘヴィ、アグレッシブ等と言う方向への特殊化を更に進めたものです。よってロック音楽の持つ一般的性質は希薄となっています。初期を除きブルース色は殆ど見られず、フュージョン、クラシック(バロック含む)等の要素が、特に演奏面に見えてきます。アコウスティック楽器は殆ど味付け・点景程度の使用となり、ポップな曲やバラードは例外的或いは皆無。楽曲的なバラエティさは後退し、逆に音楽性の幅は広くなります。歌詞は、ファンタジックなものや社会的或いは思想的なものが主流で、生活感は希薄となり、ラヴ・ソングは絶無に等しくなります。スピード感や重さが重視され、所謂「縦ノリ」です。グルーブ感は後退し、機械的な無機感が支配的で、複雑なリズム・チェンジや曲構成、また高度な演奏技術などが特徴となります。やや、プログレッシブ・ロック寄りの性質を持つとも言えるかもしれません(実際メタラーにはプログレ・ファンが多い)。特殊化の進んだ分フレキシビリティは低下し、形・形式へのこだわりが強く、所謂「様式美」(表現形式の美しさ)が重視される傾向があります。陰性度強。服装は硬派な黒。だが「レザーに鋲」は今は少ない。1990年代はじめ頃まではハード・ロック的なスタイルも多かった。
 サブ・ジャンルとしては、ハードコア・パンクと融合したスラッシュ・メタル、重さダークさアグレッションを突き詰めた様なデス・メタル、サタニズムや反宗教を根底に持つブラック・メタル(これ等をエクストリーム・メタルと呼んだりする)、プログレッシブ・ロック的方法論を持ち込んだプログレッシブ・メタル、クラシック音楽的要素を取り込んだネオクラシカル・メタル、スピードとメロディを強調したパワー・メタル、遅く重々しいドゥーム・メタル、耽美性の強いゴシック・メタル、等々。様式への拘りが強いためか非常に細分化が進み、サブ・ジャンルは他にも多数ある。またサブ・ジャンルの中でも更に細分化が起こり、テクニカル・スラッシュ・メタル、メロディック・デス・メタル、シンフォニック・ブラック・メタル等々、メタル好きでも訳が分からない。
代表的アーティスト:
BLACK SABBATH, RAINBOW, DIO, JUDAS PRIEST, IRON MAIDEN,
VENOM, EUROPE, ACCEPT, SLAYER, METALLICA, MEGADETH,
DESTRUCTION, HELLOWEEN, BLIND GUARDIAN, RHAPSODY,
YNGWIE J. MALMSTEEN, IMPELLITTERI, STRATOVARIUS,
PANTERA, DEATH, EMPEROR, CRADLE OF FILTH,
MORBID ANGEL, CRYPTOPSY, IN FLAMES, ARCH ENEMY,
CHILDREN OF BODOM, QUEENSRYCHE, DREAM THEATER,
SYMPHONY X, CATHEDRAL, PARADISE LOST, LOUDNESS

 *アーティストの分類は、飽くまで個人的見解です。

 ファジィ集合。ハード・ロック、ヘヴィ・メタル両者の性質を併せ持つ、分類の難しいアーティスト。「ハード・ロック」と言う集合への帰属度も「ヘヴィ・メタル」と言う集合への帰属度も同程度の、境界付近に分布するアーティスト。境界と言っても、ここから赤、ここから青、と言えるほどはっきとりした不連続的なものではなく、連続的・段階的に移行して行くものです。近くで見れば、赤紫・紫・青紫等など、無限に中間の色が見え判然としませんが、少し俯瞰するとはっきりと境界が現れる、と言う様なものです。
代表的アーティスト:
SCORPIONS, MICHAEL SCHENKER GROUP, MOTLY CRUE, RIOT,
MOTORHEAD, VANDENBERG, EDGUY

 *アーティストの分類は、飽くまで個人的見解です。

 最後に、ラウド・ロック/モダン・ヘヴィネス/オルタナティヴ・メタル/ニュー・メタル/グラインドコア etc.
 グラインドコアを除き比較的最近(1990年代半ばくらい)生まれたスタイルなので、オールド・ファンの小生としては、未だ詳らかではない部分が多く、語るべき物も乏しい状態にあるのですが、敢て書かせて頂ますと、ハード・ロックやオーソドックスなヘヴィ・メタル、またデス・メタル等に根を持ちつつ、ラップ・ヴォーカルやサンプリングまたパーカッション等、HR/HMとは縁稀薄な要素や、1980年代以降のHR/HMの潮流の中で忘れられた1970年代的アイデアやフレキシブルさを取込んだり、HR/HMには欠かせないギター・ソロが皆無であったり、ドラマ性・様式美が希薄である等、固定化された従来のスタイルには囚われない、新興タイプ。服装も「普通」である。硬質なサウンドや、歌詞、また縦ノリ感等のヘヴィ・メタル的要素の中に、ハード・ロック的グルーブ感やそこはかとないポップ感も垣間聴こえ、私的には未だ未知多き世界...。
尚、名称については上記のように様々で、他にも、モダン・ヘヴィ・ロック、ラップ・メタル、メタルコアなども有る。形に囚われない多様なセンスを持ち合わせていることの表れの一つなのでしょう。
 グラインドコアは、1980年代半ば頃ハードコア・パンクから派生したものでメタルとは言い切れないが、ヴォーカル・スタイルやブラストビートの多様などデス・メタルに近しいものがある。
代表的アーティスト:
KORN, MARILYN MANSON, FEAR FACTORY, SLIPKNOT, HELMET,
RAGE AGAINST THE MACHINE, LINKIN PARK, LIMP BIZKIT,
KILLSWITCH ENGAGE, NAPALM DEATH, CARCASS

 *アーティストの分類は、飽くまで個人的見解です。

 付録:ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの礎
 ハード・ロックでもヘヴィ・メタルでもないが、これら音楽の礎となった、と私が感じるアーティスト達。1960年代後半が始まる頃登場したアーティスト達で、時代を反映し可也サイケデリックであったり、まだまだブルース色が濃厚であったりするのですが、その音楽の奥に、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの姿がちらりと見えるのです。歪んだギター、テクニカルなプレイそして爆音。これ等はスタジオでのプレイよりライヴでのそれの方に顕著ですが、こうした音の向こうに、後のハード・ロック/ヘヴィ・メタルの胎動をはっきりと知ることができると、そう感じるのです(ビートルズについては一部の曲です)。
代表的アーティスト:
THE BEATLES, CREAM, JIMI HENDRIX, JEFF BECK GROUP,
IRON BUTTERFLY, VANILLA FUDGE

 *アーティストの分類は、飽くまで個人的見解です。

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 進化の系統樹で言えば、ロック音楽と言う幹から、ハード・ロックが枝分かれし、其処から更にヘヴィ・メタルが枝分かれした、と言えるのではないかと思います。第一の枝分かれから第二の枝分かれまでは左程時間はかかっておらず、第一の分化は1960年代終わり頃、第二の分化は1970年代初等です。
 1970年代半ば以降、ハード・ロックの枝からはプログレッシブ・ハード・ロック、ヘヴィ・メタルの枝からはプログレッシブ・メタル、ネオ・クラシカル、スラッシュ・メタル、デス・メタル、ブラック・メタル等の、言わば亜種と呼べるようなものが、更に枝分かれし、細分化・特殊化が進んで行く事になります。

 特殊化の度合いの違いを、哺乳動物に例えてみると、ハード・ロックはアザラシ・オットセイ、ヘヴィ・メタルはイルカ・クジラと言えるかと思います。本来陸上生物である哺乳動物が、水中生活への適応と言う方向へやや特殊化したのがアザラシ・オットセイ。まだ陸上での行動を行います。其れに対し、イルカ・クジラとなると、更に水中生活適応へと特殊化し、陸上での行動はほぼ不可能となっています。この二つの生物群が、水中適応の肉食海生哺乳動物として互いに駆逐し合うこと無く共存して来たように、ハード・ロックとヘヴィ・メタルもそれぞれがそれぞれのニーズを満たしながらニッチ(生態的地位)を分け合い共存している(ハード・ロックとヘヴィ・メタルの関係とは異なり、アザラシ・オットセイとイルカ・クジラは系統的には全く別です)。
 かえって解り難かったか...。何れにしろ、特殊化の度合いが異なる、と言う事ではないかと、思う訳です。

 以上、「ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違い」について私見を述べさせて頂きましたが、是は飽くまでも、「ハード・ロック」「ヘヴィ・メタル」と言う集合全体としての話、全体的な傾向としての話であって、必ずしも個々のアーティストに其の侭当て嵌まるものではありません。前述の様に、境界付近でどちらとも言えないアーティストも多く居りますし、個々のアーティストの中にもハード・ロック/ヘヴィ・メタルに限らず、様々な音楽の要素が其々の比率で混在・並立して個性を形作っている訳ですから。また同一アーティストでも、時期によりハード・ロック的であったりヘヴィ・メタル的であったりもしますしね。
 「ハード・ロックとヘヴィ・メタルってどう違うの?」と良く訊かれるので、私個人の見解を述べさせて頂きましたが、ハード・ロックとヘヴィ・メタルに分ける事自体、別に意味は無いですね。ジャンル分け等何に限らず、販売・陳列・検索上等の便利の為のもので、それ以上でも其れ以下でもないです。拘りは禁物です。スピリットへの拘りは良いですけどね。「メタル魂」とか。

 序に一言。メタラー(メタル・ファン)に「ヘヴィ・メタ(ヘビ・メタ)」と言うと、気分を害されるか、「古ぅ〜」と笑われるかのどちらかです。「ヘヴィ・メタル」又は「メタル」と言いましょう。

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*「ヘヴィ・メタル」の語源:
「ヘヴィ・メタル」という言葉、それが何時の頃どの様に音楽の一スタイルを表す言葉として使用されるようになったのか、という事については、諸説あるようですが、最も有力視されている説は、英作家ウィリアム・バロウズ(William S. Burroughs(1914-1997))が、1960年代に、作品中で使用した「ヘヴィ・メタル」を、1970年代初頭、音楽ジャーナリスト、サンディ・パールマン(バンド・マネィジャーでもある)が、BLUE OYSTER CULT(1972年デビューのアメリカのバンド。「米版ブラック・サバス」として売り出そうと言う試みもあった)の音楽をプロデュースする為流用したのが最初である、と言うもの。このバンド自体の音楽は、現在ヘヴィ・メタルと呼ばれている音楽スタイルとは、やや異なる


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